俺「あらためて見てみるとかなり立派な建物だな。」
光宙「なんでこんなのが放置されてんのかな。」
nextpage
屋敷の敷地への入り口を見つけた俺達はそこから建物をもう一度確認した。
nextpage
かなり立派な建物だ。なぜこんな建物が何十年という間放置されているのだろう。
nextpage
窓には鉄格子がはめられていてそこからは中に入れそうにない。入り口はどこだろうかと周囲を探していると一部が壊れた窓があった。鉄格子も変形して外れており入るには都合が良かった。
nextpage
俺「こっから入ろうぜ。」
nextpage
俺達は壊れた窓を越え建物内部へ踏み入った。
nextpage
music:5
光宙「なんかわくわくすんなぁ。あの時を思い出すよ。」
俺「あの時ってなんだ?」
nextpage
光宙「まだオレと冠が高校生だった頃の秋に肝試ししてさ、結局何もなかったけどあの感覚は忘れられないな。」
冠「本当楽しかったよ。」
nextpage
music:4
そんな思い出を懐かしんで探索していると一部の新聞を見つけた。
nextpage
【1☓6☓年 ○○地☓ ☓発始☓る】
nextpage
経年劣化の為にすべての文字を読み取ることはできなかった。だがそれが光宙の住むアパートのある地区の開発を知らせるニュースであることは理解できた。
nextpage
光宙「あ、オレの住んでる所じゃん。古いなぁ、多分50年前の新聞だ。」
冠「この屋敷思った以上に古いんじゃない?」
俺「そうかもな。」
nextpage
他に手がかりが無いか周囲を探したが何も見つからなかった。
とその時冠が何かあったかのような顔をして窓の外を見ていた。
nextpage
俺「なんかあったか?」
冠「いや、見ればわかるさ。」
nextpage
窓の外を見るとそこは深い森になっていた。
nextpage
俺「屋敷の外にいた時には光宙のアパートも見えていたのに。」
光宙「なんかおかしいな。」
nextpage
俺達は異変に気付き外に出ようとしたが広い屋敷であった為に迷い込んでしまった。
nextpage
光宙「やっぱ止めときゃ良かったよ。」
俺「元々はお前が提案したことだろ!」
冠「まぁ落ち着け。別にこの世の物じゃない奴らに追われてるわけでもないのに慌てすぎだよ。」
nextpage
冠は俺と光宙を必死に落ち着かせようとした。しかし冠の発言は徐々に覆されていった。
俺達がそんなやりとりをしていた時、
nextpage
sound:5
「キィー ポン」
nextpage
音が二階から聞こえてきた。
nextpage
俺「今のはなんだ?」
光宙「ただの音だよ。アパートでもよく鳴るし気にすんな。」
冠「とにかく出口を探そうよ。」
俺「だな。こんな所に長居するのはキツイしな。」
光宙「分かれて探そう。もし出口が見つかったら大声で『あったぞ』って叫べ」
nextpage
ここで一人になるのは危険だ。そんなことは俺達にも分かっていた。
nextpage
それでもここから少しでも早く出ていかなければと本能的に感じたのだ。
nextpage
俺「じゃあさっさと見つけて抜け出そうぜ。」
nextpage
俺達は一人ずつ建物内の出口を探すことにした。入ってきた窓からは相当離れてしまったようで全く出口の検討はつかない。他の窓も鉄格子がはめられていて通れそうにない。
nextpage
このまま出れないのでは?
そんな不安を感じたその時
nextpage
music:2
「ゔう」
sound:33
nextpage
近くから奇妙な声が聞こえてきた。普通ならここで逃げてしまうだろう。
nextpage
だがその時の俺は不思議と恐怖を感じなかった。
nextpage
そのまま招かれるようにゆっくりと声のほうに近づいていき眼を凝らした。
nextpage
するとそこにいたのはこの世のモノとは思えない黒い人の形をした物体だった。
nextpage
sound:19
「ぎゃぁーー!」
nextpage
我に返り思わず叫び声をあげた。それと同時に俺は失神してしまった。
nextpage
失神する直前に苦しむ光宙と冠の顔が見えたような気がした。
nextpage
music:4
_____つづく。
作者乳酸菌
ついに屋敷の内部へと立ち入った彼等だが…。
前作http://kowabana.jp/stories/26258
次作http://kowabana.jp/stories/26269