中編3
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花火大会ー黒い花火ー

ピユュュウゥ……ドォドォンッッ!!!

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花火を見詰めていると、その大輪の花に吸い込まれそうになる。

今年の花火は、一際美しい……。

やはり形も散り方も、この国の物が一番だと言えた。

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ふと、先程立ち寄った、屋台での出来事が頭を過る。

この季節に珍しいおでん屋で、隣に居合わせた男の話だ。

男はしがない怪談師だと言っていた。

行き付けの中華飯店が、混んでいて入れなかったという男は、怖い話1話でおでんのタネ1つが食せると聞き、『黒い花火』の話を始めた。

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花火大会の夜、『夜空』に見える筈の無い『黒い花火』が咲くのだという。

夜空に、黒い花火……どうやって見分けるのか……

『黒い花火』は菊の形をしていて、『死者を待つ者』だけに見えるのだそうだ。

怪談師は過去に2度、黒い花火が上がるのを、目撃しているのだという。

語り終えた怪談師は、店主が差し出した牛スジ串を旨そうに食すと、ふらりと暖簾を出ていった。

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………………馬鹿馬鹿しい。

そんな話しか出来ないから、二流の怪談師なのだ。

あんな話でタネを提供しなければならなかった、店主には同情する。

『黒い花火』は、『死者を待つ者』に見えるのでは無い。

『死を待つ者』にしか見えないのだ。

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ピユュュウゥ……ドォドォン!!

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また1つ、花火が上がる。

背後の古い団地には、『安らかな死』を待つ者達が、羨望の目差しを夜空の黒い菊に向けていた。

その目の前で、夜空と同じ色の菊が形を崩す。

菊を象っていた1つ1つの花弁が、下に落ちるのでは無く、高みへと昇っていった。

団地から、にこやかに見詰める彼等が選ばれるには、まだ少し時間が掛かる。

生き人(イキビト)達は、肉体から魂が抜け落ちる事を『死』なのだと、勘違いしている様だ。

それは只の死人(シビト)であって、『死』では無い。

どんな審査基準で選ばれるのかは分からないが、死人は地上で『死』を迎える順番を待つのだ。

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黙って見上げていると団地の人影の中に、新たな見物人が加わった。

若い女性に手を引かれて一団に加わったのは、黒く煤けた男の様だ。

男の表情は焦げて分からないが、仲睦まじい様子から、2人が幸せそうだと見てとれる。

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数年前、俺が担当した火事の女を思い出した。

花火大会が終わるまで、少しだけ彼の側に居させてくれ……そう言った女の涙に負けて、時間を潰した時も、あのおでん屋に行ったのだ。

彼女が黒い花火の一部となって、空に上がり……今年は早くも戻って来ると聞く。

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物思いから我に帰ってふと見ると、直ぐ近くに男が立っていた。

呆然とした表情で、団地と夜空を交互に見上げている。

どうやら彼には黒い花火は見えないらしい。

しかし、団地の一団は見えている様だ。

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……うん、興が乗った。

この男にも『黒い花火』を見せてやろう……。

肉体を持つ、生き人が上げる色とりどりの花火が、団地の上から男の影をアスファルトに縫い付ける。

俺は自慢の鎌を、長く伸びた男の影に突き立てた。

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ぎゃーすみませんm(_ _)m
ロビンさんの所からじゃなく、綿貫さんの所からですね。
頭の中で混ざってしまってました...。

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