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私たちの親は、古い因習の残る集落に暮らしていた。
私たちが幼少期を過ごしたその集落には邪眼持ちという言葉があった。それはいわゆる犬神筋などと呼ばれるものと似ていて、家筋的に目に何らかの不思議な力を持つ家系のことを指すものだった。
そして、私たちの家がその邪眼持ちだった。私の母も、父も、弟も生まれつき力を持っていた。私だけが唯一力を持たずに生まれたが、それでも12歳の時に力が覚醒し、未来が視えるようになった。
私たちの家は犬神筋の家がそうされるように村八分にされていた。私たちは集落の人たちと関わることは許されず、発言権も無い。まさに日陰者といった暮らしをしていた。
私は18歳になったのを機に、弟の磨那呼とともに集落を出た。両親がそう勧めてくれたのだ。私たち姉弟だけなら集落を出れば普通に暮らせるだろうと。
私と磨那呼は集落を出た後、アルバイトをしながらひっそりと、しかし普通の生活を送っていた。
だが一年ほど経った時、私はある男に出会った。彼を見た瞬間私の目にあるビジョンがうかんだ、彼を利用すれば私たちが力を隠さずとも普通に暮らせる世界を実現できる。
そう確信した。そして私は今、かつて彼が座っていた椅子に座っている。
「父さん、母さん、待っててね。もうすぐ私たちが普通に暮らせる時代がやってくるから。」
作者白真 玲珠
失敗作 完全版の第2章です。
ここで章分けした理由を説明しておきますと、語り手が次々変わるので、いくらセパレーターをつけても多少の混乱は免れないと思い、だったら章に分けて投稿しようと思った次第です。
第1章→http://kowabana.jp/stories/28057?copy