長編8
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廃病院探訪

こんにちは、そしてお久しぶりです。

ロビン率いる「最低、はじめました同好会」です…ひひ…

これは会を発足してから、2度目の廃墟探索に向かった時のお話です。

翔吾がネットで拾ってきた情報を元に、俺、翔吾、猛、香織、夏美の5人で目的地へ向かいました。

今回はけっこうやばい場所です。

国道からそれて山道を登ること10分、道は狭くなり、アスファルトから砂利道に変わりました。

両側はもうすでに木々を塞ぐフェンスのみで、民家どころかお地蔵さんの1つもありません。

禁断の二股を左にいくと、とうとう見えてきました。突き当たりました。

地元の人間も恐れる廃病院、◯◯の◯◯!!!

噂によると精神病院だったようです。人が沢山死んでいます。

2年前に肝試しにきた馬鹿共が、火を出してしまい、建物の殆どが焼けてしまったそうですが、中は意外と大丈夫なようです。

その時に取り付けられたのか2メートルほどのフェンスには拡声機がついていて、俺たちが近づくと自動で警告音が流れました。

『◯◯警察です。この中は進入禁止となっております。チャララー

◯◯警察です。この中は進入禁止となっております。チャララー 』

うるせー!

翔吾が大型のニッパーでフェンスをぶちぶちやり始めました。

みんな頭にLEDのヘッドライトを装着して準備完了です。瓦礫を蹴飛ばし、硝子を叩き割って建物の中へ進入しました。

「警察が怖くて、最低やってられっかよ!!」

今のは猛の名言です。自分でも決まったと思ったのか、夏美の方をチラチラと見ています。デブのくせに。

一階は瓦礫で見るも無残な状態でした。でも大丈夫、問題は地下のボイラー室です。

ここが、この建物で一番やばい場所だそうです。

夏美を先頭に、ビビりの4人が続きます。めちゃくちゃ怖いし真っ暗です。

「カン!」と乾いた音が、この先のボイラー室から聞こえました。

その瞬間「ひゃほう!」と、猛が情けない声を上げましたが、俺はちょっとおしっこを漏らしました。

夏美は、ボイラー室の手前まで来て立ち止まりました。

「やっぱこの先は行かない方がいい、この中にいる人たち、みんな泣いてるから」

夏美の言葉に一同は即「了解!」と回れ右をして、階段を上り始めました。

違います!ビビってる訳じゃないんです。僕たちは泣いてる人たちを面白がるなんて非道な真似はできないだけなんです。

しかも、実は今日ここへ来たのはボイラー室のおばけを見に来たわけじゃないんです。

俺たちは建物の外へ出ると瓦礫の少ない場所を探して、円をつくって座りました。

香織が人数分の蝋燭に火を灯します。

「さて、始めるか!」

そう、俺たちが今日ここへ来たのは他でもない。関西最強の心霊スポットで怖い話をしたら、果たして幽霊は現れるのか?という実験です。

あ、ちょっと待って下さい!ここからが面白いところですから。多分…

さすがに5人で百物語はキツいので、1人1話ずつです。それで何も起こらなかったらすぐに帰ります。

トップバッターの夏美がとっておきの怖い話を披露し、さっそく猛が泣き出しました。

2番手の香織も短いながら、実話を元にしたなかなか怖い話を隠し持っていました。

これで蝋燭が2つ消えました。今のところ、幽霊の姿はありません。

続いて3番手の翔吾は大した話でもないのに、稲川さんみたいな語り口調で話しだし、話の途中で夏美にため息をつかれていました。

さて、次は4番手の猛くんです。

猛は泣きながらもポテトチップスをボリボリやっています。俺はデブの執念を垣間見た気がしました。

「じゃあ、俺が今までで一番怖かった話をするよ」

猛はいつになく、本気モードです。

せっかくなので、猛の話を皆さんにも聞いてもらいましょうか。

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ファミレスのバイトが終わったのが23時だったから、おそらくその日アパートに帰ったのは23時半ごろだったと思う。

2階建てで家賃3万のボロアパートなんだけど、俺の部屋は階段から一番遠い場所にあった。まあ、良くいえば角部屋だけどね。

裏手は深い森になってて夜はめちゃくちゃ気持ち悪かった。

苔むした墓石なんかも見えるし、なにせ怖がりの俺は、帰りが遅くなる時は必ずといっていいほど雨戸と鍵をしっかりと閉めてから外出してた。

俺はそーっと鉄階段をのぼって、足音を立てないように細心の注意をはらって自分の部屋の前まで辿りついた。

なんでかっていうと、そのアパートの住人は土地柄のせいか変わった人が多かったんだ。

その中でもダントツに群を抜いてやばそうなのは、全身刺青で冬でも半袖の関西弁のおっさんなんだけど、悲しい事にそのおっさんは俺の隣りの部屋に住んでたんだ。

そっと鍵を回してドアを開けたら突然暗い部屋の奥から「パン!」って風船か何かの弾けるような音がした。

次の瞬間、上から下まで白い服の女が居間の方からこっちに向かってフワーーって近づいて来たんだ。

俺が「うわーーっ!!」って叫びながらドアを閉めると、ドタドタドタドタ!って部屋の中を走り回る音がした。

で、次の瞬間「バン!!」ってドアが開いたんだ。

でも、開いたのは俺の部屋じゃなくて、隣りのおっさんの部屋だった。

「夜中にうるさいんじゃワレ!!」

竹刀を持ったおっさんにもう少しで殴られそうになったんだけど、おっさんも俺の顔色をみて何かを察してくれたようで「なんかあったんか?」って聞いてきた。

「だ、誰かいました!!」って自分の部屋を指さしたら、おっさんは「ああん?!誰や!!」って凄みながら俺の部屋に入っていったんだ。

俺は内心「おっさんが一番うるせーよ!」って思ったんだけど、その時のおっさんは凄く頼もしく見えたな。

しばらくしておっさんが出てきて、「誰もおらんやないけクソガキ!ワレ嘘ついとったらしばきまわすどボケ!!」って、竹刀の尻の部分で頭を殴られた。

「すいません!」って謝りながら、おっさんの肩ごしから部屋の中見たら、閉めてるはずの雨戸が全開に開いていた。

おっさんは「誰もおらんけど、なんや廊下水浸しやったぞ。窓も開けっぱなしやし、ちゃんと戸締りぐらいしとけよ!」って、自分の部屋に入っていった。

部屋の電気を全部つけて、おそるおそる外を覗いてみたけど、森はシーンとしてて、ただひたすらに気持ち悪いだけだった。

おっさんの言う通り廊下はずぶ濡れで六畳の居間もずぶ濡れだった。それに畳には誰かが走り回ったような足跡があった。

おっさんの足跡かなって思ったんだけど、よく見るとそれは1人分の足跡じゃなくて子供くらいのサイズの足跡も混ざっていた。

もうこんな気持ち悪い部屋で寝たくなかったから、片っ端に今晩泊めてくれそうな友達に電話をかけまくった。

結果をいうと、全部断られた。

やむなくダメ元で元カノに電話をかけてみたら、元カノに「ねえ、なんで彼女いんのに私にかけてくんの?」って、意味不明な事を聞かれた。

どういう事だか聞いてみると「さっきからずっとあんたの声にまじってボソボソ何言ってるかわかんない女の声がするんだけど」って。

怖さの余り俺が「誰もいねえよ!怖えー事いってんじゃねーぞ!」って逆ギレしたら、壁をドン!って叩かれた。

幽霊も怖いけど隣りのおっさんはそれ以上に怖かったから、俺はその夜、バイト先のファミレスでアイスコーヒーを飲みながら朝を迎えたんだ。

その頃の俺は今と変わらずビンボーだったし、部屋を引っ越す訳にもいかなかったから、仕方なく友達から教わったやり方で盛り塩をして眠った。

盛り塩が効いたのかそれとも幽霊なんて初めからいなかったのか、それから一週間くらいはぐっすりと眠れた。

しかしその夜は違った。

夜中に猫の鳴き声みたいな音で目がさめて、怖いから目だけを動かして真っ暗な部屋の中を探っていたら、明らかにトイレの前に人が立っているようなシルエットが見えたんだ。

暗闇に目が慣れるにつれだんだんとそいつは髪が長くて、両手を前にダラんと垂らした女だという事がわかってきた。

ピチャン ピチャン… と、どこからか雫の垂れるような音も聞こえた。

俺は失禁寸前で「頼む!どこかに消えてくれ!」って、心の中で何度も繰り返したよ。

どれくらい目を瞑ってたかわからないけど、いつの間にか雫の音がしていない事に気づいた。

で「もう大丈夫かな?」って目を開けたらあまかった。お互いの鼻がくっ付くかくっ付かないかぐらいの距離に目の離れた女の顔があったんだ。

女の目は両方とも血走っていて、おまけに生ゴミの腐ったような匂いまでした。

そういう時って、普通は金縛りとかで声も出ないんだろうけど、俺の場合は違っていて「ぎゃあああ!!!」って自分でもビックリするぐらいの声が出た。

その瞬間、また隣りの部屋で「ドン!」と、おっさんが壁を叩いた。

「ワレやかましいんじゃボケー!いま何時や思とんねん!!」おっさんはめちゃくちゃ怒っていた。

すると、女は俺から目を離してゆっくりとおっさんの方をみた。

「次また音出してみー、ワレしばいてもうたるからのー!」

明日が競馬の日だからだと思うけど、おっさんの怒りは収まらないようでいつもより多めに怒鳴っていた。

女は前屈みの体勢のままで、おっさんの方へ歩いていった。

女は壁の前でいったん立ち止まって、首を傾げてた。

「聞いとんかいボケー!!」

おっさんがまた壁を叩いた瞬間、女はスーっと壁の中に消えた。

暫くして「ぎゃあああああ!!!」っておっさんの叫び声が聞こえた。

「お、おんどれ、何もんじゃこら!」

それからはもう大騒ぎで、ドッタンバッタン、ガンガラガッシャン、硝子の割れる音やら壁を殴る音が続いて「ぎぃゃああああああ!!」って、おっさんのハイトーンボイスの断末魔を最後に、辺りは静かになった。

後でわかったんだけど、おっさんはベランダから落ちてあちこちを複雑骨折したらしいんだ。

おっさんの下の部屋に住んでたパンチパーマの婆さんが通報したらしいんだけど、後もう少し対応が遅れていたら危なかったって。

まあ、自分も無関係じゃないし、お見舞いでも行こうかなって思ったけど、結局は行かなかった。

その後はもう、おっさんが退院するまでにさっさと俺もその部屋を出たし、女の幽霊がどうなったのかも、あのボロアパートがどうなったのかも知らないよ。

いや、

知りたいとも思わないけどね。

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猛は話し終えると、やりきった表情で夏美の方をチラチラと気にしています。

猛にしてはなかなか興味深い話ではありましたが、ありきたりというか、怖さという点ではいまいちパンチがないように感じました。

怖話読者をナメて貰っちゃ困ります。

「さあ、次は兄貴の番だよ」

夏美が俺の背後をチラチラと気にしながら言いました。

「お、おう!でもこのぶんじゃ今回は不発に終わりそうだな。たったの5話くらいじゃ幽霊も寄ってくる暇ねーだろ、なあ夏美」

俺は「最低、はじめました同好会」のリーダーに恥じる事のない怖話を用意していました。

俺が話し始めようとした時、夏美がボソッと言いました。

「もういっぱい集まってるよ」

蝋燭に揺らめく夏美の顔は、兄の俺が言うのもおかしいですが、今まで見た中で一番、妖艶な顔をしていました。

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