短編2
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壱行怪談

夜中に尿意を催してトイレに向かい、暗がりの廊下を歩きトイレの扉の前でスイッチをまさぐると人の手のような違和感を感じて「わあっ」と叫ぶと、暗闇から「すみません」と声がした。

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友人数名と一緒に出ると有名な廃墟に肝試しに来て、懐中電灯で中を照らしながら荒れ果てた床の上を歩いていると、何かにズボンの裾が引っかかって、カギ状に裂けたので「あーあ、これお気に入りだったのになあ」とよく見ると、どす黒く変色した爪が引っかかっていた。

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トントンとノックをして「入ってますか?」と聞くと「入ってますが、お急ぎなら一緒にいかがですか?」と返事が来た。

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夜道を散歩していると街路樹に白い手袋が引っ掛けてあり、誰かが落し物を拾ってここにかけたのだろうなと見上げると木の枝いっぱいの白い手袋が僕に向かって手招きをしていた。

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「こんなに遅くまでどこをほっつき歩いてたの?若い娘が暗い夜道を一人で歩くなんて危ないじゃないの!」と我が家の玄関を開けると見知らぬオバサンが狂ったように喚き散らした。

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誰が一番遠くまで泳げるか競争したあの夏の日までは僕が一番だったけど、あの夏の日からはテツヤが一番になって僕は泳げなくなり皆が泳ぐのを恨めしく海の底から見るだけになった。

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図書館で本を借りようとネットで検索すると、常に自分が借りたい本が予約中になっているので、諦めて直接図書館に行って他の本を借りようとすると、司書のおばさんが僕ににっこりと微笑んで「あなたが借りたい本は、本当はこちらですよね?」と予約中とあった本を差し出してきた。

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交差点の歩道の隅に白い花が供えてあり、ここで誰かが亡くなったのだなと思っていたら通りかかった妙に古臭いボロボロに破れた服を着た小学生くらいの男の子が一心不乱にその花を食べ始めた。

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机の引き出しがガタガタいうので、気になって引き出しを引いたら中から青く丸い物体が「ボクドラエモン」と言ったので、そっと引き出しを閉めた。

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夜店で綺麗なお姉さんに無料で卵をもらったので、さっそく目玉焼きでいただくことにして、フライパンに卵を落とそうとすると卵にひびが入って中から気持ちの悪い虫が出てきて、僕に向かって糸を吐いて来たその日からずっと僕はここに閉じ込められており、体がゴキゴキと日々何かに変形しつつある。

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