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ギシ、ギシ、ギシ
真「 先生、もうすぐ着きますよ例のトイレ… 」
稲「 ほほほ、流石の私もこの雰囲気に少しのまれてしまっているようですね。ほら、こんなに鳥肌が…」
真「 ほ、ほんとだ! 先生ほどの人が恐怖するなんて、やはりこの学校は並の心霊スポットとは格が違いますね。
あっ先生、あそこです!
恐らくあのトイレが人を呑み込んでしまうと云われている、魔の男子便所です」
稲「 ほほほ、遂に来ましたか。北野くんキャメラはしっかりと回っていますか?
私達は特殊な結界によって守られているので安心ですが、こういった場所では電気機器など脆いもので、直ぐに破壊されてしまいますからね」
真「 はい先生、いまの所は正常に作動しているようです。この小娘二人がトイレに引きづり込まれる決定的瞬間を、ばっちりベストアングルで撮影して見せますよ!ふふふ」
稲「 ほほ、バッチリ頼みますよ北野くん」
真「はい!!」
美「 あ…あのう、お話中すいません。真子さんでしたっけ? いま小娘二人をどうするって言いました? 」
真「 ひっ!! あ、あれ吉岡さん? 気がついてたの?!」
美「 …ええ、なんか私寝ながら歩いてたんですかね?ここまでの記憶が殆ど無いんですけど…
ここって、多分例の廃校ですよね? 私の夢に出てきた廊下とそっくりなんです」
希「 うう、みほ〜。私も寝てたみたい、なんか頭クラクラする… 」
真「 せ、先生! 」
稲「 おやおや二人ともやっと正気を取り戻しましたか?それは丁度良かった。たった今、例の男子便所に着いた所です。
簡単に言いますと、あなた達は虐められて命を落とした少年の母親、つまり上下赤い服の女にいままで意識を乗っ取られていたんですよ。
非常に危ない所だったんです。
さぁ美穂さんに希美さん、あの便所の中に行方不明のお友達が閉じ込められている筈です。助けに行きましょう!覚悟はよろしいですか? 」
美「 ほ、本当にあそこに優人がいるんですか? 」
稲「 はい、間違いありません」
美「 ゆ、優人!!」
タタタタタ
希「 ま、まってよ美穂! 私も行くー」
タタタタタ
ガラガラガラ
美「 優人いるの?!」
希「 秋田くんどこぉ?!」
美「 あれ?いない… なによ誰もいないじゃない!」
真「 ちょっと貴女達何やってるの! そこは女子トイレでしょ?そっちじゃないわよ男子トイレはこっちよこっち! 」
美「 えっ!そっち?やだ、だってそのオッさんがこっちって指さすから!」
稲「 お…」
ガラガラガラ
美「 あっ、いた!! 優人! 亮輔くんもいた!! 」
希「 ほ、ほんとだ! 」
美「 優人、優人、! しっかりしなさい!! 起きて! 」
希「 亮輔くんも起きて!! やだ、死んでるのかな?! 」
優「 …う。み、みほか?」
美「 そ、そうよ私よ!! 良かった生きてる! ぐす… 助けに来たのよ分かる?!」
優「 あ… あの女… 赤い… あの女はどこ行った?」
美「 もういいのよそんな事。それより早くここから逃げるのよ!! 」
希「 美穂! 亮輔くんも目を醒ましたよ! 良かった。ぐす」
亮「 あ、あれ、希美ちゃん…なんで?」
ドタン!!!
美「 な、何いまの音?」
稲「 んっ? 北野くん? 北野くんはどこに行ったんですか?! 」
美「 おじさん… 廊下に落ちてるの、あれってもしかしてビデオカメラじゃないですか?」
稲「 ほ、本当ですね。まったく!大事なキャメラを放置して北野くんはどこに行ったんですか?! 」
…せ、せんせい… た… たすけ…だ…さい…
稲「 んっ、どこですか北野くん?」
希「 稲河さん、これってさっきの女子トイレから声がしてませんか? 」
稲「 ま、マズい!北野くん!! 」
ダダダダ
美「 あっ、ドアが閉まってる」
ガタガタ
稲「 ほらここを開けなさい北野くん! どうしたんですか北野くん?!」
希「 …や、やだ。女子トイレの中また明るくなってきてる! この前と一緒だ!!…女…あ、赤い女!! 」
美「 の、希美どうしたの? 赤い女が何? なにか思い出したの!?」
希美「 い、い、いやーーーー!!」
ダダダダダ
美「 ちょ、希美待って! 優人! 亮輔くんも走れる?!」
優「あ、ああ大丈夫だ… 」
亮「う、うん」
美「 じゃあ追いかけるわよ! 希美ー、待ってぇー!!」
ダダダダ
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…
…
稲「 やれやれ皆んな行ってしまいましたか。いやはやこれは予想外の展開だ。今回は残念ながらいい画は撮れてなさそうですね…
あっ、キャメラのレンズが割れてる! まったく、北野くんは何を考えているのでしょう…」
ガタガタガタ
稲「 ダメですね。やっぱり開かない… 北野くんふざけてないで早くここを開けて下さい! 」
………… 。
稲「 ほら北野くん早くドアを開けて下さい!。もう帰りますよ!
全くこれじゃあもう少し有能な助手を探さなくてはいけませんねぇ…ぶつぶつ」
ガラガラガラ
稲「 やれやれ、やっと出てきてくれましたか北の…く…ん? 」
正一『ねえ、おじさんモ… ボクと…あそンで…くレルの?』
稲「 ……なっ… !!」
ガラガラガラガラ
バタン
………… 。
ジワジワジワ…
ミンミンミンミンミンミーン…
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続く
作者ロビンⓂ︎
さあ、誰も待っていないこのお話もいよいよ佳境にさしかかって参りましたよー!…ひ…
幼馴染み①
http://kowabana.jp/stories/29921
登場人物
秋田優人
吉岡美穂と幼馴染みの高校生。
中学生の時に両親を亡くし、以後、祖母と二人暮らし。
吉岡美穂
美人で優等生だが、絵が下手。
家で猫を10匹飼っている。
親友は永田希美。
永田希美
天真爛漫で何事にも興味津々な性格。
官僚の父を持つお嬢様。
趣味はヌイグルミ集め。
川口拓海
秋田優人のクラスメート。
真面目で読書家。
オカルトサークルの会長である兄の影響で、霊能者の稲河淳太と交流を持つ。
石原亮輔
秋田優人や川口拓海と同級生で、陸上部主将のスポーツマン。
優しくてイケメンだが、体育会系に有りがちな「どこか間抜けな一面」を持っている。
稲河淳太
肩書きは自らの体験談を語る初老の怪談師だが、確かなその実力から霊能者としても活躍している。
怪談を通じて川口拓海の兄と親交がある。
金と名誉に異常な執着がある一面も。
北野真子
稲河淳太の助手。
36歳、バツイチ子無し。
学生時代に火の玉を見て開花し、霊界に興味を持つ。
赤い服の女
松永洋子。
生まれつき心臓の弱い息子をイジメで亡くし、関係者に呪詛を振りまいて自殺。
以後、悪霊と化し虎視眈々と復讐の時を待っている。
松永正一
酷いイジメにあい夏の暑い日に男子トイレで息絶える。
以後、成仏も出来ずに母親と共にトイレで地縛霊となる。
秋田光代(優人の祖母)、吉岡健一(美穂の祖父)、川口敏弘(川口拓海の祖父)と同級生。
川口敏弘
川口拓海の祖父。松永正一をイジメていたグループのリーダー格。