中編6
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ふたりかくれんぼ

【ひとりかくれんぼ】のやり方

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準備するもの

・綿を抜いた人形

・米

・刃物

・赤い糸

・縫い針

・体の一部(爪、髪の毛など)

・コップ一杯の塩水

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世間を揺るがす都市伝説になった【ひとりかくれんぼ】

映画化やドラマ化もされ、ネットでは実際にひとりかくれんぼを実証した動画に怪現象が録画されていたりと、数々の霊的伝説を生み出して来た。

この話は、現代社会の闇に葬られることになった、ある少女の話である。

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「ねえ、ひとりかくれんぼって知ってる?」

「知ってるよ。っていうか、いまどき知らない人なんていないでしょ。」

「まあ確かにね。」

「で、そのひとりかくれんぼが何よ。まさか、やってみようと思ってる。なんて言い出すわけじゃ無いよね?」

「そのまさか。でもね、ひとりではしないよ。だって、怖いじゃん。」

「はあ?じゃあ、ひとりかくれんぼにならないじゃん。」

「でもさ、ひとりかくれんぼってみんな«ひとり»でやるからいけない訳でしょ?映画でもドラマでも殺されたりするわけじゃん。」

「そうだね。で?」

「だから、ふたりでしない?」

「だから、それじゃひとりかくれんぼにならないって言ってんの。」

「でもさ、ひとりかくれんぼって降霊術だから危ないんでしょ?だったらひとりでしても、ふたりでしても一緒じゃん。」

「…で、私を誘ったって訳?」

「当たり。」

「まあ、私もそういうの信じてる訳じゃ無いし、良いよ。暇つぶしに付き合ってあげる。」

「やった!ひとりかくれんぼをふたりでする。題して、ふたりかくれんぼ!」

「…それって、ただのかくれんぼじゃん。」

そんな会話を始め、押されるままに、ふたりかくれんぼをすることになった。

「それで?いつするの?」

「んー、じゃあ今日は?親、留守って言ってなかった?」

「えー、私の家でするの?」

「良いじゃん。どうせ、ただの都市伝説なんだし!」

「…まあ良いけど。」

「じゃあ決まり!面白そうだし、予習ってことで、ひとりかくれんぼの映画DVD持って行くから!」

「あっけらかんとしてるよね、アンタ。」

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早めの夕食と入浴を済ませ、夜の7時ころからDVDを見始めた。

その映画は既に随分前に視聴済みだったため、今更怖がるそぶりも無く、映画のエンドロールが流れた頃には既に夜の9時を少し回ったところだった。

「で、何時から始めるの?」

「えーっと、時間の指定ってされてないよね。でも夜中の方が良いんじゃない?0時過ぎとか!」

「じゃあ早めに色々済ませなくても良かったじゃん。」

「ほら、準備が大変でしょ?ぬいぐるみの綿抜きとかさ。」

「はいはい、じゃあやっちゃお。」

いそいそと、かくれんぼの準備を始めた。

可愛らしいクマのぬいぐるみの腹を裂き、綿を抜いた後生米をしっかり詰めていく。

「そう言えば、身体の一部って一緒に入れちゃうんだよね?」

「うん、ふたりの爪を入れちゃお。アタシはもう入れたから!」

切った爪をぬいぐるみに入れ、その後、赤い糸でくまの腹を縫い合わせた。

「アンタ裁縫の才能ないよ。」

「うるさいなーじゃあやってよー。」

少女特有の可愛らしい黄色い声が、リビングに響く。

「さて、準備できた。後は…名前か。何にする?」

「“じゅん”で!」

「…じゃあそれで良いや。」

塩水を2人分用意して、テンプレート通り、ひとりかくれんぼを進めていった。

風呂に水を張り、ぬいぐるみを沈め、少し隠れたのち、人形に刃物を刺し…

「次は“じゅん”が、鬼だから。」

そう言うと、すぐ隣の部屋にあるクローゼットの中に身を潜めた。

「…」

「…」

シンと静まり返った部屋。

「何か聞こえる?」

「聞こえない。」

塩水を口に含んでいるため、携帯のメモ帳で会話をしていたが、その後も特に何も起こらず、時間だけが刻々と過ぎていった。

「そろそろ終わらない?」

「そうだね。」

そっとクローゼットから出ると、浴室へ向かった。

湯船に沈んでいる人形を上げると、口に含んだ塩水を吹きかけ、かくれんぼの終わりを告げる。

「やっぱりね、こんなものだと思った。大体ね、こういう都市伝説って____」

そう言い、横へ視線を移すと、さっきまでいたはずの彼女が見当たらない。

「え?」

自分の腕に鳥肌が立つのを感じた。

持っていた人形を湯船に放り投げると、浴室を飛び出した。

「ちょっと、何処!?笑えない冗談、止めてよ!」

彼女からの返答はない。

家中の明かりを付け、探し回っても、何処にも見当たらない。

「何で…何処行ったの…まさか、本当に…」

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その時ふと、壁に掛けていた鏡に目が止まった。自分の真後ろに彼女が立っていたのだ。

安堵からか、恐怖からか、一度身震いしたのち振り向くと、彼女に対し怒鳴り声を上げた。

「何処行ってたの!!」

「ごめんね。」

「びっくりさせないでよ!!」

「ごめんね。」

「本当に怖かったんだから!!」

「ごめんね。」

「まあ良いんだけどさ…。」

「ごめんね。」

「…何、もうそんなに謝らないでよ。」

「ごめんね。」

その時初めて彼女に対しゾッとさせられる雰囲気を感じた。

「ねえ…どうし____」

「ごめんね。」

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彼女は、少女の首を両手で掴むと、一瞬の力でへし折った。

ゴキリ。という生々しい音と、首の皮を貫通し、突き出た頸椎。

目を見開いたまま、床へ崩れ落ちた。少女の眼球が最後に捉えたのは「ごめんね。」と呟く彼女の嬉し気な表情だった。

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少女の無残な死体を発見したのは、次の日仕事から帰宅した両親だった。

その後、警察と救急車を呼んだが、少女は還らぬ人となった。

事件なのか事故なのかを調べる上で、警察の事情聴取が行われた。

ある一人の刑事がこの事件の担当になった。

結局、この事件は“事故”として処理されることになるのだが、ここからは、彼の残した手記である。

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亡くなった少女A

・名前:横田 まなみさん

・年齢:16歳

・趣味:読書、映画鑑賞

・性格:内向的

・特記:イジメがきっかけで不登校にあった。

事件当日、携帯のメモ帳、浴室のぬいぐるみから察するに、彼女は都市伝説として有名な 【ひとりかくれんぼ】をしていたようである。

(以下、省略)

・補足:解離性同一性障害

____。。。

事件後、数日経ち、鑑識から一本のビデオテープを受け取る。両親が病気の娘を置いて遠方に行くのが心配と、家の内部を数個の定点カメラで録画をしていたものだという。少女が死んだ際の状況が残されていたが、あまりにも不可解すぎる。

少女はひとりでDVDを見て、かくれんぼの準備、実行をした。ここまでは、解離性同一性障害の症状のひとつとして捉えられるものだろう。しかし、その後、謝罪の言葉を数回述べ、自らの首をへし折り、死んだ。

少女の腕力で、自身の首を躊躇なくへし折ることなど、物理的に不可能だ。

しかし、非化学的な事を公に晒すわけにもいかない。自分自身でも、馬鹿げていると思う。この事件を担当し、事件資料を元に調書を作成しなければならない。だがどうやって作れば良いんだ。

今の日本に、いや。世界に“霊を裁く法律”などない。

このテープを抹消し、不慮の事故として報告するより他にないのだ。

しかし、俺は独自に【ひとりかくれんぼ】について調べてみた。ただの都市伝説にしては、あまりにも生々しい。この話を知ってから、今までの未解決事件や、不可解な事故死についての事件資料を漁ってもみた。成程、そういうことかと、納得せざるを得ない。

俺は今日をもって刑事を辞める。辞表と共に、この文書を提出するつもりだ。

【ひとりかくれんぼ】に関する資料は、このまま処分してしまおうと思う。だが、これ以上の被害を出さないためにも…いや、闇にある真実は、そのまま葬っておくのが正解なのかもしれない。…今までのように。

果たして少女は、霊によって殺されたのか。

はたまた、少女の中の別の人格者“彼女”によって殺されたのか。

ただの自殺だったのか。

最期の言葉、「ごめんね。」の真意は一体何なんか。

全ては謎のままである。

ただ、ひとつ言えることがある。

【ひとりかくれんぼ】は決して“ひとり”でしてはいけない。

そして、魂の容れ物として用意した人形に自分の名前を付けてはいけない。

_____。。。

そうタイピングしたのち、彼は自分の仕事用ノートパソコンの電源を落とした。

Concrete
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