またかよ…、今月は多いな。
これで三人目だ。
『誰の家だと思ってんだ、ここは俺の家だぞ。』
そんな俺の言葉など気にすることなくズカズカと入ってくる男。
見た目は二十代前半といったとこだろうか。
男は荷物もほとんどなく、TVやステレオさえない殺風景な部屋で仰向けになって寝転んでいる。
『おい、人の部屋で何くつろいでいやがる。』
起きろと言って胸ぐらを掴もうとしたが、スルッと通り抜けてしまう。
やっぱりかと溜息を漏らした。
通り抜けてしまうのは今回だけではない。
今まで何十人と入ってきたが、触れる奴には未だ会ったことがない。
こんな鬱陶しい部屋なんて引っ越したかったが、俺には出来ない理由があった。
まあ特に危害を加えられる訳ではないが、只々鬱陶しい。
だから何とか追い出したかった。
スーと息を深く吸い込んだ。
そして、一気に怒鳴り声と共に吐き出す。
『出てけ!!』
こうするとなぜか大抵の奴は目を点にして、急いで出て行く。
暫くして戻ってくるといそいそと荷物をまとめて出て行くのである。
その時、もう一人、二人着いてくる場合があるが、すぐに出て行くので特に気にならなかった。
たまにしぶとい奴がいたが、時間の問題だった。
コイツもさっさっと出て行った。
そのうち戻ってきて、荷物をまとめ出て行くだろう。
『ここは、俺の家だ。』
予想を裏切り早一週間。
二十代前半の男はまだこの部屋にいた。
『本当に鬱陶しい。死んでくれ。』
死ね死ね死ね死ね…耳元で呟いてやる。
聞こえてるかは知らないが。
___数日後。
『ねぇ、またあのアパートの◯◯◯号室で自殺があったみたいよ。』
『聞いた聞いた。今回はまだ二十代の若い子だったらしいわね。』
『そーなの?若いのに気の毒だわ。絶対何か憑いてるよねあの部屋。』
作者natu