解離性同一性障害…
通称:多重人格障害…と言われているモノだ…
私はまさにその解離性同一性障害を患っている…
コレは解離性障害の一種で…
まず、解離性障害は本人にとって堪えられない状況を、離人症のようにそれは自分のことではないと感じたり、あるいは解離性健忘などのようにその時期の感情や記憶を切り離して、それを思い出せなくすることで心のダメージを回避しようとすることから引き起こされる障害であるが、解離性同一性障害は、その中でもっとも重く、切り離した感情や記憶が成長して、別の人格となって表に現れるものである。
自己紹介をしよう。
私の名前は菅野 徹、34歳、独身のフリーターだ…30越えで独身のフリーター…この障害が無かったら果たして私は普通の人の様に結婚して、ちゃんとした仕事につけて居ただろうか…?今となっては、分からない…
しかし、私にとってはこの障害が苦痛に思う事は無い、が、もう一人の人格、犬神 真也にとってはこの解離性同一性障害は苦痛そのものだろう。
強烈な苦痛を私は彼になすりつけているのだと、掛かりつけの精神科医の医師は話した…
このところ、私の人格でいる時間が短くなってきている…
私の人格の時に医師と話したのは実のところ、まだ2回だけなのだ…
……………
真也がどの様な生活をして居るのか…
実は私はその事をあまり知らない…私の眠って居る間に彼は現れ…そしてあの仕事に向かうのだ…
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私は怖い話し、怖話を集める為全国を旅する怖話ハンター 犬神 真也だ…今回はある道路ミラーに纏(まつ)わるはなしをしよう…
……………
「○○坂を上がって突き当たりのT字路に設置された左右確認用ミラー…
決まった時間にあいつは映るんす…それは、俺の帰宅時間なんす。
俺、自分の愛車でその道を何時も通るんすけど、毎日の様にソレは現れるんすよ…」
加藤 弘(カトウ ヒロム仮名)の話によれば…
その場所のミラーに映る、謎の人物はそのT字路に差し掛かり…ミラーを確認した時に映る…
その為、加藤は…人が歩いているという事で危険の無い様に注意して曲がる…が、そこにはソレの姿は無く、何時も気味の悪い思いをすると言う…
ソレは特に変わった姿をしているわけでは無く…普通の女子中学生風の女の子だそうだ…
……………
加藤 弘(仮名)…
この男、元暴走族のリーダーだったそうで、かなりの強面だ。
頬には深い傷跡があり、目頭などもボクサーの様に腫れ上がっている…
頬の傷は単車で転けた時のものだと話していたが、それは、明らかにナイフなどの刃物による傷跡にしか見えなかった…
以前この付近の埠頭(ふとう)で、大きな暴走族同士の抗争が有った…
何十人も逮捕者が出る程の大騒動だった事は新聞で読んでいたので覚えがあった…
恐らくあの傷跡は、喧嘩などを繰り返していた頃に負った傷なのだろう。
…見た目とは裏腹に彼は非常に真面目で誠実な男だった。
現在は街の家具を作る会社に務めているそうだ…
昔、少年院に入っていたらしく、受け入れてくれる会社がそこだけだったと話してくれた…
「あのT字路っす…」
そこには、なんの変哲も無いミラーが立っている…
時間的にまだ早かったので、その時間になるまで手前辺りで待機する事にした。
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どうやら、心霊スポットと呼ばれる場所に真也は来て居た様だ…
見慣れない風景…
車内では、知らない男が隣に座り、不思議な事を口にしている…
「あそこの左側のミラーにソレは映るんす…で、曲がろうとあの道に出ると、そこには姿が無い…めっちゃ怖くねっすか?」
なるほど、鏡に映る地縛霊と言うわけか…
たまには、こういうのも面白い、暫く真也になりすましてその霊ってのを拝んでやろう…
「おい、何時にソレは現れるんだ?」
「?…なんか、犬神さんキャラ変わってないっすか?」
「そんな事はどうでもいい、どうなんだ?」
「は…はい、あと1分位でその時間っす…なんでソロソロ行きましょう…」
彼は慌てた様子で車を発進させる…
そのミラーに今は特に変わった者は何も映って居ない…が、その時だった…
セイラー服に身を包んだ、女がミラーに突如現れ、ゆらゆらと揺れる様な動きをしている…
車が左に曲がると…
その女の姿は無く、確かに彼が話した通り、霊のようだ…
「ほう…お前の言う通りだな。」
と、あの娘が立っていたであろう場所を見ようと後ろを振り返る…
「うっ!!?」
後部座席にセイラー服姿の老婆が乗っている…
いや、老婆じゃない…
ミイラの様に肌が乾燥して皺だらけの顔、パサパサに艶を失った髪、ギョロギョロと視線が安定しない目玉が実に気味が悪い。
恐らく、何処かに閉じ込められて、このような姿に…いや、考え過ぎか?
「ど、どうしたっすか?」
「バックミラーには映らないのか?後部座席の奴は…」
「へ?……うわわ!!」
『キキィーッ!』とブレーキを踏み車を停止させる…
もう一度、後部座席に目をやるがソレは既に消えている…
「お前、見覚えあるのか?さっきのアレ…」
「お、お、俺じゃないっす!ダチがその…お、俺じゃないんすよ!」
この男、何が言いたいんだ…
「誰にも言わねえから、詳しく話せ…」
と、ダッシュボードに置かれた煙草を一本頂き、火をつけた…
……………
彼がまだ、ガキ(暴走族のリーダー)だった頃…
友人の運転する車であのT字路を通った際、付近に住む女子中学生を轢いてしまったのだと言う…
直ぐに、救急車や警察を呼べば事は済んだのだが、彼らは無免許で運転していた事もあり、その女子中学生を車に乗せ、近くの倉庫に持ってゆき、捨てたのだそうだ…
「その女子中学生は今はどうなってるんだ?」
「分かんねす…ダチがまたあそこに行って片したもんだと…」
「ふふふ…なら、行ってみよう…もしかしたらまだそのままかもしれないぞ?くっくっく…」
「いっ嫌っすよ!な、何が可笑しいんだよ?あんたどうかしてんじゃないのか?ぶっ飛ばすぞコラ!」
「お前が悪いのだろう?…
正直な話、あそこに留まる地縛霊だと最初は思ったが、そうじゃ無い…お前に憑いてるんじゃないのか?あの子は…くっくっく…実に面白い…」
「て、テメェ!マジぶっ飛ばす!」
「殴れば、お前に憑いてるソレは取れるのか?ハハハ…じゃあ人助けだ…殴るがいい…」
すると、奴はガックリと肩を落とし観念した様にその女子中学生を捨てたという倉庫に向かった…
廃墟と化したその倉庫は今も暴走族やカラーギャングの格好の肝試し場所と化しているようで、落書きだらけだった…
辺りは既に暗くなり始めていた為、完全に暗くなる前に早速、女子中学生を捨てた場所に案内させた。
倉庫内は乾燥剤などを貯蔵していたようで、袋が幾つか破けた状態で散乱していた…
「ここだ…」
用具入れが無造作に置かれている…この中にその女子中学生を乾燥剤などと一緒に入れたのだと話した…
錆び付いていて開けるのにだいぶ時間がかかる…
落ちていた平べったい鉄の棒をバールがわりに無理やりこじ開ける…
「う…」
そこには完全に白骨化したセイラー服に身を包んだ死体が入っていた…
私は直ぐに携帯電話を取り出して警察に連絡しようとすると…
「何やってんだよ!まさか警察に電話しようってんじゃねえだろうな!?」
「当然だろ…」
「やめてくれよ!捕まっちまうよ!」
「当然の報いだ…」
そう言って警察に電話する…だが、このぶんだと私まで色々と聞かれるだろうな…
事情聴取か…面倒だな…
……………
……………
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何時の間にやら知らない倉庫に来ている…
横で加藤が泣き崩れているし…
何だこれ?
ミラーは?
ん?……
うわわ!!?何この白骨死体!
え?
どうなってんの?
ちょっと!
すると、パトカーのサイレンがこちらに向かってやってくるのが分かる…
マジ?もしかして、私ら第一発見者?
事情聴取とかされるわけ?いやいや!何も答えられないよ!?
てか、私はなぜここに居るんだ!?教えて?なにこれ……?
作者退会会員