街に出ると、良い女は居ないかってんで、私は目をクルクルと致しますから、目を回すわけで…阿保もここまで来ると、大したモノですな…って落語みたいな入りですが…すいません落語風の噺ではありません。
……………
滅多に街まで買い物に…なんて事はしない私ですが、珍しくオシャレなんぞをして昨日、出かけてまいりました。夜は久々に飲み歩いたりもしました…
おっと…自己紹介がまだでしたね。
私は怖い話、怖話を集めるために旅をする…と言ってもここ最近は旅もしておりませんが…ある病気で静養して居りましたから…
ええと…怖話ハンター犬神 真也です。
ダサいネーミングだ…と、どなたかに罵られましたが、変えるつもりもありません…ここまだ来たらトコトンまでこれで通してやるつもりです。
今回は『街』…の怖い話でもしましょう…
ご存知の通り、…知らない方も居るとは思いますが…私は時々記憶を無くしていて…以前、来た事があるはずの場所も初めて来た場所と認識したり致します。
そのため、久々だね…なんて声を掛けられても、「は?」なんてマヌケな顔をしたりしますから、その方を傷つけたりなんてしょっちゅう…ございます。
確かあれは、腹が空いたと友人とレストランに入った時でした…
メニューとお冷やを運んで来たマスターに
「珍しいね…お友達を連れてくるなんて…」
と、馴れ馴れしく声を掛けられた時でした、私が
「え?ここ初めて入った店なんですが…」
と、返事をするとマスターは
「ご冗談を…常連さんのくせに…ハハハ!」
と、言われたことがあったりと、全く困ったものです…その為、ここ最近は、あまり街に出掛ける事が少なくなって居りました。自分自身でも気味が悪いので…
まぁ、それはさておき…
『街』にはみなさんが思っているほど清潔で無い場所が多くあります…
こんな事を言ったら街を管理している方に何を言われるか分かりませんが。
…ある路地裏を近道として使う、皆さんもおありだと思います。が…
そこには現実では考えられないほど危険で不気味で不潔な場所が多くあります。
ゴキちゃんなんて、代表的なものでは無く、もっと禍々しい現実離れした生き物…
沢山の店が犇(ひし)めき合っておりますから当然、ゴミが出ます…
それを目当てに鼠やゴキブリだけじゃなく、現実では考えられ無いものたちも寄ってくるのです。
ある日、私も酔っ払ってしまい…歩くのもしんどくて、近道で路地に入ったことがございました。
初めて通る路地…こんな店あったんだと、酔っていても何と無くワクワクするものです…
すると、誰かが私の肩をポンっと叩く『気配』がするのです…叩かれたという表現のできない感覚で背筋に冷んやりとしたモノが流れました。
恐る恐る振り返ると、そこには、顔が見えないほどキャップ帽を深く被り、全身を隠すように大きめのコートを身に纏ったホームレスが立って居りました…
「食い物を置いていけ…」
擦れたひどい声で彼はそう言いながら手を突き出す…
しかし、ただのホームレスとは何か違う変わった空気を感じ…
「持っていません」と返事を返すと…
彼は、ふっと顔を上げました。
暗かったが目だけがが見える…
人間の目じゃないのです…
白い部分(白目)がなくオレンジ色に光る、まるで爬虫類の様な目…
瞼は縦に閉じず、横に閉じる…
……………
すると、私のポケット…いや、全身を何かが探る様な感覚に襲われる…
そのホームレス風の者は身動きひとつして居ないのに、それが感じる…
何と無く口の中まで変な感じがしたのが一番気持ち悪かった…
実は腹の中まで嫌な感覚がした…そこに行く前、酔っていた為、全て上げていた事が良かったと今は思う…もし、腹に食べたモノがそのままだったら、どうなっていたか…
だが…この後更に恐怖の言葉を掛けてくる…
「何も無いのなら、身体のどれかを置いていけ…」
その時、私はチューインガムをポケットに入れていた…
すると、ギラリとその恐ろしい目が光る!
「置いていけ…」と手を出す…
!?
先ほどは気がつかなかったが指が六本ある…
私は慌ててチューインガムをポケットから取り出し奴目掛けて投げつけると、一目散に逃げた…
初めに言わなかったが奴は物凄い悪臭を放っていた…
生ゴミの臭い…
獣臭…
排泄物の臭い…
どれともつかない、ひどい臭いだった…
その後、その路地を出て直ぐの店に逃げ込んだ…
骨董屋?…勿論初めて入る店。
「犬神くん…久しぶりだね。彼に会いに来たのかい?例の餌やりに…フフフ…餌食はどんな奴だい?」
と、マスター…その人の怪しい顔は今でも忘れられない
左目の義眼をクルクルと弄っている仕草が実に気味が悪かった…
どうやら、私は以前からあの路地に来ている様だ人格は別人だが…
昨日、ある路地付近で、あの時嗅いだ悪臭がした為、この話をお知らせしました。
作者退会会員