山に囲まれた田舎町で育った私の体験談。
子どもの頃の私といえば、「この世ならざるもの」が見える体質だった。
家の中にいると、見知らぬ女が壁をすり抜けて入ってきたり、どこからともなく大勢の人間が話している声が聞こえてきたり…亡くなった祖父が枕元に立っていたこともあった。
周囲の大人に話しても大抵は本気にしてくれないものだが、同居していた祖母だけは信じてくれた。
「子どもはねぇ、神さんに近い距離におるからね。不思議なものが見えたりするもんなんよ。でもなぁ、ちょっと心配やねぇ」
祖母は私を近くの神社に連れて行ってくれた。お参りを済ませ、祖母に手を引かれながら帰路につく。
「あれ…?」
祖母の肩口のところに男の人の頭が乗っかっている。目を吊り上げ、歯を食い縛りながら祖母をギロリと睨みつけているではないか。
私はびっくりして祖母を呼んだ。祖母はニコニコしながら私を見る。
「何?どうかしたんか?」
「ばあちゃん、ばあちゃん。ばあちゃんの肩のとこ…怖い人おるよ。怒った顔してる。あれ誰?」
すると祖母の顔が引きつった。急に難しい表情を浮かべると、低い声でボソリと呟く。
「…黙っとき」
作者まめのすけ。