【重要なお知らせ】「怖話」サービス終了のご案内

中編4
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笑顔

「この犬、幾ら?」

ペットショップ店員に聞くと、

「そちらのワンちゃんは売り物では無いんです…」

と答えた…

………………………………

家内と話をして、子供の教育上良いと、ペットを飼う事になり、俺はペットショップに来ていた。

娘にサプライズでプレゼントするつもりでいたが、家内がその事を話してしまったらしく、娘と俺の二人で行く事に…

(まったく…余計な事を…)

どの犬もキラキラした目で俺の顔を見ている…どいつもこいつも…可愛い…

中でも一際、俺にアプローチして来る奴がいたので娘を呼ぶ…

「弥生?こいつ、どうだろう?」

「わぁ!可愛い…この仔が良い!」

娘が気に入ってくれたので、店員を呼び、値札が無かったので値段を聞く…その結果がこれだ…

………………

「弥生、ダメだって…」

「や〜だ〜!この仔!絶対この仔!」

困った…

しかし、確かにこの沢山いる犬の中で一番可愛く…それにウチの娘もだいぶお気に入りのようだ。そこで、抗議する事にした。

「え?じゃあ、何だって店頭に出てるんですか?売って無えってんだったら奥に引っ込ませて置けば良いでしょ?どうしても、ダメですか?」

「はぁ…その…店長に聞いてみます。」

店員は困り果てた表情でそう言い、奥に引っ込んで行った

店長が来るまでの間もその犬は精一杯、愛きょうをふりまき続けた…

くるくると回って見せたり、後ろ足で立って両の前足をちょいちょいと動かしたり…実に可愛い…

「お客様、如何なさいましたか?」

店長が出てきた。

「どうもこうも無いよ、この犬欲しいんだけど売り物じゃ無いって…売って無えってんだったら奥に引っ込ませて置けば良いでしょ?何で店頭に出てるんですか?」

「申し訳ありません…その…お客様がどうしても、その仔犬が欲しいと仰るのならば…その…お代は結構ですのでお持ちかえりください。ミックスですので…」

「え?ミックス?あっ…雑種なんだ…まぁ、雑種でも構いません。この仔犬、ください」

「はい、かしこまりました。」

雑種ならば値段はつけられまいと思いながら、その仔犬を受け取り、娘と良かったね!などと話しながら店を後にした…

数年後…

『チャッピー』と名付けたその犬は僅か5才で死んでしまった…

家族皆でこれでもかというくらい可愛がった…

あまりにも早く、あまりにもあっさりと死んでしまった…

娘の弥生は最もチャッピーを可愛がっていた…

だから、余計にショックを受け…ずっと泣き続けていた…

明くる日も…また、明くる日も…そのまた、明くる日も…

いい加減、ひどすぎる…

「弥生…もう忘れなさい…お父さん、また新しく犬を買ってあげるから…」

しかし、首を横に振る…

「チャッピーじゃなきゃ嫌だ!」

それから数日たっても弥生の悲しみは消えず、次第にあれほど明るい性格だった弥生から言葉がなくなった…笑顔がなくなった…外出がなくなった…

笑いの絶えなかった家族内にも会話が減り、口を開けば喧嘩になるほどになっていった…

それほどチャッピーの死は影響力が強かった。

タダでもらって来たその犬に払った代償はあまりにも高い…

タダほど高いものは無いと言うが本当だった。

弥生が自殺したのだ…

登校拒否になったのは、イジメが原因だったが、犬が死ぬ前、弥生はイジメられている様子は無かった。

が、犬が死に、性格の暗くなってしまった弥生はイジメの対象になり、ついには自殺にまで追い詰められてしまった…

弥生の部屋にあるパソコンに匿名で心無いメッセージが山ほど送られていたのを俺は震えながら読んだ…家内には見せられないと全て削除した…

弥生が死に、家庭には更に会話がなくなり…

離婚に至るまでは、それほど時間はかからなかった…

下の子は家内が引き取る事になった…

………………

ウチの脇にあるチャッピーの墓の前に立っている…

「お前は、何のためにココに来たんだ?俺をどうしたいんだ?死んでくれってか?おい…?何とか言えよ…クソっ!」

あの時、他の犬にしておけば…

そればかり頭をよぎる…

イジメをしていた弥生のクラスメイトに会いに行ったことがある…

「イジメをしているつもりは無かった」と皆、口を揃えて言った…

「ごめんなさい…」

と、泣きながら話す彼らをこれ以上責めることは出来なかった…

俺の怒りの矛先は一体誰に向ければいいのだろう。

酒浸りになるしか俺には方法がなかった…

今は、あの頃の仕事も辞め…日雇いで働く毎日をおくっている…

人から見たら、ホームレスというヤツに見えるだろう…実際そうだ…

住んでいたウチも売り払い…ギャンブルと酒につぎ込んだ為一千も無い…

今、あるのは…仕事用の作業服と娘と一緒に写った写真だけだ。

最近、弥生が会いに来てくれる…チャッピーを連れて、俺の枕元にニコニコ笑いながら立っている…

喋りはしない…

話しかけても、返事も無い…

だが、それでもかまわない…

弥生の笑顔がまた見れるのなら。

Concrete
コメント怖い
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酒とギャンブルで身を滅ぼしたのは自分の責任だ
なんかの所為にする典型的なやつだな

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魅せられてしまったんですかね
お店の方がほんとに雑種ってだけでしぶったのか気になる所です
家族の一員…でもそこまで影響を与えるなんて
こわいです

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