私は小さい頃、
両親が共働きだったため
よく祖父母に面倒を見てもらっていた。
かなりじじばばっ子だったと思う。
40代の頃の孫なので
よく親子に間違えられて嬉しそうだった。
おばあちゃんはおじいちゃんにベタ惚れで
おじいちゃんは
当時のイケメンだったようで
更にお茶とお花のお免状もあり
結婚した後も
着流しで下駄をつっかけて
カラコロ言わせながら出掛ける姿が
かっこ良かったと
孫にのろけていた。
お見合い結婚だけど
結婚して恋をしたそうだ。
なんとなく羨ましく思った。
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そんな粋なおじいちゃんも
50代後半から体調が優れず
数度の入退院後、
眠ったまま起きてこなかった。
前日、普通に
お休み、と寝て
そのまま亡くなったようだ。
学校から慌てて帰った私が見たものは
小柄な体を更にきゅっと縮めて
茫然としていたおばあちゃんだった。
「麗ちゃん、おじいさん、逝ってまった…
おばあちゃん一人になってまったよぅ…
寂しいねぇ…どうしたらええかねぇ…
おばあちゃんを支えてなぁ…」
と泣きじゃくるおばあちゃんを
私も泣きながら抱き締めた。
その日はホワイトデーで、
落ち着いた時に冷蔵庫から
私達孫へのプレゼントを見つけたとき
泣きながら
キザだわ~
と笑った。
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十数年後
おばあちゃんにガンが見つかった。
数度目の入院の時
「覚悟しといてね」
と、親に言われた。
なるべくお見舞いに行ったが、
段々と会話がおかしくなり、
私はよく叔母と間違えられていた。
ある時、
寝ている事が多いおばあちゃんが、
珍しく起きててニコニコしている。
「ご機嫌だねぇ」
「ウフフ」
と、少女のように笑った。
「どうしたの?」
「あのね、おじいさんが来てくれるんだわ」
私はぎょっとした。
「や、やだな~!お迎えには早いよ~」
「つーちゃんとね、呼びに来てくれるんだわ」
おばあちゃんは嬉しそうに言った。
つーちゃんは、産まれずに亡くなったおばあちゃんの一番下の子だ。
「おばあちゃん…おじいちゃんが大好きだもんね」
「ふふふ」
「おじいちゃんが迎えに来てくれて…嬉しい?」
「そりゃぁ嬉しいわね。若い頃の格好いい姿できてくれとる」
「おじいちゃん、格好つけだねぇ」
「つーちゃんは、育っとるの。いい娘になっとる」
「え~?私より?」
「あんたより美人だわ」
「おばあちゃん一言余分だわ」
「あはは」
久しぶりの穏やかな会話だった。
「…おばあちゃん、おじいちゃんに伝えてよ。まだ連れていかないでって」
「…そりゃぁあかんわ。私がおじいさんといきたいもん」
「…そっか…ごめんね、わがまま言って…」
その数日後
おばあちゃんは旅立った。
きっとおじいちゃんとつーちゃんが
お迎えに来てくれてたんだと思う。
私もそう想える相手と出会えたらなぁ…
おばあちゃんが未だに羨ましく思う。
今頃おばあちゃんも若い頃の姿で
デートしているだろうか。
作者退会会員
怖い、と言うより
ほほえましかったエピソードです。