今日は。
under takarです。
今日は、つい先日の話をします。
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僕は、仕事柄(僕の仕事はunder takarを和訳してもらうとわかると思います)人の《死》に携わる機会が多く、改めて人の生き死にを考えさせられる事が多いんですが、
その分、いわゆる《遺体》への恐怖は薄れました。
あるのは安らかに逝ってほしいと言う気持ちや、可哀想だなと言う気持ち。同情ではなく、辛かっただろうなって思うと頑張った故人への尊敬と共に、だからこそ頑張ったのに亡くなられてしまい可哀想だなと思うのです。
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さて、
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とは言え、僕がこの仕事に就いてまだ一年は経っていない。
だから、他所の同業者がどこまで同じ事をしているかはわからないけれど、社長曰くは
「うちみたいな入り口から仕事をしている所はそう無い」
と。
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皆さんの中で、医療関係に携わる方はいるでしょうか?
居るならばご存じでしょうが、
僕の会社は《エンゼルケア》と言う仕事から始まり、病院にお迎えに行き、その後のお手伝いもできるよと言うアドバイスをしています。
そこで、必要としている家族に素敵なお別れをしてもらう為の協力をするのです。
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ご存じ無い方の為に説明すると、《エンゼルケア》と言うのは
例えば病院に入院していた患者さんが亡くなり、
長いことお風呂にも入れず、
男性ならば髭が伸び放題、
女性ならば髪は乱れ、化粧も出来ず…
酷いときには目や口が開いたまま。
そんな状態の患者さんを、そのまま家族の元に帰らせるのは可哀想、と言う事で、整えてあげるという処置です。
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その日も病院から電話が来た。
救急外来。
運ばれてきてそのまま亡くなってしまったのだろう。
僕と、同期入社のAさん(女性)とで病院に向かった。
ご安置先は霊安室。
霊安室と言うと昔はやはり怖かったけど、
今となっては周りを気にしないでケアが出来るからけっこう好きだ。
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家族に挨拶をしてから始めるのが常だが、
家族がどこかに行ってしまっているそうで、
仕方ないので来たら来た時に話そうと
ケアを始める。
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今回は女性。
まだ若そうだ。見た感じじゃ50代後半、いってても60代前半。
80、90、時には丁度100歳なんて方も居たから、この若さで亡くなると言うのは家族も辛いだろう。
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汚い話しだが、霊安室に入った時から既に便の臭いがしていた。
亡くなる時に緩むのか
逆に力が入ってしまうからなのかは定かでないが
二人とも察してゴム手袋、マスクを2重に装着、オムツを取り替え、着替えをさせ、体や顔を拭き、Aさんが化粧を施す。
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不謹慎だと思われるだろうが、
ケア中は結構あれこれ話しながらやっている。
勿論、場所はわきまえる。
ケアの為の会話をする必要もある。
だが、僕とAさんは同期と言う事もあり、普段から仲が良くバカ話しもよくする。その延長のノリで、また、霊安室という閉鎖された空間だったので、病院関係者や家族に聞かれない安心感から、割りと他愛もない話しをしながら進めていた。
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「慣れ」と「ある意味現実逃避」みたいなものだ。
毎回、ケアの度に故人に思入れを込めていたら出来ない処置もある。
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化粧が終わり、改めて見ると鼻筋が通り、目も大きそうな綺麗な女性だった。
Aさんに言わせると眉毛も整えてるし普段から身なりに気を使ってる人じゃないかと。
なるほど。わかる気がする。
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さて、終わったので家族を呼んで看護師にも見て貰わなくては。
内線電話から救急外来担当の看護師に連絡をする。
すぐに来てくれたが、肝心の家族が未だに見当たらない。
看護師も「あら…変ね、そこのソファに居るように伝えたのに」
とこぼす。
看護師が探して連れてきてくれる事になり、しばし霊安室で待機。
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僕らはエアコンの効いた涼しい霊安室で、仕事の愚痴やバカ話しをしながら待った。
―――まだこない。
10分くらい経っただろうか?
痺れを切らし、救急外来の診察室に呼びに行く事に。
Aさんを残し、
診察室に行き、穏やかに尋ねるが、救急はなにしろ忙しい。
亡くなった方より、今生きている患者さんに追われているため、あまり相手にしてもらえなかった。
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腑に落ちないが、仕方ない。
僕―もう少し待ってろって。
と言いながら霊安室に戻ると、Aさんの姿がない。
?
裏口の扉がわずかに開いている。
亡くなった方を連れていく為の車を停めておくスペースだ。
扉を開けると誰かと電話をしている。
敬語のところを見ると、会社に報告しているのだろうか。
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僕―どしたの?
A―もう1件出たんだって。
こっちを片付けてから向かってほしいって。
僕―マジか~…救急行ったらさ、相手にしてもらえなかったんだけど。家族らしき人影もないしさ…
A―めんどくさいね。
僕―ね。
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溜め息混じりに更に待つこと10分。
再び痺れを切らし、内線電話でもう1件出てるから行ってしまうよと伝えて向かっちゃおうかと言う話しになり、
電話をすると、悪びれもしない感じで
―あ、今家族来ましたから。連れていきます。
と。
二人してやや怒りながらも、一応メドがついたので、僕が先に次の現場に向かって家族に話しをする事に。
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次の患者さんはちゃんと家族が待っていてくれて、程なくしてAさんが合流。
次は男性。
見た感じ70~80代。
髭が凄い。
個室だったので、Aさんがさっきの家族は喜んでくれたが、看護師の態度が悪いと愚痴を言う。僕は笑いながら聞き流し、ケアを進める。
僕―うっ!
A―どしたの?
僕―危険な臭いがする…
またしても、酷い便の臭い。
霊安室と違い、一般病棟はあまりエアコンを付けてない。
窓を開けたくても事故防止のためか5センチくらいしか開かない。
再び、マスクを2重にして続ける。
それにしてもやはり酷い臭いだ。換気が出来ないから部屋中に充満してしまい、二人とも汗だくだった。
こちらは、便以外は滞りなく終了した。
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二人とも、ぐったりして会社に戻り、先輩に報告。
とにかくお腹が空きすぎて堪らなかったので、昼飯。
食べ終わったら14時近くて、何故か二人ともやる気が出ない。
だるい。
体がだるい。
何かしようにも頭も体も重い。
いつもとちがう。
いつもなら、2件重なろうが、その後自宅に連れて帰ろうが、もう1件出ようが、構わないくらい元気なのに。
一番年下組で、元気な二人の異常を察して、Yさんという先輩から、先輩命令が出た。
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Yさん―ちょっとお前らおかしいな、熱計ってみろ。
A―熱なんか無いですよー。
Yさん―うるせぇ、いいから計れ。
二人して文句言いながら熱を計ると
Aさんは37.5℃
僕は35.8℃
二人とも体温がおかしい。
僕の平熱は36.5℃くらい。
Aさんは知らないが、少なくとも今は微熱がある。
僕は下がりすぎだ。
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さっきまでは何とも無かったのに。
二人して顔を見合わせる。
Yさん―いきなりだな、一番怖えぇのは、さっきのケアでなんか変な病気を感染してきたんじゃないかって事だ。
心当たり、ねえか?
僕―いや、確かに便は酷かったっすけど、マスクもゴム手袋も2重にしたし…
A―そうそう、便には触らないように気を付けたし…
Yさん―そうか、血液とかは?
僕―両方出てませんでしたけど。
A―髭剃った時にも皮膚切れたりしなかったしね。
僕―うん、点滴の跡も血は止まってたし…
Yさん―だとしたら、病院内で何かの病原菌が空気中をさ迷っていて、それを吸い込んだか…
僕―院内はマスクしなかったなぁ…。
Yさん―まあその可能性は低いがな。
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shake
A―もしかして…今のエンゼルで何か変なの連れて来ちゃってたりして~…
不意にAさんが不吉な事を言い出す。
僕―ま、まさかぁ。
一瞬、ドキリと胸が鳴る。
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だが、普段からあまりにも遺体が身近過ぎて気にしなかったが、彼らはたまたま医師や家族に見守られて往生をした人達で、ある程度予感してたりするのだろうが、
例えば今日の女性の様に、急に容態が変わってそのまま…と言う場合、訳もわからず、仮に本当に魂の様なモノで存在し、変わり果てた自分を見ていたら?
見ず知らずの他人に訳もわからず衣服を剥がされ、オムツを当てられ、体や顔をいじられ…それを目の当たりにしたら、それは粗悪な扱いを受けていると感じるだろうか?
―――思うかもしれない。
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だが、現実主義のYさんは、その意見には全く賛同せず、
今日は暇だから無理せずゆっくりしてろと言い、
僕とAさんはだるい体を投げ出す様に机に座っていた。
だが、Aさんはどんどん寒気が増してくる様で、夏場だと言うのにカーディガンを羽織り、暖かいお茶を飲んでいる。
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僕はと言えば、ひたすらに体がだるい。
起きているのが困難なくらいにだるく、15時を少し過ぎたくらいで耐えきれず、トイレに行くふりをして少しだけ眠ろうと思った。
shake
5分ほど洋式便器に座り、眠ったのだが、
突然!!!
首の後ろに髪の毛の様な嫌な感触を覚えてビクッと起きた。
冷や汗と、リアルな感触に心臓をバクバク言わせながら、
男子トイレの個室、他に誰がいる訳でもない…
だが、何となく嫌だったので慌てて洗面所で顔を洗い、ペーパータオルで顔を拭いて出ると、心配した顔でAさんが探しに来てた。
今のは夢だったんだと言い聞かせ、大丈夫だと告げて一緒に事務所に戻ると
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Yさん―おい、大丈夫か?
僕―はい、大丈夫っす。
Yさん―無理すんな、今日はもう上がっていいぞ。
僕―いや、本当大丈夫っす。
Yさん―いてもする事ねぇし邪魔なんだよ(笑)
いいから、帰れ。
僕―ひどっ!でも、まだ早いっすよ。
Yさん―いいっつったらいいんだよ、先輩の言う事聞けねぇのか。
僕―こんな時ばっかり、先輩面して!(笑)
Yさん―当たり前だ、いいから帰って休め。
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僕としては終業時間までいるつもりだったが、よっぽど顔色が悪かったのか、しきりに帰れと言われてしまったので、お言葉に甘えて帰る事に。
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家に何とかたどり着くなり、愛犬や愛猫の歓迎攻撃を免れ、ベッドに沈みこむ。思っていたより疲れているみたいだ。
暑かったり、寒かったりを繰り返しながら、食事を取る気にもなれず眠り続けていると、電話が鳴った。
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僕―はい…
???―どうしたの?今どこ?
僕―え?何が?
頭が回らない。
???―7時に、待ち合わせしたでしょ?
僕―7時…?………あぁ…
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やっと思い出した、彼女と彼女の家族と、食事に行く約束をしていたのだ。7時に彼女の実家で待ち合わせ。
しかし
あいにくとてもそんな元気は無い。
何だか、さっきより体が重い。
僕―ちょ、無理かも…
彼女―どうしたの?具合悪いの?
僕―うん、なんかちょっと…
彼女―えぇ?大丈夫?
わかった、じゃぁとりあえずキャンセルだね?
僕―うん、ごめん…
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再び、眠りに着く。
夢か現か、
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今日の女性が出てきた。
睨んでいるような
怖い顔だ。
とても霊安室で見たような
綺麗な顔立ちでは無かった。
息が苦しい…
寒い。体が重い。
息が苦しい。
助けて!
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彼女―大丈夫!?
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一瞬で目が覚めた。
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僕―えっ。
彼女―なんか、苦しそうだったよ。平気?
僕―…………ん。
彼女―やだ、熱があるじゃん!
だからうなされてたんだね。
僕―寒い…
彼女―熱があるからだよ。ご飯は?
僕―食べてない。ダルくて…
彼女―うどん、作ろうか?食べてね?
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うどんを啜りながら少し話をして、
彼女は今日は実家に帰ると言う。
もし風邪だったら移すと悪いし、素直に帰って貰う事に。
帰り際、僕をベッドに寝かしつけた彼女が、
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彼女―早く良くなってね、はい、ヨシヨシ。
とまるで子供扱いで右肩、左肩を撫でる。
そして抱き締めてくれるのかと思いきや、
背中を撫で下ろす。
いや、正確には撫で払う、と言った感じだ。
僕―?何してんの?
彼女―ん?別に?
じゃぁゆっくり寝てね。また明日来るよ。
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それからは夢も見ずに眠った。
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翌朝、熱がまだあったので会社を休ませてもらい、ひたすら寝ていると夜になって彼女が帰ってきた。
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僕―お帰り。
彼女―ただいまー。おっ!
と、僕を見るなり驚いた様な顔をする。
僕―何だよ、なんか付いてる?
と尋ねたら、心底意外な言葉が返ってきた。
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shake
彼女―付いてないよ。どっちかって言うと、
憑いてたモノが取れてスッキリしてるね!
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彼女曰く
昨日の段階では、良くわからないモノが《憑いてた》のだとか。
男女の区別も出来ないくらい曖昧で、とにかく悪いモノだったが、
これのせいで熱を出してしまったようだ。
これはマズイと、肩や背中を払い、簡単な除霊をしたんだそう。
家族が待っていたのも本当だが、ちょっと一緒に居たくないから昨日は帰ったんだとか…
僕は霊安室の話しをし、その後から体がだるくなった事、Aさんと二人で急にそうなったと説明した。
すると
恐らく最初はAさんに憑いたが、僕の方が感受性が強く憑きやすかったから着いてきたのでは?
と……。
更に一言。
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彼女―感受性が強いって良いことだけど、その分《向こう側》の人に気に入られやすいから、気を付けてね。
今までも気付いてないだけで、
結構拾ってきてはどこかに置いてきてたりしてるからさ…。
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熱は下がったが、
違う寒気を感じて鳥肌がたった。
どんどん、
《あちら側》が近づいてきているような気がして。
誰もいない筈の背後から、うすら笑いが聞こえた気がした。
作者under takar
undertakarです。
3回目ですが、違う話を書こうとしてあまりにも最近起こってしまった事を書いてしまいました(笑)
皆さんの知らない業種の裏側も見れますので、良かったら見てください。