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中編4
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家のなか それから

今日は。

under takarです。

前回、家のなかに《いる》と言う話をさせて貰いました。

今回はその後の話をさせてください。

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玄関に男がいる。

だけど、引っ越したばかりの僕はそれくらいでまた引っ越すほど、金銭的にも余裕は無かったし、数日暮らしてみて、特に害は無いし、まあ放っておいても平気かな…と。

意識しすぎると返って怖くなるし、怖がったところで所詮僕には見えない存在。だから放っておきました。

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wallpaper:49

引っ越してから1か月が過ぎ、12月。

彼女が泊まりに来た。

最近では彼女も「玄関の人」に慣れてきたみたいで、あまり気にしなくなってきていた様に見えた。遊びに来ていても、余りその話題には触れてこなかったので、軽く忘れかけてさえいた。

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だけど、その日に限って不意に話が出た。

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彼女―そう言えば、「玄関の人」、誰かを待ってるみたい。

僕―はい?

彼女―いや、話をした訳じゃ無いんだけど、何となく

僕―待ってるって?

彼女―うん、その誰かと会うまでは、あそこからは離れないみたい。

僕―…待ち合わせ?って事?誰と?恋人、とか?

彼女―詳しくはわからない。何となく感じるだけだから。

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何となく感じるにしろ、

何となく話をしたにしろ、

その状況が怖い。ちょっと忘れかけていただけに、そう言えば我が家にはリアルに居るんだという現実が思い返されてしまった。

そしてその話をサラリとする彼女が怖い。

与太話や虚言癖のある人ではない。

だからこそ、余計に怖い。顔も真剣だった。

今感じた、この寒気は、この家のすきま風のせいだろうか。

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wallpaper:4

その夜。

早々に眠りについた僕を、ふと彼女が起こす。

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彼女―ねぇ、起きてよ…

僕―…ん?なに?(まだ暗いじゃないか…)

彼女―何か、玄関の方から変な光が出てる。

shake

僕―え? 光?…

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我が家の玄関入ってすぐ左手にトイレ、脱衣所、風呂がある。

人一人分のスペースの廊下を挟んで、右手に寝室として使っている四畳半。その四畳半の扉は曇りガラスと言うのか、半透明で花柄の様な模様が入っている。

完全な目隠しにはなっておらず、脱衣所や廊下、玄関に明かりが有れば明るさがわかってしまう造りだ。

つまり、彼女が言う「玄関の明かり」は実際にそこに明かりが点いているからこそ見えている。

そう言う事だ。

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僕―玄関の電気、消し忘れたっけ?

彼女―いつも点けっぱだとうるさいから必ず消すよ。

僕―………。

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まじまじと、玄関の方を見てみる。

だが、僕には光っている様には見えない。

どういう事だろうか?

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僕―…ねぇ、いつもと変わらない様に見えるんだけど…

彼女―嘘!ちょうど、ドアの辺りがぼんやり明るいでしょ!?

僕―いや、暗いけど…

彼女―…………。

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気まずい雰囲気だ。

彼女は視力が悪い。夜になってしまうとほとんど何も見えないらしい。だが、僕は逆に夜でも視力がほとんど変わらない。

その彼女だけが明かりを見えているという現実が通常ではあり得ない。その事が、二人とも分かっているだけに余計に気まずい。

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僕―…気のせいかも知れないから、見てくるよ。もしかしたら本当に電気の消し忘れかもしれないし…

彼女―…う、うん。

僕はベッドから出ようとした。

shake

その時だった。

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コツン。

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僕―えっ。

彼女―え?

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コツン。コツン。

音がする。

―廊下から。

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玄関から、寝室の前を通り過ぎ、台所と六畳の居間がある方へ、その音は小さくなる。

だけど、確実に廊下から聞こえる。

冷静に聞いてみると、革靴のまま廊下を歩いているような…

そんな音だ。

コツン。コツン。

また返ってきた。

玄関から台所の間を往復している。

一定のリズムで。同じ歩幅で。

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僕―歩いて、るね。

彼女―…。

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鳥が屋根に止まるとか、何かが壁に当たるとかの音にしては、聞こえている距離が近いし、重い。そして定期的で、上からではなく隣から聞こえてきている。

やはり廊下を「誰か」が「歩いて」いるという感じが一番しっくりくる。

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僕―…見て、みようか?

彼女―やめて!怖いよ…。

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だけど、僕は初めてに近いこの不思議体験に興味深々だった。

今、このガラス戸を開けたらそこに、知らなかった世界が広がっている…

その魅力に引き寄せられる様に、暖かいベッドを抜け出し、ヒンヤリとしたガラス戸に手をかけた。

コツン。コツン。

音はまだ続いている。

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shake

ガラッ!!

僕は、音が一番近づいた瞬間に力任せに扉を開けた。

彼女―きゃあぁあっ!

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彼女の悲鳴に体が硬直した。

廊下には…

誰も、何もいなかった。

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念のため、台所、居間も見てみたが、足跡さえなく物の配置が変わっている事も無かった。

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僕―何も変わったところ、無かったよ。

彼女―…そ、そう。なら良かったね。

僕―泥棒とかでもなくて良かった。

彼女―そうだね。

僕―凄い悲鳴あげるから、ちょっとビビったよ(笑)

彼女―………。

僕―もう寝よう。

彼女―うん。

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彼女は玄関から目を反らすように反対側を向く。

ガラス戸を閉めて、再びベッドに潜り込む。

仰向けになり、今の音の正体をぼんやりと考えながら、チラリと玄関側に視線を送る。

やはり、僕には光やおかしなモノは見えない。

じゃあ、あの音は…?

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―やめなよ。

体がビクッとなる。

眠ったと思った彼女が急に話しかけてきた。

向こう側を向きながら、話を続ける。

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彼女―…今日は、あたしが悪かったんだよ…。話をふったから。でも、余計な追求をしない方がいいんだね。だから、詮索しないであげて。もう寝ようよ。

僕―わ、わかった。

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慌てて彼女に習い、玄関に背を向ける様に寝返りをうつ。

彼女にしがみついた際に、視界の端で何かが光った気がしたが、

考えてはいけない事だと言いきかせて目を瞑った。

冬独特の風の音がする。

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アンサワダットさん、コメントありがとうございます。
僕も気になるんですが、いまだにわかりません(笑)
彼女も追求する気がないみたいで…
この彼女と付き合いはじめてから、こういう体験が増えたので、これからちょくちょく載せていきますね!

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いい感じの終わり方ですね。
男の人が誰を待っていたのかは気になるとこですが。笑

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