まずは自己紹介から…
俺は梶原勇哉、25歳だ。俺にはちょっとした特殊な能力がある。その能力を活かした仕事をして、荒稼ぎをしているのだ。
今日も客から依頼の電話があった。今は依頼人の家に向かっている途中で、そろそろ着く頃だ。
指定された住所に着くと、そこは豪邸であった。豪邸のまわりは石垣に囲まれていて、入口は洋風の大きな門があった。
門の脇にあるインターホンを押す。
「はい。」
若い女性の声が聞こえた。
「電話もらった梶原です。」
すると門が自動で開いた。中に入ると、真ん中に石のタイルで加工された一本道が豪邸の玄関口へと伸びていて、そのまわりは綺麗に手入れされた花木が埋め尽くされていた。
数分あるくと、玄関までたどり着いた。俺が玄関の前に立つと、玄関の扉が勝手に開いたのだ。
「梶原様、お待ちしておりました。」
俺を出迎えてくれたのは、メイド服を着た若い女性だった。
中に入ると無駄に広いロビーが広がっていた。床には高そうな赤い絨毯。俺はそのまま、メイドに連れられて階段を上がり、ある部屋へと案内された。
部屋の前には緑色のドレスを着た女性が立っている。
「息子はこの中です。」
静かに言って俯いた。俺はドアノブに手をかける。ドアノブに触れた瞬間、体に電気が走る。俺はそのままドアを開け放った。
部屋に入ると、奥に大きな机があり、男の子が座って何かを書いていた。
俺はゆっくり近付き、男の子が書いてるものをに目をやった。
そこには画用紙一面に死と書いてあるのだ。
「おい坊主、その漢字の意味分かって書いてんのか?」
俺が尋ねると、男の子は静かに振り返り、俺の目を見てにたーっと笑った。
「おまえら全員死ね!」
笑顔のまま叫んだ。部屋の入口あたりではさっきの女性が泣いている。
俺はジャケットの中から小さな小瓶を取り出し、コルクの蓋を外す。そして部屋の隅に置いた。
「今日はこれで帰ります」
女性に告げると、女性はびっくりした顔で俺をみてきた。
「あ、あのー、お経とかは??」
俺はその言葉を聞いて、可笑しくて吹き出してしまった。
今時、お経をあげて除霊するなんて考えるのはお坊さんかオカルトマニアくらいなもんだ。よほど仏教に精通しているような霊なら別だが、お経が効くのは仏教が栄えていた大昔の話。現代人がお経を聞いて、何か心に響くものがあるのか?それだけで怨念が浄化されるか?
もちろん答えはNOだ。
「あなた、お寺にも神社にも色んな霊媒師にも頼んで無理だったんだろ?なら黙って俺に任せとけばいいんだよ。報酬は終わった後でいい。」
「はい。あの小瓶は?」
「あれは絶対触るな」
それだけ言って俺は家に帰った。
次の日の朝、携帯の着信が鳴る。昨日の豪邸の女性からだ。
なにやら男の子が狂ったように暴れているとのこと。
それを聞いて俺はタバコにゆっくり火をつけた。あー、だいぶ効いてきたみたいだな。自然と笑みがこぼれる。
いっぷくして、昨日の豪邸にむかった。
部屋に着くと、部屋の中から男の子の泣き叫ぶ声が聞こえる。女性は俺の胸ぐらわ掴み、怒っていた。
そんなものは気にせずに、部屋の中に入る。
部屋に入ると、昨日の笑顔は嘘のように険しい表情をしていた。
部屋の隅に置いた小瓶に栓をする。そして、もう一つの小瓶をジャケットのポケットから取り出した。
小瓶を開けると、中から黒い煙が出てきて、部屋は煙だらけになった。
「ああああああああ!」
男の子は上を向き、叫び声を上げた。口からは黒い煙が吐き出される。煙を出し切ると、気を失ったように倒れた。
俺はそれを見て、左手を煙に向かって差し伸べた。煙は一気に俺の左手に向かってくる。
そしてそのまま煙が左手の中に吸い込まれていった。この瞬間がどうしようもなく激痛なのだ。
俺はうめき声を上げて、その場に座り込む。全ての煙がなくなったところで、俺流の除霊は完了。
その様子を見ていた女性は男の子に駆け寄って、何度もその子の名前を呼んだ。
その子は目が覚め、女性のことを「ママ」と小さく呼んだ。
「終わったぜ。報酬よろしく。」
俺の言葉を聞いて、女性はメイドを呼んだ。メイドの手には分厚い茶封筒があり、俺に差し出した。俺は黙って受け取り、自分の左腕を見た。また少し左腕の蛇みたいな模様が大きくなっているように見えた。
そして小瓶の蓋を開けて、左手で小瓶のくちを握りしめた。小瓶の中が黒いもやだらけになるのがわかる。ゆっくりと小瓶の蓋を閉めて、豪邸から立ち去った。
さて、次の仕事が来るのを待つか。
俺はタバコに火をつけて、夜の街にくり出した。
作者悪霊祓い
友人に霊能力者がいまして、その人から聞いた話をアレンジして投稿しました。
こんな人もいるんだなと思って読んでもらえたらと思います。
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