【重要なお知らせ】「怖話」サービス終了のご案内

中編3
  • 表示切替
  • 使い方

お彼岸に見た夢

それはもう何十年も前の春分の日ことでした。私は朝起きて不覚にも 二度寝をしてしまいました。その時の夢は…

私はどういうわけか、母親の里に行っていました。

叔父が立てた新しい家でしたが、鍵がかかっていて中には入れなかったので、近所にある大叔父さんの家に行きました。

大叔父さんはすでに亡くなっておりますが、大叔母さんがいるはずで、玄関の扉を開けて上がりかまちのところに行き声を掛けました。すると、大叔母さんが出てきました。もう90歳以上のはずでしたが、大叔母さんはどう見ても50歳頃の姿でした。大叔母さんはかなりの剣幕で私に言います。

「お正月以来、あの家は放りっぱなしになってるのよ。あんたは身内なんだからお正月の飾りを片付けて頂戴!」

いきなりの剣幕なので私は少しビビりながら、

「あ、でも僕鍵持ってませんし、勝手に中に入る訳にはいかないですし」

しどろもどろで答えると、大叔母さんは少し落ち着いて、

「仕方ないわね。まあ上がって仏様にお参りしていってね」

この大叔母さんは東北地方の出身の方で普段は岩手訛りの喋り口調でなんでもはっきり言うので親戚から怖がられていましたが、私はとても可愛がられていました。仏間に入ろうとすると、

「お茶入れてくるからね。ゆっくりお参りして行ってね」と台所の方に行ってしまいました。

仏間に入ってびっくりしました。

仏壇が巨大化して、仏間の奥にもう一部屋ある感じ、そこから恰幅の良いお婆さんが仏壇の内扉を開けて出てきました。写真で見たことのある曽祖母です。私を見て仏壇の方に呼びかけます。

「お爺さん、ひ孫が来てくれたよ」

すると、仏壇の内扉から曽祖父が顔を出して、

「ああ、T子の子か、わしら死んだ後に産まれた子やな。初めて顔見るわ。元気か?」

私は、元気です。と答えようとした所で目が覚めました。

起きてすぐこの話を母にすると、母は、

「そう、そんならすぐ叔母ちゃんとこ行こ」

と、私を急き立てて、母の実家の方に向かいました。母親は車の中で首を傾げて、運転している私に言いました。

「あんたのひいじいちゃんとひいばあちゃん、何で叔母ちゃんとこにいるんやろ⁇」

私に聞いてもわからん…。

我々の知らない間に母の里はえらいことになっているみたいで、とにかく急ぎました。案の定実家に行くと鍵がかかってて誰もいません。そこで、母は大叔母さんの家に行くことにしました。その時母は私に言いました。

「夢の話は叔母ちゃんには黙っとき」

その時は母が何を言ってるのかよく飲み込めませんでした。

大叔母さんの家に行くと、大叔母さんは90代の姿で出迎えてくれました。母が実家のことを聞きました。大叔母さんは母に話します。

「あの家ね、お正月から誰もいないのよ。Tちゃんあんたのお父さんとお母さんのお位牌は下の弟さんが引き取ったの。それは知ってるでしょ?そして、おじいさんとおばあさんはうちでお祭りしてるのよ。それは知らなかったでしょ?二人ともあんたには言わないでって言ってたから連絡出来なかったのよ」

下の叔父は奥さんに勧誘されて仏教系の新宗教に入信していて、それを知らない母が祖父母が下の叔父の家に来ているが何も食べさせてくれないと言ってぼやいている夢を見て、上の叔父に問い合わせると位牌を叔父が引き取ったと聞きました。それはかなり前の話です。

そして大叔母さんは私に言いました。

「あなたどうして挨拶しただけで帰ったの⁇1時間くらい前に一度来てたのに。変な事するね」

そこで夢の話をすると、

「ひいじいちゃんもひいばあちゃんもあんたの顔見たかったのよ。でもね。魂が抜けるのはあまり良くないね」

そう言って大叔母さんは笑っていました。

Concrete
コメント怖い
0
6
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ