私は母がいません。
私が幼い頃に病気で亡くなったと聞いています。
私が母について覚えていることはありません。
顔も声も覚えていません。
写真なども残っていましたが、綺麗に写っていないのであまり良くわかりませんでした。
母親がいないので、寂しいと思ったことはありませんでした。
父が大切に育ててくれたからだと思います。
そんなある日、夢をみました。
場所はよくわからない、というかよく覚えていないのですが、とにかく果てしなく続いているようでした。
そこを自分1人で歩いているのです。
すると、女の人がいるのです。
最初は遠くにぼんやりとした感じだったのですが、歩いていくとすぐそばにいくことができました。
顔を見てみても、誰だかはわかりません。
ですが、何故だかその女の人は懐かしい感じがするのです。
思わず私は言ってしまいました。
「…お母さん?」
その女の人は、微笑んで頷きました。
「大きくなったね」
綺麗な声で母は言いました。
初めて見る母の顔。
初めて聞く母の声。
夢だから、本当の母とは違うと思っても、やはり嬉しかったです。
「お母さん…
会いたかった」
そう言うと、私は母に抱きつきました。
初めての母の温もり。
涙が溢れてきました。
父に大切に育ててもらったとはいえ、本当は母がいなくて寂しかったのかもしれません。
「お母さんがそばにいてあげられなくてごめんね。
寂しい思いさせてごめんね。
…ごめんね」
母は私にたくさんのごめんねを言いました。
母は、幼い私を残して死んでしまったことをとてもとても悔やんでいました。
そして、母が
「お母さんはいつでも見守ってるよ」
と言ったところで、目が覚めました。
それから、私は母の夢を見たことはありません。
また、母に夢でもいいから会いたいと思うときもありますが、寂しくはありません。
母は私のことをいつでも見守ってくれていますから…
作者しば子
どうも、しば子です。
泣ける話を書こうと思ったら、大惨事を起こしてしまいました。
本当に申し訳ございません。
泣ける話って難しいですね…