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中編3
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遅かったお迎え

祖父が亡くなってお骨上げ兼初七日の法事のあった日の夜、私は父親に頼まれてしばらく祖母の部屋で寝ることになった。

急に一人になって祖母がさみしくなるだろうからという配慮だったと思う。部屋は仏間の隣、葬式の時の走馬灯式の灯籠が付けっ放しで、しかも襖が取り払われたふたま続きであるから、何となく不気味であった。

朝方、祖母が仏壇にロウソクを上げるために布団から抜け出して仏壇の前に座りロウソクをロウソク立てに立てた。そこで私は祖母に声をかけた。

「おはよ、ロウソクきえてたん?」

祖母は言った。

「ロウソク一晩中絶やさんと灯しとくわけにいかんやろ。お線香だけでええ」

その声を聞きながら私は 二度寝したらしい。

夢を見た。

玄関先に誰かが来ている。田舎のことなので、鍵はかけていない。「おはよさん」という声に玄関まで行くと、近所の何年か前に亡くなった爺さんが上がり框に腰をかけている。

「おじいちゃんこの度は気の毒やったな。それで参らしてもらいに来たんや」

そう言われても仏間の隣の部屋は布団を敷いたままである。

「お爺さん悪いけど、まだ片付け済んでないよって、ちょっと待ってな」

そう言うと、

「ああそうか?そんならわしもう帰らせてもらうわ」

そう言って出て行くので、

「まあちょっと待ってな」

そう言って上がり框のところまで行くと、お爺さんが出て行ったすぐ後に、見知らぬ人が入ってきた。農作業用の服をきているが顔が焰でできているような化け物で、まさしく鬼であった。

「おじいさん居てるけ?迎えに来たんや」

私は、うちの祖父か、さっきのお爺さんの事かどっちなのかと思ったが、咄嗟に

「もうとっくに極楽に行ってもたで」

すると鬼は、

「あ、しもた。間に合わなんだ。しょうない、次の番の家でしばらく待たせてもらうわ。邪魔したわ。ごめん」

そう言って慌てて家を出て行った。そして鉦の音が鳴って、そこで目が覚めた。

目を覚ますと祖母がまだ仏壇の前で座っている。私は何気無く

「今、太郎次のお爺さんお悔やみ言いに来てたけど、まだ布団片付いてないて言うたら帰ってしもた。そのあと、鬼が入って来て『おじいさん迎えに来た』言うよって、『もう極楽に行った』言うたら慌てて次の家に行く言う手出てってしもた」

そう祖母に言うと、祖母はびっくりした様子で、

「さっきロウソクに火を灯す前に、お前ロウソクの話してたやろ?その後ロウソクに火を灯して、鉦叩いた途端に太郎次のおっちゃんの事言い出したよってびっくりしたわ」

私の夢は数秒の間に見ていたらしい。

その後、近所のお婆さんが急に寝たきりになってずっと食事が取れない状態がひと月も続いた後に亡くなった。

私の話を聞いた母が言うには、

おばあちゃんから聴いたけど、太郎次のお爺さんはお祖父ちゃんとずっと一緒に寺の世話人してたんやて。それでお悔やみいいに来たんやろ。あのお爺さん自分死んでるの気いついてへんのかもしれんね。」

鬼は何だったのか?そう母に聞くと

「お迎えさんやろけど、今度しくじったらあっちの世界で大目玉食らうから、あのお婆さんの枕元に座って寿命の尽きるん待ってたんやろ?」

オカン、何かあのお婆さんとあった?

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