自分には恐怖体験など起こりえ無いと高を括っていた…まさかあんな事になるなんて…
俺には嫁がいない、その上、彼女すらいない…
俺は女性の暖かさ、温もりに飢えていた。でも、特に好きな人もいないし、セフレなんてもってのほかの俺は…
「ひとつ、ヘルスにでも…ふふ、行こうかな…ぐへへ」
いつもの事。
なんて事は無い、慣れたものだ…
大抵、繁華街をフラフラしていれば必ずお声がかかるのだ。
「オニイサン?マッサージ…トウテスカ?」
ほら来た。でもすぐには決めない。
まず、外人、中国人にはついて行かない。
何故中国人だと分かるのかって?
訛りで分かるでしょ?普通。
この手について行かないのは理由がある。
前金15000円とか言っときながら、後で必ずと言っていいほど、
「アト、五千エン、ホンバン!ホンバンネ?」
とか言って来るのは明白だ。
「オニィサン…タイジョプネ…写真タケ、写真タケミテイッテヨ」
「いや、また今度…」
「ソンナコトイワナイテ…写真タケ、写真タケ!」
しつこい奴め…
仕方ないな…写真だけか…まあ…嫌ならやめればいいのだから…
とその客引きについて行く事にした。
「分かったよ…写真だけな。」
「オニィ〜サン!サスガネ!コッチネ!コッチ…」
繁華街にはよくある光景。
(その主人公が俺とは…情けねぇなぁ…が、それがどうした!!)
などと考えながらその客引きについて行く…
汚いビルが立ち並んでいる中ひときわ汚えビルに入って行く…
五階建ての一見古いアパートに見える建物だ。『○○ハイツ』と書かれている。
しかし酷い…
まず、何処かの中華料理店か何かの厨房の換気扇を抜け漂ってくる…吐き気をもよおすほどの油臭…
階段を登り辿り着いた通路では点滅を繰り返す蛍光灯の灯り…
そして一番マズイのが、ゴミ袋が山積みにされた非常用階段…
何て所だこりゃ…
こりゃ無しだな…
写真を見るまでもねえ…
が、客引きは俺の気持ちなど全くいに返さない…
「ココネ!ササ!ハイルネ!」
と、ドアを開けるなり俺の背中を無理やり押してくる。
(折角だが、俺は帰るぜ…
じゃ無い!
他へ行くぜ…)
と思ったが、写真だけは見てやろうかなと…
「写真は?」と尋ねた
「タイジョブネ!ホンニンツレテクルカラ!」
は?!
話が違うじゃねえか!
写真だけって…
しかし、トントン拍子で事が運ぶ…
カーテンの奥から女が出て…
!!!!!!
オゥ…
マジか…
天使が立っている…
決め…ようか…な…
少し溜息を飲み込み。
「宜しく。」
と客引きにまんべんの笑顔でウィンクをする。
「ホント?アリカト!ジャ…ハナチャン?ヨロシクね!」とさっさと出て行ってしまった…
ハナ?花ちゃんか…ほう…可愛いじゃないか…ぐへへ。
「お客さん、ここ初めて?」
!!?
え?日本人?マジで?その全く訛りの無い喋りで直ぐに彼女が外国人で無い事を悟り
「え…あ…ぅん」と情けない声を出した…
とは言っても、もしかしたら日本生まれの在日外国人という場合もあると、直ぐに冷静さを取り戻したが…
「ん?どうしたの?ふふ…コッチだよ」
入り組んだ狭い通路を通ってある一角のカーテンを開け手招きする…
他にも客がいるのかボソボソと会話が聞こえたり、吐息が聞こえてくる…
しかしまさか、こんな可愛い娘がヘルス嬢とは…
周りをカーテンで仕切った二三畳ほどの区画にはベットとその脇に小さめの縦長テーブルがあるその上には籠が載せられていた。
(コレに脱いだ服を入れるのだな…)
「全部脱いでそこに入れてね…」
などと言いながら、彼女も着ていたものを全て脱いだ…
おぅ…
(スタイルめっちゃええやんけ…
これは当たりだ!間違い無く今まで会ってきたヘルス嬢とはLevelが違ぇ!)
俺も慌てて服を脱ぎ捨て、彼女を抱き寄せる…
「あっ…チョ…駄〜目!先ずシャワーを浴びて!」
(オット…俺とした事がヘルスでのルールを忘れるとは…)
俺がおずおずと下がると花ちゃんがニコっと笑う。
クッソ可愛い…
彼女はカーテンを少し開け、「シャワー行きま〜す!」と声をかけタオルを胸あたりでとめた。
彼女の後ろを少し恥ずかしそうについて行く…
狭いシャワー室は二人入るのがやっとの広さで、彼女は俺を先に入れ後からタオルを外し入って来た。しかし、良い女だ…
彼女はシャワーの先を手に取り蛇口を捻る、温度を確かめながら、俺の顔を見上げた。
「お客さんホント初めて?前にも来たでしょ?だって私、覚えてるもん」
「いや、無いよ…だって花ちゃんほど可愛い娘が相手だったら俺だって忘れるはず無いもん…」
「ええぇ!ふふ…ありがと。」
シャワーを俺の胸当たりからかける、「熱くない?大丈夫?」と聞きながら、白くスベスベの手が俺の身体を滑る…首から胸、乳首当たりを洗い、滑らかな手つきでアソコへと……
既にギンギンになった俺の股をスルリと小さな手で触れた。
おわっ…危ねえこんな所で果てたらいい笑ものだ…
彼女は慣れた手つきでプッシュボトルのボディソープを片手で手に取り俺の身体に滑らした…さっきと同じルートを通ってアソコヘ…入念に弄ぶような手つき…
ヤバイって!いっちまうよ!
思わず声が漏れる「あっ…」
「ふふふ…」
スッと手を離しシャワーを俺にかけた。
シャワーの蛇口横のコップを手に取りイソジンを入れる…
シャワーからお湯を入れ俺に渡してきた…
「コレで口ゆすいでね…」
と言いながら彼女は自分の身体を洗いはじめていた…
ここまでの流れはまるで無駄がなくスムーズ…(ここに勤めて長いのかな?)などと気にしつつ、うがいを二三回した。
一通りシャワーを済ませ体をタオルで拭いてくれた…自分の身体も拭き
「シャワー出ま〜す!」と声をかけタオルを体に巻きつけ先ほどのベッドへ戻る。
「さあ、どおぞ〜…その上に仰向けで横になってぇ…」とタオルを外し俺に覆いかぶさる…
「キ…Kissしたい」
思わず言ってしまった…
だいたいヘルスでは嫌がる嬢がほとんどだ…まぁ…嫌がりながらもしてくれるのだが
彼女は違った。
「うん…したい…」
と、自ら口をつけてきたのだ。
舌を絡ませ唾液が交わる…
この時だ。
異変を感じたのだ…
夢を見ているのか現実を見ているのか区別がつかなくなる…
俺は目を閉じた…
…………
自分の部屋のベットからいつも見る景色が広がっている。
いつも見ている天井…
天井の隅に目を向けると小さなシミがある。若い者には分からないかもしれないがまるでゲームのパックマンのように見える。
角度を変えると猫の顔の様にもなる…間違い無く俺の部屋だ。
…携帯のアラームが鳴っている。
止めようと手に取るが、アラームでは無い…
『着信あり』
と表示が出ている。
出る。
『戻ってきて…』
この声にハッと何故か目をつむった…
目を開ける。
花ちゃんが俺の顔を不思議そうな顔で眺めている…
「寝てた?気持ちよかったのかな?ふふふ…」
気づいた時には、既に俺の股座を彼女は扱いていたようだ…
「なんだったんだ今のは…」
「なにが?」と、ローションを手に取りながら首を傾げる
俺は「いや…」と彼女の頭を撫でる。
俺はフェラをして欲しいと頼んだ。
彼女は囁くような声で「いいよ…」と耳元で言い、俺の股に体を下ろして行った…
目をつむる…
……
どうやら俺は、会社のデスクで居眠りをしていたようだ…
「A君!仕事をしてもらわないと困るよ!」
課長のゲキがとぶ。
自分のデスクの向かいの女子社員が口を抑えながら笑っている。
恥ずかしさのあまり、顔が赤くなっていたと思う。顔が熱かったからだ…
パソコンに目を向けるとメールが入っている…
開く。
『戻って来て…』
それをめて驚きワッ!と目をつむった…
………
目を開けると、また花ちゃんが眉間に小さなシワを寄せて俺の顔を見ている…
どうした事か…夢を見ていたようだ…極、普通の。なんでも無い夢…
だが、あまりにも現実的でリアルな…
「ゴメン…寝ちゃったテヘ。」
「もうっ!」
あれ?俺はまさか…既に果てたのか?
心の変化を感じていた。
さっきまであんなに興奮していた胸の高鳴りがまるで無く、彼女の裸体を愛でようとも先ほどの様にアソコも反応しない…
「俺…いっちゃった?」
「うん…寝てる間にね。」
な…なんてアホなんだ…
もっとこれから愛撫してそれから、本番まで持ち込む手はずが…パァ…最悪だ…
彼女の胸に触れる…
どうしてもこのままでは終われなかったからだ。
「いゃん…」
「ゴメン…だめ?」
「だって…またあっち…行っちゃうもん…」
断れない様に口を口で塞ぐ…舌を絡ませながら…
………少し妙な感覚を覚えた…
(ん?あっち?)
なに言ってんだこの娘…まあいい…と彼女のあそこに手を…
「あっ!あん…」
彼女をベッドに倒し、乳房に舌を滑らせる…
グッショリと濡れた彼女のあそこに指がすんなりと入って行く…
……あれ?
冷たい…
あり得ないほどに彼女のあそこは冷んやりとしている…
この手の冷んやりするローションでも使ったのか?
でも、流石にこんなに…
舌で身体を舐めまわしながら彼女を見上げる…
!!!!!!!!!!
顔の肉の半分以上が腐敗し、骨がむき出しになり、ぽっかりと口を開け全く動かない…
よく体を見ると、所々にウジが湧き辺りを蝿が飛び交っている。背中から水を浴びせられた様な感覚が走る…
死臭を放つその姿に俺は「うえあわはかなんぢゃこりぁああああ!!!!!!!」
と言葉にならない事を叫び、飛びのいていた。
出口を探そうと周りを見る…
カーテンだったと思われる布切れが半分落ちた状態で掛かっている。
状況が飲み込めなくて兎に角この場から離れようと洋服を急いで着てその区画から出る…
俺は驚愕した…異臭はここだけで無くこの部屋全体からしていたのだ…彼方此方に腐敗、又は白骨化した死骸が転がっている…
裸の男性だろうものまであった…
身体のあちこちに痛みを感じる。俺は自分の体を見た…
全身の毛がブワっと立ち上がるのが分かった…
噛み跡がそこらじゅうに有る…
恐怖に体は殆どゆう事を聞かない…
その時、声が真後ろから聞こえた様な気がした…
恐る恐る、見なきゃいいのに振り返る…
さっきの『花』と呼ばれていた女がカクカクと震えながら俺の背中にもたれかかって来ていた。
「うわぁあ!!」
振りほどこうと腕を振ると『花』は脆くも其処に崩れた…
「オデガイ…イガナイデ…」
ガクガクと震えながら俺の足にまとわりつく…
パニックに陥った俺は彼女の頭を力一杯蹴り上げた。
元々腐敗でもろくなっていたのだろう、頭が吹っ飛んだ…
周りを見渡す…
出口を探すためだ。
見るとチカチカと点滅する蛍光灯と思しき灯りが差し込んでいる。
急いでそこに駆け出したがおかしい一向にたどり着けないのだ…焦った…兎に角この場から出たかった。
冷静になれ!冷静になれと何度も自分に言い聞かせ…
たが…
転んだ…
ズルりとまるで漫画の様に足を滑らせたのだ…
腰を強打したようだ…動けない。
何とか出口まで行こうともがくが、先ほどあれほど走ってたどり着けなかった出口にこんな状態でいつたどり着けるかしれない…
悔しさと情けなさで目をつむる…
…………
どうやら電車で眠っていたようだ。夢であったことに安堵の溜息を吐き車内を見渡す。
乗客はまばらで朝夕のラッシュが嘘のように静まり返っている。
とは言っても夕方のラッシュ時など、ここ何年も体験していないが…
『次は〜○○〜。次は○○です。お出口、左側です…』
お、俺の最寄り駅だ…と立ち上がろうと膝に手をかける…
??!
立てない…?
馬鹿な…
夢の中で打った腰に痛みを感じた…
クソっ…なんてことだ…
と目をつむる…
………………
目を開ける。死骸の異臭で今にも気を失いそうになる…
真っ暗の部屋の中で腰をおろし、これからどうしようかと考えていた。強打した腰の痛みは更にましたようにも感じる…
あっ…そうか…電話。
慌ててジャケットのポケットから携帯を取り出し…
あれ?これ消防に電話するのか?それとも警察に電話するのか?
ええい!どっちでも構わんと警察に電話した…
『トゥルルル、トゥルルル…ッ…ハイ、こちら○○署です…ご用件をお願いします。』女性が出る。
「あ…あの…○○町の○×ビルの三階の…確か301号室だったと思うんすけど、死体があって…」
自分でも驚くほど冷静に場所をスラスラと話している…
『はい?死体?…お待ちください………』
早くしてくれ!一刻も早くこんな場所から出たいんだよ!
『お待たせしました。刑事課のBです。恐れ入りますがもう一度あなたの居られる場所と状況をお話いただきたい…あっ…ご安心を、すでに署員にはそちらに向かわせておりますから。」
刑事さんの野太い声に何と無く安心感を感じ、場所と状況を話した。
『暫く電話を切らずに』と言ってくれなかったら俺は気がおかしくなっていたかもしれない…その刑事さんは、何度も俺を励まし続けてくれた…
『大丈夫…あまり動かないように…腰を打っているってことだから、余計悪くするといけない…救急車にも向かわせていますから…大丈夫…』
安心したのか俺は尿意無く、垂れ流していたようだ…股あたりがじんわりと熱い…
冷静さを取り戻したためか、もう一度周りを見渡した…
壁一面に黒く変色した血がべったりとついている…その下には頭が完全に陥没し変形した顔の死体が寝そべっている…
それを見たせいか、また動悸が激しくなる…
だが刑事さんがそれを察したのか直ぐに励ましてくれた…
それを何度も繰り返していた。
……
扉の鍵を開ける音が部屋中に響く。
扉が開き、警察官とヘルメットをかぶった救急隊らしき人が飛び込んでくるのが見えた……この辺りから記憶が無い…
安心感がMAXに達したのか俺はその時気を失ったようだ…
………………
朝の光で目が覚める。
アラームが気狂ったように鳴り響く…俺は布団を剥がし携帯を取る…
……え?待った。
何だこれ…
さっきのも夢?
てか、どこからどこまでが夢?
携帯画面を見るとメールが届いている…
ま…まさか…な…
開く…
『戻ってきて…』
作者退会会員
友人から聞いた話です。