初めまして。もしくは二度目三度目となる方もいらっしゃるかもしれません。まめのすけ。と申します。
怖い話が三度の食事よりも大好きな社会人です。霊感はからきしですけどね(笑)。
さて。今回の話なんですが。シリーズもののネタが浮かばないので、閑話休題。まめのすけ。が見た「夢」についてお話しようかと。
退屈な話な上、あまり怖くないんですが。とても不思議な夢でしたので、お話したいと思います。お菓子とジュースでも用意して、気楽にお読み頂けたら幸いです。
そこはーーー吊り橋の畔でした。私は赤ん坊を抱いていたんです。自分の子ではありません。産着も着ておらず、白い布にぐるぐると巻かれただけの格好でした。
顔は布に覆われて見えないんですが、左腕と両足だけがにょきっと出ていました。左腕と両足は赤ん坊にしては細く、何とも弱々しく貧弱でした。
私達は追われていたのです。
吊り橋の反対側には黒い着物を着た集団が立っていました。それらは全て老人で、厳めしい顔をして口々に何かを叫んでいました。
何を言っていたのかはよく覚えていないのですが……「その子を渡せ」というニュアンスが伝わってくる物言いでした。彼等の目的は私が抱えている赤ん坊のようです。
私は嫌だと言い張りました。この子を彼等に渡してなるものか。そう強く感じたのです。この子を守らなくてはという衝動に駆られました。
赤ん坊は羽のように軽く、泣き声一つ上げません。大人しく私の腕に抱かれていました。
老人達は吊り橋を渡ろうとはせず、向こう側から「その子を渡せ」と言い続けます。私は嫌だ嫌だと頭を振り、ついには泣き出してしまいました。
すると赤ん坊は私の腕からするりと抜け出し、よちよちと歩いたではありませんか。赤ん坊は吊り橋を渡り、老人達のほうへと向かっていきます。
老人達は厳めしい顔つきのまま、黙って赤ん坊を見つめていました。私はその瞬間、大きな悲鳴を上げました。
……その悲鳴で目が醒めました。自分の悲鳴で目が醒めたのは、後にも先にもあれ一度きりです。
夢から醒めた後は、物凄い喪失感に襲われました。
大切な何かを失ってしまったような。そしてそれが二度と還ってはこないのだ、と。直感的にそう悟りました。
何をなくしたわけでもなく、ただ夢を見ていただけだというのに。寂しくて哀しくて泣いてしまったのを覚えています。
私がこれまでに見てきた夢は、支離滅裂なものが多く、現実離れしたものが多いんですが。あそこまでリアルな夢を見たのは初めてでした。
腕に赤ん坊を抱いた時の感触が残っていましたし。
あの夢はもう見ません。もう二度見ることはないのでしょう。赤ん坊はあの時、私の手から離れてしまったのですから。
皆さんはどんな「夢」を見るのですか?
どんな「悪夢」に魘されるのですか?
作者まめのすけ。