リサイクルショップがあるから行こうと友人の徹から誘われ、俺と美波、皐月(さつき)の四人で馬鹿騒ぎをしながら向かった…
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『リサイクルショップ 千石』
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ダサいネーミングに一同でドン引きした…
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「おい…大丈夫か…?この店…客来んのかこれ…」
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皐月がマジ顔でそんな事を口にするので皆で爆笑した。
店内は狭苦しく物が積み上げられ、窮屈に感じる…
美波がさっきまでケラケラ笑っていた癖に突然黙り込むと、真っ直ぐ他に目もくれることなく奥に立て掛けてあったアコースティックギターを手に取った…
ブランドは…
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『MARTIN』?
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聞いたことあったような…
美波はおもむろにギターを抱えると、
『禁じられた遊び』という映画の挿入曲を弾き出した。
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「うめえww」
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徹がポツリと漏らしたが、確かに…上手かった。
こいつとは長い付き合いで、ガキの頃から仲良くしていたが…
ギターが弾けるというのは、全く知らなかった…
皐月がまたマジ顔でおかしなことを言い出した。
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「あれ…本物の美波か?」
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確かに美波で間違いない。
さっきまでケラケラ笑って俺たちと普通に昨日のことや、もう一人の友人で望月というのがいるのだが、そいつの誕生日プレゼントを買おうと話をしていたのだ。ここに来たのもプレゼントを買うため…提案したのも美波だ。
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だが、俺の目から見ても美波の様子がさっきとはまるで違うことが分かった…
顔面は蒼白、目は虚ろ…口元を見ると何かブツブツと唱えるような動きを見せている…
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「おい?美波?大丈夫か?…おい⁉︎」
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揺すっても叩いても、反応が無い…
これはただ事じゃない…
とギターを奪い、元の位置に戻すと、美波を無理やりこの店から出すことにした。
店を出ても、まだブツブツ呪文のような事を唱えている…
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「病院行っちゃうwwww?」
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お調子者の徹がふざけて言ったので、ふざけてる場合じゃない!といった目で睨んでやった。
すると、何時ものようにスマートフォンをポケットから出してしょぼくれていた…
しかし、確かに具合が悪そうなので、病院に連れていくことにした。
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「病院行くぞ?美波?分かるか?」
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俺が美波の顔を覗き込みながらそう言うと美波は
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「うぇああああああ!!!!!!」
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と叫び、俺たちの手を振りほどくと、信じられない足の速さで近所にあるコンビニ方向に走って行ってしまった。
やばい!と思って追いかけたがとても追いつける速さでは無く、すぐに見失ってしまった…
美波の尋常では無い様子を考え、皆で探すことにしたが、徹が用があると言って帰ってしまい、仕方なく二人で美波を探すことにした。
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どこを探しても見つからなかった。
コンビニのトイレ…
望月のアパート…
奴の彼女、梨子のウチ…
バイト先のガソリンスタンド…
行きそうなところをしらみつぶしに捜索したが美波の姿はどこにも無かった…
皐月と合流して、どうだったか聞いたが、皐月にも無つけられなかったと言われた…
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二人で最後に駅を探そうと向かう途中、近くの踏切に人だかりが出来ていた。
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胸騒ぎがした…
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急いでその人だかりに駆け寄り、かき分けて前に出て言葉を失った…
あのエビスのジーンズ…
美波だ…
すぐそう思った…
身体は千切れ上半身と脚が別々の場所に転がっていた…
頭が見当たらない…
何処かに吹っ飛んでしまったのだろう…
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「美波じゃないよ…そんなわけない…」
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泣きながら皐月が俺の洋服の裾を引っ張った。
そうだ…
同じジーンズを履いた別人ということも絶対無いとは言えない…
顔を見たわけじゃない。
美波じゃない…
自分に何度も言い聞かせた…
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この事故でもう一人、助けようとした者が居たらしく、救急車が来て重体と思われる人を乗せて走り去って行った…
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「彼、学生さんだったらしいわよ…可哀想にね…若いのに…助けようと飛び出したりして…」
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隣で見ていた派手な格好をしたおばさんが誰に話しかけているのか分からない感じで話している…
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「あの!その助けた学生って、どんな格好していたか分かります?」
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俺はそのおばさんにすがるように尋ねた…
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「え?そんな事…覚えてないわよ…何かブツブツ呪文みたいのを口ずさんでいたのは覚えてるけど…」
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美波だ…
今、救急車で運ばれたのは…
慌てて、最寄りにある救急病院に走った。
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「でも、どっちがどっちか正直分からないのよー!」
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と、後ろでさっきのおばさんが叫んでいたが無視した
一応、徹に電話をする。
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「徹?美波が電車に飛び込んだって!直ぐ、病院に来れないか?」
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だが、徹は…「は?何それ…ドッキリ?」とふざけたので、電話を切った。
病院に着き、中に入る。
看護師さんに
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「今、担ぎ込まれた…美波 孝文って奴の友人なんですが…」
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と言うと、「少々、お待ちくださいね…」と、奥に引っ込むと、すぐに戻ってきて、申し訳なさそうに
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「今、運ばれた方は…その方とは違う方みたいなんですが…」
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と話した。
まさか…
あの千切れた死骸が…
仕方がなく病院を出た…
皐月は以前、泣きじゃくってる
あまり泣くので俺も不安になり、もう…美波は死んでしまったんじゃないかと思うようになっていった。
徹に電話をする…
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「徹?…その…美波、死んじゃったかもしれない…」
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「は?だ〜か〜ら〜騙そうったってそうはいかないよん!だってww今さっきTwitterで話したもん…」
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え?
徹の言葉を信じたかった…
でも、こいつは嘘ばかりつくので、完全に信用はできなかった。
兎に角…今、病院に居るから用が済んだら来いと言って電話を切った。
徹と合流後、警察に行った…
バラバラに千切れた遺体はやはり美波だった…
徹が「えー?だって本当にTwitterで…」と言っていたが、実際遺体を調べた結果、美波だったのだ。
間違いないだろう。
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それから一週間ほど経ったある日。
徹が何者かに殺された…
全く信じられ無かった…
たった一週間の間に二人もの友人と死に別れたのだ…
少しだけ話を聞いたが、徹の亡骸の脇に、あの時リサイクルショップで美波が弾いていたギターが転がって居たそうだ。
そうだ…
あのギターを引いた後、美波はおかしくなった…そして死んだ…
その上、徹まで…
あのギターが全ての元凶だったのかもしれない…
あれは呪われたアコースティックギターだったんだ…
リサイクルショップの店主にあのギターは誰に売ったのか聞いたが、無愛想に
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「忘れた…」
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と、教えてくれなかった。
作者ナコ