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中編6
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むぎわら帽子

ピンポン、R先輩を投稿したかずよしです。

ピンポンの件で彼女と別れて以来、僕は心霊スポットに足を運ぶ事が無くなりました。それは、友人から忠告を受けたこと。そして、自分自身もヤバいと感じ始めたからです。

時は過ぎ、大学生だった僕は社会人になりました。昨年には30代に突入し、それなりに充実した毎日を送っています。その間、R先輩の影響かもしれませんが、何度か不思議な事件に遭遇しました。今回、紹介するのは僕が社会人1年目に体験した話です。

大学4年の冬、僕は就職が決まっていませんでした。情報系の大学に5年間(3年生を2回)も通ったにも関わらず、公務員志望だった僕はまだ就職未定でした。秋に行われた公務員試験にすべて失敗し、来年は親に頭を下げて公務員専門学校でも行くかな、、、なんて思っていた時、思わぬ助け船が現れました。

「○○高校の者ですが、来年度講師として来てもらえませんか?」

確かに、教員免許は取りました。教育実習も行きました。でも教員採用試験は全然勉強せずに受けたので(姉の結婚式の前日だった為)ひどい点数だったと思います。一応講師の申し込みはしていたものの、まさか声がかかるとは思っていませんでしたし、完全に忘れていました。

「是非ともお願いします。」

即答した僕は、社会人1年目を高校の数学講師として過ごすことになりました。その学校は進学校で授業は放課後課外を入れると6時まで行われ、また、数人の生徒は夜8時まで学校に残って勉強をしています。教員も帰りはじめるのは8時過ぎで、特に僕ら若手は朝は7時に校門をくぐり、学校を出るのは夜11時過ぎの生活でした。それでも、学校の現場が水にあったのか毎日が楽しく、充実した生活を送っていました。

12月のとても寒い日のことです。受験を控えた生徒はますます危機感を募らせ、数人の生徒は9時近くまで質問に残るようになりました。となると、当然戸締まりの時間も遅くなります。戸締まり、見回りは若手の仕事なので、夜は3人の若手(と言っても僕が最年少)でいつも戸締まりをしていました。築数十年の校舎はとにかく不気味で、しかも古い。僕たちは少しでも作業を楽にするために夕方6時に主だった箇所を先に締めて回り、夜は確認するだけにしていました。

夕方6時と言えばまだまだ部活真っ最中の時間帯。グランドや体育館からは運動部の元気な声が響き、校内からは吹奏楽部の演奏が聞こえます。ただ、本校舎では課外授業が行われているため、吹奏楽部は旧校舎の使われていない教室でパートごとに別れて練習をしています。学校の放課後と言うのは独特な空間で、数時間前までは1000人近い人間がいた空間がいきなり無の空間になります。そこには、微かな人のぬくもりが残っていて人が存在しそうで存在していない、とても不思議な感覚です。

その日も、いつもの様に僕は夕方の戸締まりのため校舎を巡回していました。新校舎と旧校舎の間を通りがかった時、

「キャー」  と耳を刺すよう声と共に2人の女子生徒が走り寄って来ました。

僕を見つけると、そばにうずくまり2人で泣きながら僕に必死に何かを訴えかけてきます。

「お、、、女の人が、、、」  「麦わらっ、麦わらぼうし、」

かろうじて聞き取れたのはその2つの単語でした。そして、震える手で旧校舎の方を指さしています。ただ事ではないと感じ、2人を残して旧校舎へと駆け足で向かいました。しずまり返った旧校舎、他の生徒達はもういないようです。6時を過ぎた旧校舎は西日も入って来ない非常に暗い空間です。ひとしきり、探索しても誰もいません。戻ってみると幾分落ち着きを取り戻した2人から話を聞くことができました。彼女たちは吹奏楽部の生徒で、その日は合奏があるので旧校舎は使わずに校内の音楽室での部活だったそうです。しかし、2人のうち1人が旧校舎に忘れ物をしてしまったんで取りに行ったそうです。すると、

「麦わら帽子をかぶった女の人が、私の顔を見て笑ったんです。」

確かに妙ですが、あり得ない話ではありません。誰かの保護者が自分の子供を捜しに来たのかも知れない。しかし、生徒は続けます。

「白いワンピースを着ていました。こんな時期にあんな服装はおかしいです。」

2人とも至って真面目な生徒で嘘をついている様な感じではありません。何も無かった事を伝え、なんとか落ち着かせて部活の顧問の先生に引き渡しました。

その夜のことです。10時半に仕事を片付け、夜の戸締まりをしようといつもの3人で校舎の巡回をはじめました。時間短縮の為、それぞれの受け持ちを決めて分担して回ります。僕の担当は校舎の北棟で旧校舎の入り口まで行かなくてはなりません。(一番若手だったんで)

夕方の校舎と比べて、深夜の校舎はまた違った顔を見せてくれます。その高校は周囲を田んぼに囲まれており、夜の町の灯りが完全に遮断されます。廊下を歩く僕が後ろを振り向くと、そこにあるのは 暗闇 では無く、完全に  黒  の空間。懐中電灯から映し出される世界だけしか存在しません。

そんなとき、懐中電灯の先に、ふっと何かが写りました。。。

麦わら帽子

懐中電灯の先に照らされたのは確かに  麦わら帽子  でした。

反射的に懐中電灯の向きを逸らす僕。もう一度、その場所にライトを当てると、、、何もない。

単なる見間違いと思い込み、校舎の見回りを再開しました。旧校舎は入り口だけをチェックすればいいので、手早く終わらせ、僕は2階の女子トイレに向かいました。ここのトイレは換気扇が壊れていて、よく窓が開きっぱなしになっています。夜の戸締まりでは欠かせないスポットです。

予想通り窓は開いたままでした。

右に4つ、左に3つの個室が並んでいて、それだけで十分に怖いです。何もいるわけがないとは思っていますが、一つずつ個室を確認して窓に向かいます。しっかりと窓を閉めて早足に立ち去る僕。この場所が一番苦手です。

そうこうする内に戸締まりを完了し、校舎にロックをします。ここで、もし閉め忘れの場所があるとセンサーがチェックして教えてくれます。今日はグリーン。閉め忘れ無しの色です。他の2人の先生に挨拶をし、それぞれ車に向かいました。

最年少の僕は、駐車場に車を止める場所が無く、例のトイレの真下の小さな場所を専用の場所として使っていました。車に近づき鍵を開けた瞬間、上に気配を感じ、目をやると

窓があいています

困惑。とにかく、驚きました。そんなはずはない。確実に閉めたはず。でも、そこにあるのは窓が開いているという事実。他の先生に一緒に来てもらうか?でも、あの場所は僕の担当。男としてのプライドもあり、勇気を振り絞って1人で行くことにしました。手当たり次第の電気をつけて2階トイレに向かう僕、ガクガク震える足を奮い立たせ、なんとかその窓を閉めた瞬間、、、

バタン

入り口のドアが閉まりました。

完全に動けなくなる僕。なんとか冷静に頭を働かせて、「空気の流れを遮断したから、あのドアは閉まったんだ。物理的な考え方でこのことは説明できる」と必死で自分に言い聞かせる僕。

しかし、さっきのロックの時には戸締まりはオールグリーンだったはず、現実的に考えると窓が開いたのがその後だということ、そして

麦わら帽子の女性  が脳裏をかすめました。

動けない

怖い、とにかく怖い。あまりの恐怖で目を閉じることもできない。泣きそうな気持ちを必死で押さえ、トイレの個室を睨みつける。

影が、、、動いた気がしました。

女性の笑い声が聞こえた気がしました。

完全に別世界に足を踏み込んでしまった感覚。

そんな時、、、懐かしい言葉が蘇ってきました。

「怖いという気持ちが見えないはずのモノまで見せる。

                    怖がらないことが唯一の抵抗手段だよ」

R先輩の笑顔が浮かびました。

実はその後に「だから怖がっているとホンモノと見分けがつかないんだ。」と言われたのですがあえて流し、落ち着いて、、、落ち着いて、、、

怖くない

その思いで焦らず、ゆっくり回りを見渡しました。いつもと同じ光景。そうだ、僕は怖くない。落ち着きを取り戻した僕は、戸締まりを確実にして今度はトイレの窓を見ずに学校を後にしました。

次の日、他の2人の先生にその話をしました。すると、「勇気があるね」と誉められました。続けて

「かず先生を北棟に行かせているのは理由があるんだ。」

「理由?」

「本当にヤバいのは北棟じゃなくて、南棟だからね。」

南棟の中庭、木で囲まれたスペースにある四角い石。本当に勇気があったのは他の2人の先生でした。。。

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骨壷さん、ありがとうございます!
続きは来週にでも、アップしたいと思います!

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続きが気になる!

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はなさん、ばっくんさん、コメントありがとうございます。

先輩達が体験した話もいづれ投稿したいと思います!

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気になる、その石にいったい何の現象が起こるんだ?!!!!!イヤーかずよしさん、先生たちすごいです(≧◇≦)

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窓を閉めなおした後の「怖さ」が((((;゚Д゚)))))))

そして本当に怖いのはそこじゃないというオチがまた怖いです(^^;;

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