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今から5年程前の話なんですが
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昔、オオクワガタを求め一緒にクワガタ虫採取していた友人T君より久々に連絡があった
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その彼と知り合ったのは、あの阪神淡路大震災の救援活動時のボランティア、現場はライフラインが寸断され、携帯電話も使用出来ず そんな中 唯一の連絡手段であるアマチュア無線であった
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互いに、意気投合し その後も一緒に良く遊んでいたが 互いに世帯をもつと同時に疎遠状態になっていた
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その彼からの電話だった 彼は最近自分が クワガタ採取している所のほとんどが 捕れなくなったので、俺がいろんな場所知っているために教えて欲しいと言う内容だった
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もちろん俺は、趣味のモトクロスバイクで山走り回って そのついでに新たにクヌギ林を見つけるという 一粒で二度美味しい事をやっているので 彼にメチャメチャ捕れる場所を教えた
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ファックスで地図を送り電話で説明それとその場所の危険箇所及び、注意点とオオクワガタが捕れる確率はパチンコのノーマルリーチ程の信頼度しか無い事を
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その場所というのは滋賀県南部とだけ申しておきましょう 国道307号より県道を走ること20分 左に林道がある 普通に走っていたら見過ごしてしまうほど車1台分の幅しかない道の細い道、車でくねくね走ること500m程で右に大きくカーブ その左手がクヌギ林の始まりだ
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その林は坂になっていて つまり川の土手の様な感じはので滑りやすく、坂を降りた所には3本の大きなクヌギの木が有りその向こうは池というか沼って感じで又、その3本の木のうちの1本の根本がアルファベットのJの様になっているため うかつに近づくと池ポチャになるのだ
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それとこの道は、砂利道というか所々ぬかるんでいる道で、全長700m位先で行き止まりになっている だからターンしなければならないのだ
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次の週T君は、俺が教えたその場所へと足を運んだ
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その日は、日本に台風が接近中で、雨は少ないが風が強かった 現場付近に着いたのは、まだ日が沈んで間もない7時半頃だった
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彼は、俺が教えた通り林道に入った 雨の重みで垂れ下がった木の枝が行く道をさえぎり車のボディーをかすめた
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やがて、道は大きく右へカーブした その時ヘッドランプがクヌギ林を写しだした
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大きな木が何本も、彼は、カーブを曲がり切った所で車を止めた カッパをはおり、虫かごを手にとり、わくわくしながら準備に取り掛かった
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懐中電灯で木を照らしながら土手を降りた 時より風がビュービューふき、雨が葉っぱをたたいている 転ばない様慎重に土手を下った
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生えているクヌギの木には、うじゃうじゃ、カブト虫やクワガタ虫が、ひっついている
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思っていた以上の収穫に満足しながら 坂の下に生えている3本の木の所まで降りて来た
これが最後の木か、そう思いタオルで汗を拭いた そして、
その木に懐中電灯の光を当てると、カブト虫やクワガタ虫が気持ち悪いくらい群がっているのが見えた
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ちょっとたばこでも吸をうと はおっているカッパからポケットに手を入れた その時左肘に鈍い感触を覚えた 何か柔らかい物に当たった感じ 一瞬ドキッとしそこを懐中電灯で照らすが別に何も無い
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風で揺れた葉っぱに触れたのかと思った 気を取り直したばこをくわえ、ライターで、カチッカチッと点火した その時 お尻の下から膝にかけて冷たいものを感じた
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ビックリして振り返ると、そこには、白っぽい半袖服に茶色の半ズボン姿の小学3~4年生くらいの男の子が立っていた その子は「おっちゃん、虫捕ってんの?」と一言
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T君「そうやでぇ」と言い、また振り返り目の前の木を、懐中電灯で照らしながらたばこの煙を吐いた と いうより吐ききる前 瞬時におかしい!そう思い
もう一度振り返りその少年の方を見た
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おや?少年がいない! たった今いたはず 時間にしてほんの2~3秒で姿を消したのだ
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まさか幽霊? いやそんなはず無いと思い「ボク、ボク、」と呼びながら懐中電灯であたりを照らした しかし少年の姿が見えない もしかしてこの池に落ちたのか、そう思いその池というか沼地を照らした しかしその水面は黒く何も見えない
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少年は忽然と姿を消したのだ
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その時 冷静に落ち着いて考えたT君
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もし、池に落ちたなら音が聞こえるはず ちょっと待てよ あの子この場所どうやって来たんだ?まさか子供一人でこんな所来れるはず無いし、
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大人と車で来たならライトが林を照らすのでわかるはず
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あの子虫かご持ってたかぁ? その前にあの子懐中電灯持ってたかぁ?
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そんな事が瞬時に頭をよぎった
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その瞬間冷たい汗が背中を流れた この状況下で恐怖感MAXにたっした時だった
shake
「この下にいるよ」
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と、目の前の池から子供の声が聞こえた
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とっさに「うわぁ~ぁ~ぁ~」と叫びながら必死の思いで土手をよじ登り車に乗り込んだ
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幸いエンジンはかけたままだったので急いで発進した しかしこの先は行き止まり
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焦った彼は取り合えずどん付きまで進みそこで何回もハンドルを切り返しターンした
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そして、そのままアクセルをふかし進んだ すると今自分が必死の思いで今、駆け上がって来た所をヘッドライトが照らした 見なきゃ良いのにその場所をチラッと見たのだ そして驚いた!
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そこには さっきの少年が道の端に立っているのが見えた というか ガードレール程の高さで 宙に浮いて走り去る彼を見つめていた
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「ヤバイもん見てもうた」そう思い自分の知っているかぎりのお経を唱えながら家まで帰った
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やっとの思い家に着いた彼 その時の恐怖指数は70%まで下がっていたと思われる 虫かごを持ちながら車から降りた
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「あぁ~えらいめにおおた」そう思い車のドアを「どーん」と閉めた その時のタイミングで
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何となく車の後ろを見た時だった なんか明かりが見えるなぁと思った瞬間トランクというか後ろのバンパーらへんよりソフトボール位の大きさの丸い薄オレンジ色の火の玉みたいなものが現れゆらゆらと天高く登り夜空に消えていった
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その光景を目の当たりにした彼はまたしても恐怖指数MAXに達したのだった
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後日 これらの内容報告を受け 俺は彼に言ってやりました
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これで少年の霊も浮かばれたんでしょうねぇ 良かったじゃないその男の子 昔この池に落ちて亡くなってるんじゃないですかねぇ お前について来たんだよ!
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それ以来T君はクワガタ採取は辞めたとの事 (腰抜け野郎ですわ!)
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昨年の夏、友人5人で深夜クワガタ採取に出かけた時の事
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虫を捕り終え山中で一息 夜空を見ながらこの話を語った
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みんな最高におびえ恐怖に氷付いた
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そして最後に一言 この話の現場はまさに今我々がいるこの場所であることを!
作者渋谷泰志