…続きです、よければ先に「仕返し」前編をお読み頂くと分かり易いと思います。…
凝りもせずに、また、おじさん二人でビール、焼酎を買い込んで刺身と乾物で部屋呑みの二人組だが、今回は、めずらしく前回からひと月と経たず、会っていた。季節はまだ真夏日が続いていた。
「あのさ、つまらない事を聞くけど、お前に前回、教えてもらった釣り場なんだけど」と話しかけると、奴は言葉をさえぎって、「釣れたか」と聞いてきた。以下はその会話。
「あぁ、釣れたよ」…「良かったな」
「良かねぇよ」…「なんでだよ」
「馬鹿野郎、お前、知ってたな」…「何が」
「あの場所、出るだろ」…「釣れたんだろ」
「釣れたけどよ、」…「だったらいいだろ」
内心、この野郎、やりやがったな、と思ったが、ある考えが浮かんだ。気まずい雰囲気を取り払うように明るく喋りはじめた。
「まぁ、いいさ、確認しなかった俺も悪いしお前が言ったように釣れまくったのも事実だったし、考えようによっては真っ昼間だったからそれ程、怖くは無かったし」と気持ちとは真逆な事を言うと、奴も悪いとは感じていた様子で、
「いやな、実は俺も出る場所だとは聞いていたけど、まさか、真っ昼間から出るなんて思いもしなかったんだスマン」
「もういいよ、それより、時間がもったいないよ、楽しく呑もうぜ」
それからは、共通の思い出話しに花を咲かせ、したたか酔った。帰り際、明日は休みと知っていた上で予定を確認した。
「明日も天気が良いらしいから、家に、こもってないでドライブがてら山菜でも取りに行かないか」
「・・・」
「明日、昼前に迎えに来るぞ」と言い放つとタクシーのドアを閉じた。
次の日、奴のアパートの前に車を停めて、チャイムを鳴らすと、案の定まだ寝てやがった。
「おい、先ず昼メシ、食いに行くか」
「いや、俺は寝起きですぐにメシに喰らいつける単細胞のお前とは違う。先ずはコンビニで飲み物でも買ってから考える」
「何が単細胞だ、ザリガニみたいに何でも喰らいつくクセに、繊細って言われたいのか」
「うるさい、頭に響く。それより、お前が言っていた、山菜取りって何処だ」
「○○○墓地」
この墓地は心霊スポットとしても有名だが、墓地の前にはタラの木が群生しており沢山のタラの芽が取れる。しかし、季節は夏、タラの芽の収穫には遅過ぎる。それを知っている奴は怪訝な面持ちで聞いてきた。
「お前、タランボ(北海道でタラの芽の意)には遅過ぎるだろ、今ならウドの若芽を摘んで天ぷらか、山ブキぐらいだろ」
「ピンポーン、フキでございます」
「硬くないかよ」
「切れば水が吹き出すフキで、硬けりゃ保存用として、イタドリの葉と漬けます」
「まぁ、いいよ、お袋も好きだし付き合ってやるけど、本当にいいヤツが採れるのか」
「あぁ、大丈夫だ」
前回、奴に教えられた釣り場での仕返しと思って企んだ目的地は○○○墓地を通り抜けた奥で薄気味悪い雰囲気を味合わせてやろう、と単純に思っていた。
これを読むと北海道の心霊スポットを知っている人にとって場所の特定はたやすい事だろうが、本気で忠告する。絶対に行かないで欲しい。脅しじゃない、それでも、行こうとするなら完全な自己責任で、私に何と言われても関知しません。プラス霊能者に知り合いもいません。自業自得という事です。
○○○墓地、国道(道道かも)から標識が見える左手の道へ丘に向って坂を上がると左側に行く道がある。その道を進むと左手にタラの木が群生する林、右手には墓石が並んでいる。 ほとんどの人はその墓地をさして○○○墓地と呼んでいるようだが、本当の墓地は違う、人目につかない場所にある。
墓地の正面の道の奥には朽ち果てた車の残骸が放置されていて、行くてを拒むように、その道のほぼ正面に石板に彫られたお地蔵さまか、同祖神が立っている。必然的に右折するしかなく、右折をすると、右手に墓地、左手は雑木林と、一定間隔に立っているお地蔵さまか同祖神の石板がある。すなわち墓地の裏側へ進むような感じになる。
その道の奥には乱雑に墓石が置かれた、人目につかない裏墓地がある。そこを直進し通り抜けたその先にフキが群生する場所があるのだが、この日は異様な雰囲気が漂い、ふと、横を見ると助手席の奴の顔が血の気を失い真っ青になっていた。間違いなく数十人の群衆の視線が二人背中に突き刺さる。
くどいようだが、夏の晴れた昼間なのに、二人は震え始めていた。墓地を通り抜けて気が緩んだのか、尿意を感じて車を停めて用をたそうとした時、冷たい風が身体を包んだ。後ろに誰かがいる。振り返る事も出来ず、すがるように、車の中を見ると奴は見たく無いと言わんばかりに左に顔を向けていた。
恐ろしくて、恐ろしくて、必死に叫び声をこらえながら慌てて車に飛び乗った。道を引き返す勇気は無い。ただ、ゆっくりと直進してフキの群生する場所も、過ぎる前に恐怖に疲れ切ってはいたが奴に聞いてみた。
「フキ、どうする」
「かんべんしてくれ」と言い、奴は泣いていた。道は幸いにも、とある農家の私道へと続いていて、一般道へ戻ることが出来た。帰路に着く迄の車中での会話は以下、
「ひどかったな」…「ああ」
「スマン」…「ああ」奴はそれしか言わなかった。お互いに見たモノ感じたモノを確認し合う事すらしなかった。ただ奴が一つ俺に聞いた事がある。
「お前さ、さっきの場所の天気の事、知っていたか」
「ああ、他は晴天なのに数メートルの低い雨雲が霧雨を降らしながら俺たちをゆっくり追ってきてた事だろ、もう止めようぜ」
その時、数十人が囁くような声が背後から聞こえた事も奴には今後も言う事はないだろう。何故って?この手の話は二人とも、しなくなった。
仕返しのつもりで行った○○○墓地、心霊スポットと知って行くなんて普段は怖がりの俺には考えられない。いつもなら、そんな話がある場所は必ず避けていたはずなのに、、、
作者神判 時
前回に引き続き本当にあった話です。皆さん本当に霊魂は暗闇だけにいるもんじゃないんです。後に投稿しますが、僕の体験談の8割はまだ明るく夕方なら街灯がつく前、朝なら街灯が消える時間帯なんです。