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この世には二種類の人間がいる。それは、見える人と見えない人だ。俺はいわゆる見えない人。しかし、そんな俺でも見てしまうことがある。今回もそんな数少ない俺の体験談を語るとしよう…。
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俺が小学校五年生の時だ。その頃の俺は、よく友達と近くの廃墟などに肝試しに行っていた。その日悪友の一人である荘兵(仮名)の提案で、彼の祖母の家の近くにある廃墟へと赴くこととなった。
荘「なあなあ、蜜蜂!」
俺「どうした荘兵?」
荘「俺の婆ちゃん家の近くに潰れた女子寮があるんだけど行かねえ?」
俺「?そんなんあったか?」
荘「蜜蜂は、婆ちゃん家に来たことねかったもんなぁ、知らねえのは当然だよ。」
俺「そうか、じゃあ行くか?」
荘「よし、そうと決まれば今日の放課後に俺ん家集合な!」
俺「俺と荘兵の二人だけ?」
荘「いや、あと猛と忠もくるよ。」
俺「そうか、じゃあまた後で。」
荘「じゃあまた!」
そんな感じで荘兵と別れた。
因みに、猛と忠も悪友仲間のメンバーだ。俺はこの三人とよく遊んでいた。
放課後…
約束通り荘兵の家に集合した俺ら三人は、荘兵の案内で問題の廃墟へと向かった。
荘兵の家から自転車ですぐの所にソレは佇んでいた。所々窓が割れ、一階の窓は全て板で塞がれていた。
俺「おぉ…、雰囲気あるなぁ…。」
荘「だろぉ?俺もここを見つけた時、身震いしたもんなぁ。」
猛「一階、扉も塞がれてるよ。こりゃ二階から入るしかねぇな。」
忠「どーやって入んの?階段なくね?」
荘「階段なら見つけといたぜ。こっちだ!」
荘兵の後をついて行くと外階段を発見した。
猛「これ、二階の扉も塞がってるなんて言わねぇよな?」
荘「大丈夫、バッチリ開いてるよ!」
荘兵は、そう言うと勢いよく外階段を駆け上がっていった。俺らも後を追うようにして外階段を昇っていった。
二階扉の前に立った俺らは、全員息を呑んだ。皆、これから見る廃墟の中の事で興奮状態だった。しかし、扉を開ける寸前で俺は嫌な気配を感じた。
俺「わりぃ、俺やっぱ止めとくわ。」
荘「はぁ?なんで?」
猛「もしかして、びびったのか?」
俺「いや、でも止めとく。」
忠「仕方ないな。じゃあ、下で待ってて。」
俺「わかった~。」
そして、俺は自転車の位置まで引き返し皆を待つことにした。
皆が入ってから、おぉ~とかうわぁとか盛り上がっている声が聞こえた。
(楽しそうだなぁ~。)
なんて思いながら何気なく二階の窓を見ると、
(…?)
二階の割れた窓から手が一本、此方に手を振っていた。
(あ~…あいつ等の誰かだな。あんな所でよくふざけられるなぁ…。)
俺は、奴らの誰かが、ふざけて手を振っているのだと思い、ソレを見ながら少し呆れていた。
暫くして皆が帰ってきたので、中の様子を聞くことにした。
俺「お~中はど~だった?」
荘「ん~、そこまで荒れてなかったなぁ、まぁ荒れてんのは外側だけみたいな感じかな。」
忠「でも中はめっちゃ暗かったな。よく見えねかった。」
俺「そりゃ、どんまいだな。」
猛「埃もすごかったぜ。」
俺「そりゃそ~だろ~。」
なんて話をしている時、俺はふと、先ほどのことが気になり奴らに聞いてみることにした。
俺「そ~いえばよ~。誰か手ぇ振ってねかった?」
皆「?」
荘「手ぇって、どっから?」
俺「あそこの二階の割れた窓から。」
忠「いや、誰も振ってねぇけど…。」
俺「いやいや、お前等以外だれなんだよ。手ぇ振ってたの。」
荘「あのな、蜜蜂。俺等は確かに中に入ったよ。でもさ、手ぇ振んのなんてむりなんだよ。」
俺「ど~言う事?」
荘「だって、部屋の扉は鍵は全部、
鍵 が 閉 ま っ て た ん だ よ ?
だから、部屋の中に入れる訳ねぇじゃん。」
作者蜜蜂-2
前のアカウントに投稿した話を此方に書き直しました。
前よりも細かく思い出せたので、少しだけ詳しく書けました!
今、思い返してもアレが何だったのかわかりません!もし、あれがこの世ならざる者だったとしたら、今でもあそこに住み着いているのだろうと思います。