長編14
  • 表示切替
  • 使い方

赤い村-儀式-(3)

wallpaper:661

music:2

丸山は、また古い屋敷の前に立っていた。

昨日の夢では気づかなかったが、村には人間の気配がないように思える。

話し声は勿論、生活している様子がまるで見受けられない。

そして不思議なことに、自然と丸山は今いるここが夢だと把握できた。

nextpage

(....ん?)

丸山は、昨日の夢とは村の雰囲気が違うことに気がついた。

村全体を包む、異様な空気。

そして、昨日よりも息苦しい。

上を見上げると、空が赤く染まっているように見える。

夕焼けではない。

少し黒の混ざった、不気味な空だった。

nextpage

(なんだ....?この雰囲気。

....気味が悪い。)

空の影響からか、村全体が赤く染まっているように思う。

いや、様々な景色や建物にも、若干ではあるが赤黒い染みのようなものが浮かんでいる。

明らかに昨日よりも、村の様子が恐ろしく、そして暗く見えた。

nextpage

「とりあえず...色々調べてみないと、だな。」

丸山は始めに、一番北側に位置する村の中でも大きめな古い屋敷へ足を運んだ。

屋敷の玄関には、太い注連縄が掛けられている。

そして、鳥居同様その注連縄も赤く染まっていた。

nextpage

(あの鳥居もそうだけど....。

赤を基調とした宗教なのだろうか。)

屋敷の周りをグルリと一周する。

nextpage

(ここにも...。)

丁度正面玄関の真裏に位置する庭に、森の鳥居程では無いが、小さな真っ赤な祠があった。

しかし、森の神棚と違いお札が貼られていない。

恐らく、ご先祖など個人的な何かを祀っているのだろう。

すると、人気のない屋敷の中から、何かを引きずる不気味な音がした。

nextpage

ギギギ....。

ズズッ...ズ.....。

丸山は、正面玄関へ周り、入口から中を覗こうとした。

nextpage

sound:18

「.....ん?これは....。」

玄関の扉の隙間に、汚い紙切れが挟まっている。

丸山はすぐに感づいた。

恐らく、またあの「日記」の切れ端だろうと。

.....ただ昨日のような真白な紙とは違い、薄っすらとあの赤黒い染みが付着した汚れた色をしている。

丸山は、挟まっていた紙切れを抜き取った。

-------------------------

-------------------------

nextpage

6月11日

儀式について村長の婆さんに聞いた。

ふざけてる、なんて惨い話だ。

あんなこと、必ず阻止しなくてはならない。

私はあの子の父親なのだから....。

-------------------------

-------------------------

nextpage

「あの子の.....父親?」

あの子とは、テープの「首の少女」のことだろうか。

この日記はその父親のもの....?

日付が今日、ということは儀式の8日前のものだろう。

nextpage

(この赤い染み...何だろう。)

血とはまた違うように見える。

赤黒い....空の色に近いというべきか。

nextpage

ギギギ....ザ...

相変わらず、屋敷からは何かを引きずる音が聞こえてくる。

丸山は、正面玄関の扉を少し開け、中を確認するように覗いた。

.....が、誰もいない。

恐る恐る中へ入る。

nextpage

ザザ...ザ....

奥の廊下の方から聞こえるようだ。

丸山は忍び足で一歩ずつ、慎重に歩いた。

そして、音の原因があると見られる廊下を覗いた。

shake

sound:18

「〜〜〜っ!!!」

そこには、血だらけの女が立っていた。

いや、正確には返り血だろう。

女はカクカクと奇妙な歩き方をしながら、何かを引きずっている。

nextpage

ズ....ズズッ..

shake

「.....うっ!!?」

丸山は、思わず声が出そうになり、咄嗟に口を抑えた。

...すると女はピタッと動きを止め、此方を振り向いた。

nextpage

(......あの少女だ。)

テープの儀式で殺されたあの少女だった。

少女は、小学生くらいと見られる子供の首を掴んで引きずっているのだ。

子供は...恐らくすでに死んでいる。

全身から溢れるように血を流していて、ピクリとも動かない。

丸山は、絶句した。

死んだ子供を引きずりながら、こちらを向いた少女は、不気味に微笑んでいたのだ。

nextpage

(.....マ、マズイ。気づかれただろうか?)

微笑みながら此方を確認するようにキョロキョロしている。

それでも、とてもじゃないが正気の目ではない。

....その時だ。

nextpage

ギシッ...

shake

「!!!!!」

丸山の後ずさりをした際に足を付いた床から、音が出てしまったのだ。

その瞬間に、丸山は女と目が合った。

nextpage

ボトッ...

床に子供の死体を捨てた女が、此方へ向かってきた。

nextpage

「ヤバいっっ!!」

丸山は急いで振りかえったが、恐怖で足がもつれ、その場に倒れてしまった。

いや、正確には着ていたスーツがいつ間にか白い装束衣に変わっていて、その裾を踏んでしまったのだ。

nextpage

(な、なんで...!)

ハッと振り向くと、少女は不気味な笑みを浮かべながら、すぐ後ろに立っている。

立ち上がろうとするも、足をくじいたようで立ち上がることが出来ない。

nextpage

(.....こ、殺される!!)

少女が丸山へ手を伸ばしたその時だった。

nextpage

shake

sound:18

「.....っっ!!!!?」

気づくと、丸山はまた儀式の中にいた。

もがいてももがいても動かない手足。

左横には、お経のような言葉を発する老婆。

nextpage

(ま、またこのシーンだ...!)

老婆は、小太刀を赤装束の男から受け取り、振り上げた。

丸山へ刃先が落ちた瞬間ーーーー

*************

wallpaper:632

music:4

shake

「うわぁっっ!!!」

....まただ。

また殺される前に目が覚めた。

しかし若干ではあったが、落ちてきた刃先が少し近くなった気がする。

nextpage

(やはり....前田の言った通り、儀式日に合わせて老婆の小太刀が近づいてくるってことなのか?

そして8日後には....。)

丸山は、カラカラに乾いた喉を潤すためにキッチンへ向かおうと、ベッドから降りた。

nextpage

「....つっ!?」

電気が走るように足首に痛みが走った。

まさに、夢の中でくじいたあの足だ。

nextpage

(ま、まさか...。)

丸山は嫌な予感がした。

いや、内心ではもう気づいていたのだ。

夢の内容を、起きても鮮明に覚えている。

そのうえ、夢の中での空気も、匂いも、感触も、痛みでさえ、現実そのものなのだ。

さらに、腕の痣同様、夢の中で負った傷は現実にも帰ってくる。

nextpage

(つ、つまり...夢で死ねば現実でも...。)

丸山は焦った。

もしそうなら、夢での行動も限定される。

無理な行動は出来ないうえ、またあの少女に見つかり殺されれば....。

丸山はコップに水を入れ、一気に飲み干した。

だが丸山には、分かった事がある。

nextpage

(まず、夢の時間は限られている。

あのメモは現実の時間とリンクしているようだ。

あと、服が白い装束衣に変わってすぐに儀式のシーンへ変わる気がする。

そして夢の中で死ねば現実でも恐らく死ぬ。

.....実際、これが一番マズイ。)

nextpage

丸山は、痛む足を引きずりながら、朝子がまだ寝ているのを横目に外へ出た。

一度、気分を落ち着かせるために外の空気を吸いたかった。

nextpage

「な、なんだこれ....!?」

丸山は驚愕した。

時間は朝の6時15分といった所だ。

既に6月の今頃はすっかり日は上がり、晴れていれば青い空が迎えてくれる....筈だった。

なんと空が赤黒いのだ。

まるで、夢の中のあの空のように。

更にマンション、ビル、車、人以外の全てに至るまで、赤黒い染みのようなものが浮かんでいる。

nextpage

(う、嘘だろ...?

まだ夢の中....なのか?ここは。)

いや、夢ではない。

どこを見ても、「赤黒い不気味な空と染み」以外は全ていつもの風景だ。

道を歩く人間も、車も、何の違和感も無しに動いている。

nextpage

「ってことは....俺だけ見えてるんだろうな。」

丸山は、はぁー...とため息をつき、家に戻った。

nextpage

(呪われた証拠.....ってか。

これで、あと8日で俺は....。)

丸山は換気扇の下で煙草に火を付けた。

先程はよく見ていなかったが、部屋の中にまで赤黒い染みが所々に見受けられる。

nextpage

(家の中にまで....。)

まるで、あの夢に現実世界が侵食されているように思えた。

nextpage

「.....ふーっ。」

このまま諦めてしまおうか。

残り8日で何ができる?

嫁とも倦怠期で、仕事もつまらないし趣味もないこんな人生、生きてて何か意味があるか?

そんなことが頭をよぎる。

nextpage

(俺が死んだら、朝子は悲しむのだろうか。

いや、むしろ今、あいつは本当に幸せなのだろうか。

....そんなわけないか。)

煙草を灰皿へ押し付けて火を消し、丸山はまた新しい煙草へ火を付けようとした。

その時、トイレの水を流す音が聞こえ、朝子が体調悪そうに出てきた。

nextpage

「なんだ、お前。

具合でも悪いのか?」

丸山は煙草を咥えたまま話しかけた。

すると、ヨロヨロと朝子が此方へ歩み寄り、丸山の腕を掴んだ。

nextpage

「おっ、おい。

どうしたんだよ....?」

様子がおかしい。

俯き、明らかに苦しんでいるように見える。

丸山の脳裏に浮かぶ嫌な予感。

nextpage

(ま、まさか....。

朝子にまで影響が及んでいるのか?)

震える朝子の手。

俯いていて顔が見えないが、恐らく泣いているようだ。

nextpage

「お前、本当に大丈....。」

そこまで言いかけた時、朝子が涙でぐしゃぐしゃになった顔で此方を向いた。

nextpage

「......できた。」

「はっ!?」

「赤ちゃん.....出来た。」

口をあんぐりと開け、丸山は固まった。

nextpage

(い、今こいつ...な、何て...言った。)

「おま、お前今....。

は?ちょ、ちょ、ちょっと待て。

証拠あんのかよ??」

それを聞いた朝子は、ポケットから何かを取り出した。

それは、妊娠検査薬だった。

nextpage

「....昨日、あなたが寝てから一度試してみたの。

それで今、気持ち悪くてもう一度測ってみたのよ。

.....2回とも、陽性だった。

ちなみにそれ、99%正確なんだって。」

目の前には、二本の縦線が入った検査薬。

最近の検査薬の正確度はかなり高い。

nextpage

「で、で、でも....。

俺は、お前をしばらく抱いて無い筈だ。」

はぁー...と朝子がため息をついた。

そして、不安いっぱいの表情を浮かべ、少し視線を逸らした。

nextpage

「....あなた、1ヶ月くらい前、会社の飲み会があったでしょ。

あの日、すごい酔って帰ってきたと思ったら、あたしのこといきなり....。

とにかく!

正真正銘、あなたの赤ちゃん....なのよ?」

そう言うと、朝子はまた目に涙が溢れ、丸山の胸へ飛びついた。

nextpage

確かに、丸山には覚えがあった。

丁度1ヶ月前くらいの週末に、飲み会があったことを。

すごい酔っぱらっていて、翌日には記憶が無かったことも。

nextpage

(まじ....かよ。)

丸山は嬉しかった。

始めて出来た我が子の存在。

それを知らされた時の感動は、一瞬で丸山の人生に光を差した。

nextpage

「そっか。

.....ありがとうな。」

丸山は、抱きつく朝子を抱きしめた。

いや、もう二人というのが正しいのだろうか。

nextpage

(死ねない....絶対に。)

「生きる」ことのこれ以上無い理由を、丸山は今、ようやく初めて得たのだった。。

*************

wallpaper:717

nextpage

music:3

2009年6月12日(金)

丸山は、油断するとついニヤついてしまう自分の顔をペシャリと叩き、インターホンを押した。

nextpage

ピンポーン...

応答がない。

「くそ、さっき自分でこの時間に

来いって言ったくせに。」

nextpage

ピンポーン...

「....うるせえ!勧誘は毎回断ってんだろうがっ!!」

いきなり出たと思ったら怒鳴り声がする。

全く....。

丸山はまたため息をついた。

nextpage

「.....俺だっつーの。」

「ん?.....おっ、わりぃ。

てっきりいつもの勧誘かと....。

あいつらしつこくてさぁ、こないだなんて...」

nextpage

「いや、いーから!

とりあえず中入れてくれよ。」

長くなりそうな話を打ち切り、丸山は中へお邪魔した。

nextpage

「まっ、どうぞ。

さっきお前を呼んでから、急いで片付けたからよぉ。まっ、数年ぶりにな!

カッカッカ!」

外観は比較的綺麗なアパートの一角にある前田の家。

しかし、外観と裏腹に中はひどい荒れようだった。

nextpage

(こ、これで....片した?

一体何を??)

部屋には少なくとも、腐った何かのゴミやカビ、積まれたゴミ袋で足場が殆ど無い。

バランスを崩しそうになりながら、丸山はピョコピョコと飛ぶようにして部屋の奥へ入った。

nextpage

「で、何か分かったのか?」

「まぁまぁまぁ。」

前田は、恐らくそこで寝ていたのであろう布団の上へ座れとジェスチャーする。

布団には、正体不明の染み。

赤黒いあの染みとは違うものだった。

nextpage

「い、いーから。

このまま聞くよ、何が分かったんだ?」

少しムッとしたような表情を見せた前田だったが、スッとパンツの中からリモコンを取り出した。

....ちなみに、前田はパンツ一丁の格好であった。

nextpage

「とりあえずよぉ、昨日帰って何度か見てみたんだよ。

色々分かったぜぇ?」

ニヤニヤしながら、前田はテープを再生した。

そして、カメラが屋敷の中へ入った所で一時停止をした。

nextpage

「ここだ、ここに画像は荒いがカレンダーがあるだろ。」

確かに、画面の右横にカレンダーらしきものが壁に掛かっていた。

しかし、画像が荒くてよく見えない。

nextpage

「そいつをよぉ、この俺のスーパーパソコン技術によって画像の荒いのを出来る限り除去、拡大させたのがコレだ。」

前田は、テレビの横のコピー用紙を差し出した。

nextpage

shake

「....あっ!!」

カレンダーには、

「1989年6月9日」と書かれていた。

「....20年も前のものなのか。」

それを聞いた前田は、ガックリを首を横に落とし、呆れた顔をして言った。

nextpage

「バーカ、見るとこそこじゃねえよ。

ここだよ、こーこ!!」

バンバンバンっとコピー用紙に写るカレンダーの下部を指差した。

丸山は、もう一度コピー用紙へ視線を落とした。

nextpage

「神山...接骨医院?」

そう書かれた病院名の下には、その病院のものであろう電話番号が記されていた。

住所も書いてある様だが、小さすぎて見えない。

nextpage

「大発見だろ。

その番号さえ抑えりゃあ、その村の周辺の場所くらいは分かるだろ。」

nextpage

(す、すごい。

俺なら、何の違和感もなしにスルーしてる所だ。)

丸山が感動していると、前田がチッチッチと指を振りながらリモコンを操作する。

nextpage

「分かったことはそれだけじゃねぇんだよ。

お前の言ってた、「探せ。」って意味は多分こいつだ。」

テレビのシーンは、あの少女の儀式のシーンの最後の方で止められた。

首が床へ落ち、画面下へ転がってくるシーンだ。

nextpage

「へへっ、何回見ても惨いぜ。

.....ここ、見てみろ。

変じゃねえか?」

前田の指差す先は、首の落ちた少女の身体だ。

丸山は目を凝らしてよく見つめた。

すると、、

nextpage

shake

sound:18

「あっ!!!!?」

首を落とし、終わったと思っていた儀式。

ところが、老婆は落ちた首に目もくれず、首の無くなった少女の右腕を切りつけている。

nextpage

「ど、どういうことだ....?」

前田は、得意気にドヤ顔を浮かべながら質問に答えた。

nextpage

「いいか、恐らく儀式はこのガキを殺して終了ではねーんだ。

腕を切りつけている所を見ると、多分殺すことに意味があるわけじゃない。

そして、お前が言われたっつー「探せ」だっけ?

これ、俺は最初この儀式が行われた場所か、もしくはこのガキを殺した連中を探せってことかと思った。

でも、この首に目もくれず腕を切りつけているシーンを見てピーンと来たよ。」

前田は、そこから少し間をあけるように身体を伸ばした。

nextpage

「な、なんだよ、早く言えよ。」

呑気な前田の態度と、何もピンと来ない自分の無能さが重なり、丸山は段々とイライラし出した。

nextpage

「これは、あくまで大前提として俺の勘でしかないがな。

このガキ、この後でバラバラにされるんじゃねぇかなぁ。

恐らく、最低でも5体バラバラってとこだろう。

そして、「探せ」ってのは、こいつのバラバラになった「身体のパーツ」を、ってことじゃねーか?」

丸山は、しばらく考えたが、納得するに至らない何かが引っかかる。

nextpage

(なぜ、身体のパーツを探す意味があるのだろう。)

考えこんで黙った丸山を見て、前田は話を続けた。

nextpage

「なぜ、バラバラにする必要があるのか、俺もすげー考えた。

ネットで、そういったアングラなサイトで、様々な儀式についても徘徊して調べたさ。

んで、辿りついた答えは、「バラバラに封印」して初めて意味の成す儀式だろうということだ。」

nextpage

「確かに....。」

前田の仮説は、確かに丸山の考えでは辿り着かないようなことだった。

それでも、もしそうなら殆どの疑問が解かれる。

バラバラに封印、または埋葬したからこその「探せ」は、納得がいく。

仮にこの儀式の行われた場所や人なら、いちいち人間に頼む必要はなさそうだからだ。

霊の直接関与できない、実際の現実世界でないとできないことだからこそ、少女が丸山に頼んだ可能性は十分にあり得る。

nextpage

「でも、集めてどうするんだよ?」

その質問に関しては、前田は分からないと首を横に振った。

しかし、それだけでも分かったことは大きい。

もし本当にこの仮説が正しいとするのなら、前田には叙○苑のひとつでも奢らなければ割に合わないだろう。

nextpage

「.....さんきゅ。」

「あ?それはまだ早いだろう。

んじゃ、行くぞ。」

nextpage

「.....へっ!?」

丸山は急に立ち上がる前田に驚いてしまった。

「へっ!?じゃねーつの。

電話番号の住所調べて、直接乗り込むぞって言ってんだよ。」

nextpage

「ま、待て待て。

まだ何も準備もしてな....。」

そこまで言いかけた所で、前田がふと奇妙なことを言った。

いや、その前に「見透かされたように」と入れた方が正しいだろうか。

nextpage

「.....お前、何かいい事あったろ?

どうした?まさか、ガキでも出来たか?」

ほとほと、こいつには驚かされる。

nextpage

(どんだけ勘が鋭いんだよっ!)

頭でツッコミを入れ、照れたように丸山は「うん」と答えた。

それを聞いた前田は、フッと一瞬笑った後で、ガシッと丸山の肩を掴んだ。

nextpage

「いいか。

子供にとって、どう足掻こうと父親はお前一人だ。

女房や友達や仕事なんてのは、幾らでも代わりが効く。

でも、この世で一番代わりの効かねーのが子供ってやつだ。

死ぬほど大切にしてやれ。

そんで、子供が成人するまでは、絶対に死ぬな。

男として、人として、だ。

子供を作るってのは、そういうことだろ。」

nextpage

「......あぁ、約束する。」

急に真面目な話をする前田に少し戸惑った丸山だったが、本当にいい友を持ったと、その時心から感じたのだった。

nextpage

「とりあえず、その番号に電話してみろよ。」

丸山は、携帯であのカレンダーに印刷されていた電話番号に電話をかけた。

nextpage

【.....お客様のおかけになった電話番号は、現在使われておりません。

番号をもう一度お確かめに....】

「....えっ。」

何度かかけてみるも、その番号はすでに存在していなかった。

しかし、頭のケタを調べれば、おおよその場所は分かる。

丸山は、会社の後輩の高橋へ連絡を入れた。

編集社なだけあって、会社でならすぐに番号から場所が割り出せる。

nextpage

「....あっ、もしもし高橋か?

悪いんだけど、ちょっと住所を調べてほしいんだよ。

....えっ、俺今盲腸で入院したことになってんの!?」

チラっと前田を見ると、ぺろっと舌を出した。

nextpage

「ま、まぁとりあえず色々あってな。

悪いんだが、今言った番号調べて連絡してくれ。頼んだぞ!」

電源を切ったと同時に、前田が舌を出しながらウインクをしてきた。

勿論、丸山はそれを無視した。

しばらくすると、高橋から連絡が入った。

nextpage

「石川県白山市周辺、だそうだ。

ただ、それ以上の詳細は分からないって。」

nextpage

「それじゃー、早速出発だな。

知らない地なら、車で行くのがいいだろ、小回りもきくしな。

後の詳細は、役所でも行ってきいてみよう。」

nextpage

丸山は、子供を授かったばかりの妻を残すことが少し心配になったが、妻には「取材で出張」とだけ伝え、なるべく負担のかからないようにした。

丸山は、一日ですっかり妻に優しくなっていたのだったーー。

続く

Concrete
コメント怖い
8
29
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ

那奈さん、コメント&怖いを付けていただき、ありがとうございます。

ご指摘していただいた点、確認して訂正させていただきました。
申し訳ありませんでした(>_

返信

いつも楽しく拝見しております!
数日覗けなかった間に進展が!!
この後、続きを読みにいってきますね☆

それと、一点だけ…
『タバコを加えて』の『加えて』は『咥えて』こっちではないでしょうか?
指摘すみませんσ(;´・д・`)

これからも、楽しみに作品を待ってますね!

返信

ユウさん、コメント&怖いを付けていただき、ありがとうございます。

楽しみしていただけること、本当に嬉しく思います^_^

ちょうど今、新しく更新いたしましたので、ぜひ読んでいただけると幸いです。

宜しくお願いします。

返信

雨音さん、コメント&ご指摘いただき、ありがとうございます。

無知な所が見えてしまいましたね、申し訳ありません。
私自身思い込んでいました(T ^ T)

その部分は訂正、削除させていただきました。
また矛盾な点など、お気づきの際には宜しくお願いいたします。
ありがとうございました。

返信

拝読させていただきました。

一点気になった所が・・・

 
鳥居も注連縄も、仏教では無く、神教では・・・?

返信

VEILEDGOTさん、コメント&ご指摘、ありがとうございます。
今確認したところ、確かに間違っておりました。
何度か確認したのですが、申し訳ございませんでした。

怖くない駄文にも関わらず、毎回コメントしていただき感謝いたします。

核に迫っていきたいのですが、なかなか物語を考えるのは難しいものです。
頑張ります笑

返信

ゆめから覚めた後のシーン、
丸山は、はあー…とため息をつき、家で戻った
となっています、家に、の間違いではないでしょうか(`・ω・´)ノ

少し丸山さんの人生に光が差して来たのが却って怖いですね...
そして前田…ちょいちょいイケメンだw

いよいよ物語の核に突っ込んで行く感じですね!
楽しみ!

返信