今回はアラタの事をお話しします。
アラタは普段物静かで寡黙でクール。あまり感情を出さないので何を考えてるかわからない。切れながな目が近寄り難い。人を寄せ付けない雰囲気がある。サラサラの黒髪に背も高く一見モテそうな外見。
彼は自分の命よりも私を優先する所がある。どうしてそこまでして私を守ろうとするのか聞いてみた事がある。
ここからは、アラタの視点でお話しします。
俺は物心ついた頃から普通の人は見えない物が見えていた。
みんなにも見えてると思っていた。
最初は母に聞いてみた。
「あのおじちゃん、どうして血だらけで首が曲がってるのかな?病院に行った方がいいよね?」母の顔は強張り震えていた。俺は何かいけないことを言ったのか?
幼稚園ではボロボロの服を着た男の子が砂場で遊んでいた。真っ白い顔でいつも1人で遊んでたから一緒に棒倒しをして遊んだ。
お弁当を食べてる時に隣の席のカズヤ君が1人で何してたの?と聞いてきた。何となく言わない方がいいのかなぁと思いはじめた。
小学校に上がる頃には生者かそうでない者の区別が付く様になって来た。それでも何もない空間を凝視する俺をみんな気味悪がった。
見える俺に助けを求めてやってくる。聞こえる俺に話しかけてくる。でも俺は何もしてやれない。そんなチカラはないんだよ。すまない。
何のためにこんなチカラがあるのかわからない。何も出来ないならいらないじゃないか。毎日、無力感を感じはじめてた。
ある時、クモンで会うタカヒロが女の子と話してるのを見かけた。女の子は俺には眩しく見えた。とても印象的だった。
数日後、公園であの女の子を見かけた。彼女はスベリ台の上で誰かと話してる様だった。楽しそうに笑っている。でも話してる相手は生者ではなかった。どうしたら良いか考えたがわからない。彼女と話してる奴は彼女の手を取りどこかに連れて行こうとしていた。
「ダメだっ!」そう思っても声が出ない。身体が動かない。俺は泣きながら助けを求めた。誰でもいい、あの子を助けてくれ!
すると俺の目の前が急に眩しく光った。誰かいる?そう、キクコさんだった。
キクコさんは言った「あの子を護って」と。「でも、どうすれば…」俺は泣きながら聞いた。「あの子の側に居てあげて。あなたが側に居ればあの子を現世に繋ぎ留めておける。」
俺は彼女に向かって全速力で走って行った。「消えろっ!」そう叫ぶと奴は残念そうな顔をして消えていった。
「ありがとう、あの人しつこくって困ってたの。」そう言って笑った彼女はやっぱり眩しかった。
「また会える?」この公園からかなり遠くまで帰らなきゃならないからと家路を急いでた彼女が別れ際に聞いてきた。俺には確信があった。「そうだね、必ず会えるよ。」
彼女を護る為に俺は生まれこのチカラがある。彼女の側にでこそ俺は在る。これが俺の使命であり生き甲斐。こんな人生羨ましいだろ?
静かにゆっくり語ったアラタはとてもかっこ良く見えた。
不思議な縁で繋がってるアラタ、タカヒロ、そしてミズホとアキの話はまた後日。
作者伽羅
嘘のようなホントの話。彼はこの後恥ずかしそうにカッコつけ過ぎたと言ってました。
そのほかの友人達にも驚きの縁がありました。
また次の機会にご紹介します。