私は小1の頃から好きな人がいた。同じクラスのサトシ君。スポーツも勉強も出来て5年生になる頃にはいつも学級委員になるほどの人気者になった。残念な事に5年生に上がる時、クラスが別になってしまったが親友のアキがサトシ君と同じクラスだったので私は何かと入り浸っていた。
私の片想いも丸5年、6年生に上がってすぐに女の子が転入してきた。彼女はアカネ。私の家の真裏に越して来た。明るく社交的で物事をハッキリ言うアカネはあっという間にクラスに馴染み誰に聞いたか私がサトシ君を好きだと言うことをいつの間にか知っていた。
ある日の帰り道、アカネが一緒帰ろうと言って来た。同じ方向なので断る理由もなく登校班で一緒に登校している道を前の学校での友達の話などを聞きながら逆走する。
「ユウの好きな人ってサトシなんだって?」イキナリ不躾な言い方にムッとしたが長年の私の片想いはサトシ君本人はモチロン同級生はみんな知っていることなのでアッサリ認めるとアカネはニンマリ笑ってがんばってねと言った。
?
イヤな予感がした。これから起こる事がとても残酷な展開になるとは予想出来なかったが何か良くない不安は感じていた。
家の前まで来るとアカネはじゃあねと入って行った。人なっこいアカネの笑顔にさっきの不安はすぐに忘れてしまっていた私は数日後驚かされる。
アカネは必要以上にサトシ君にベッタリだった。学級委員に志願しサトシ君と2人で仲良く職員室に出入りしていた。更に数日後にはサトシ君の事が好きだと公言し、なんと公認の仲になってしまった。
私の片想いをみんなが知っていた。私の失恋もみんな知っている。見かねた男子の数人がサトシ君を見損なったと言っていた。男はサトシだけじゃないぞ!と声かけてくれる男子もいた。誰を好きになるかなんてサトシ君の勝手だけど、みんなそんな事はわかってたけど暫く6年生の空気は居心地の悪いものになってしまった。
私は1人で土手で座っていた。サトシ君やアカネ、同級生のみんなの事、考えるとウンザリした。疲れていた、どうかしていた。アカネが憎くてたまらなかった。だからあんな事を考えてしまった。
ア•カ•ネ•ヲ•ノ•ロ•イ•コ•ロ•シ•テ•ヤ•ル
私の中から黒い何かが生まれ出て来た。黒い物はゾワゾワと蠢き少しづつ大きくなっていく。それを無表情な私が見ていた。
?
呼ばれた気がしてハッと我に返る、黒い物はまだ目の前にいてゾワゾワ蠢いている。アカネを思い出したとたんにそれは凄いスピードで飛んで行った。アカネの所に行ったのだろうと思った。
誰に呼ばれたのか?そんな事は直ぐに忘れてしまって。忘れるべきではないのに。
次の日、学校に行くとアカネが事故に遭ったとアキから聞いた。幸い足を骨折しただけで済んだと。
私がやった!
そう思った。でも何も感じなかった。当然だと思った。その日はボンヤリしていた。すごく疲れていて何も考えたくなかった。
帰り道、同級生のタカヒロ君が気がつくと隣を歩いていた。
「なんか用?」私は視線も移さずぶっきらぼうに言った。
タカヒロ君は乱暴で今の私の言葉くらいぶっきらぼうな男子だ。そんな彼が心配そうに言った。「ユウ、自分を見失うな。あんな物に負けちゃダメだ。しっかりしろ。」何もかも知ってるのか?彼は目に涙を溜めていた。「あんな事やっちゃいけない!」今度は強い口調で言った。心配してくれてる人がいる。ずっと見守ってくれてる人がいる。彼は言った。だんだんとお腹の底が熱くなっていった。自分の恐ろしい考え、何てことをしてしまった。罪の意識に押しつぶされそうになった。タカヒロ君がいなかったら壊れてしまいそうだった。
「タカヒロ君…助けて…」泣きながらそれだけ言うのがやっとだった。
「大丈夫、お前なら大丈夫だ。俺が側にいるから。」
数日後、アカネが登校してきた。後遺症もなく完治すれば今まで以上に丈夫になると病院で言われたらしい。
「タカヒロ君、あれは何だったのかな?」何となくわかってたけど聞いてみた。あれは憎しみの感情に寄ってきた動物霊だった。飼えないからと土手に捨てられた猫や犬などの小動物が無念の思で死んで行った。人間の勝手で命を落としてしまった動物達の無念の感情の塊。私は魅入られ取り込まれてしまったのだった。
その後タカヒロ君は転校してしまった。もう大丈夫だよなと言って笑った彼は以外と優しかった。
「ねぇねぇ、聞いて転入生が来るんだって!」大声で叫びながらミズホが走ってくる。「男子だってよ、イケメンだといいなぁ!」興奮して大声でしゃべるミズホをまあまあと落ち着かせてると背中をバンッと勢いよく叩かれた。
痛いなぁ!誰だよ!と振り返る瞬間「久しぶりだな、ユウ。」と、優しい笑顔の彼は声変わりをし、私よりもものすごく背が高くなって立っていた。
「タカヒロ君?」
「おうっ!元気だったか?」
話したい事がいっぱいある。聞きたいことも。言葉がつまって出てこない。オドオドする私から視線を少し後ろに移しオドロキの一言。
「よおっ。アラタ。」
えっ?
「タカヒロ、やっと来たな。」
えっ?
どうなってるの?2人は知り合い?
「ああ、ガキの頃クモンで一緒だったんだ」
ああっ…きっとタカヒロも…
「アラタ経由で守護霊に頼まれた。は、は、は、」
作者伽羅
仕事が入ってしまい明日から少し忙しくなってしまいます。ダッシュで投稿しました。
彼らのおかげで私は人の道を外さずに来れました。
この後私はアカネを呪ったペナルティを負う事になりますが、また別の機会にご紹介します。