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これは、以前(10年以上前)に務めていた病院で夜勤中に実際に体験した話です。
大したオチも無い上に長文ですので、お暇な時にどうぞ。
その病院は潰れたわけではなく、現在も営業している病院なので詳しい場所等は伏せますが、地域では有名な精神科の大きな病院です。
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どこの病院にも多かれ少なかれ怪談めいた話はあるものですが、その病院も色々とその手の話には事欠かない病院でした。
実際に自分が聞いた話では、夜中に半透明の髪の長い女の人が廊下をウロウロしているのを複数の看護師や患者さんが見たり、
亡くなって誰もいないはずの部屋のナースコールが鳴ったり、
自称「視える」職員が誰も居ないはずの部屋から誰かが覗いてると騒いだり、など。
自分は視えない人なので実際に幽霊を見たことはありませんが、その病院で夜勤すると毎回のように金縛りになっていました。
他のスタッフも金縛りはよく体験していたようです。
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金縛りというと、目を開けると幽霊に抑えられているとか、身体に乗られているという話をよく目にしますが、自分に限ってはそういうこともなく、ただ身体が動かないというだけでした。
ただ、金縛りになる前には予兆のようなものがあって、うまく言葉にはできませんが「あ、これから金縛りになるな」という感覚が感じられるのです。
まぁ、人間は大抵のことには慣れてしまうもので、1ヶ月に6回程度ある夜勤で毎回金縛りになっていれば恐怖心など全く無く、
その日も「そろそろ仮眠でもしようかな」と休憩室で横になった直後に金縛りの予兆がきたので
「あ、これから金縛りになるから固まっても楽な姿勢をとっておこう」
とそんな感じで、金縛りに備えて仰向けの姿勢から横向きに寝る姿勢になりました。
案の定、横向きになってすぐに金縛りになり
「早く解けないかなぁ」などと
呑気に考えていたのですが、その日は普段の金縛りとは違いました。
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いつもは身体が動かないだけなのに、その日は何か音が聞こえてくるのです。
最初はよく聞き取れなかったのですが、じっと聞いていると男性の声のようです。
声の感じから、年齢は老人であるような印象を受けました。
休憩室はナースステーションの奥にあり、仮眠前にステーションは施錠したので患者さんが入ってこられるわけはありません。
それに、仮眠中に患者さんが急変する可能性もあり、それに備えて相方の看護師がステーションに待機しているはずです。
shake
では、この声は誰なのか⁈
しかも、だんだん声が大きくなってきます。
「近づいてきてる…」
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声が近づいてきて大きくなるにつれて、老人が言っている言葉がはっきりしてきました。
老人はお経を唱えていたのです。
お経を唱えながら、徐々にこちらに近づいてきているようでした。
流石にこの時には全く余裕もなくなり
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「これはあっちの世界に連れていかれちゃうな…
このまま憑り殺されてしまうんだ…」
と恐怖で一杯でした。
お経はもう耳元で大音量になっています。
自分を殺す幽霊は恐ろしい外見なんだろうか?
どんな風に殺されるんだろうか?
色々な考えが頭を巡り、
諦めと絶望が心を支配しました。
その時、
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shake
「おいっ!」
身体を揺さぶられました。
ハッとして
見るとステーションで待機していた相方の看護師が目の前立っていました。
曰く「時間になってもなかなか起きてこないから起こしにきた。動かないから死んでるかと思った」との事でした。
自分の感覚では、仮眠に入って殆ど時間はたっていないと感じていましたが、すでに2時間近くが経過していました。
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その後も、しばらくその病院で働きましたが、自分は不思議と金縛りにあわなくなりました。
もしかしたら、あの老人は連れていこうとしたのではなく、護ってくれたのかもしれないなぁ…と、今では思います。
そういえば、あの時期は自分が勤務している時に限ってやたら急変に当たって、よく患者さんが亡くなっていたので、
自分には視えないだけで、変なモノに憑かれそうになっていたのかもしれません。
連れていくのにお経っていうのも変な気がしますから。
母親も看護師で、よく「亡くなった患者さんが家までついてきて、夢とかにでてきちゃうのよ」と言ってたので、実は霊的なモノに縁をもちやすい素養がある血筋なのかもしれませんね。
ちなみに自分には弟がいて、弟も看護師なんですが、弟は「視える人」らしいです。
そのことを自分が知った出来事があるのですが、その話はまた別の機会に…。
作者ハク