「女出来たさ!」
誇らしげにスマホの画面を見せるシンジ。
シンジとは、もう40年以上にもなる長い付き合いだ。
文字通り「腐れ縁」というやつだ。
嫁さんと離婚してもう何年も経つが、娘さんもそろそろ高校を卒業する頃か・・・
「どら、見せてみろ!どーせろくな女じゃな・・・い・・・」
「レイって言うんだ、中々のベッピンさんだべ!」
「・・・・この女、やめた方がいいぞ!」
「なんでよ?」
「不のオーラがハンパ無い!」
「マジかぁ~」
「悪いことは言わないからやめておけ!不幸になると言うより身に危険が及ぶぞ!」
「・・・彼女さぁ・・・結婚してからずっと不幸続きで離婚してからも不幸が続いて今に至っている様な女なんだよねぇ・・・」
俺の能力を知っているシンジは頭を抱えたが直に「まあ・・・今更、結婚する訳でもないしカラダの相性も抜群なんだよねぇ~」と切り替えした。
スマホの画像からも死霊に取り憑かれているとはっきり判るが所詮腐れ縁の仲だ。
それ以上は言わずにおいた。
そのレイという女・・・
子供の頃から三十数年ずっと死霊を憑けていたのだろう。
完全に霊と同化し祓えるレベルではない。
スマホ画面から溢れ出る赤黒くドロドロとした重たい「不」のオーラが部屋中に充満した。
息苦しくなってきた俺は部屋を出た。
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数ヶ月が経ち季節は冬。
新年を迎え2014年もスタートした。
正月にシンジと会ったのだが、女に新たな彼氏が出来たらしく別れたと聞いた。
酒を呑みながら「その方が良かったんだって!」と慰めた。
毎年のことだが旭川の雪は今年も多かった。
ある日の午後2時・・・
仕事柄、冬の間は大変忙しい俺の携帯が鳴り響いた。
「この忙しいのにまた仕事かよ!!!」
少し不機嫌に電話に出た。
シンジの母さんからだった。
「シンジが今、病院に運ばれたんだって!」
「どうしたん?!」
どうやら会社の雪下ろし作業中に屋根から落ちたらしく7m落下、建物と建物の60センチ程の隙間に逆さまの状態で挟まりレスキュー作業も小一時間掛かったらしい。
死んでもおかしく無いレベルだ!
仕事が終わりメールを送った。
「シンジ・・・何か食いたいもんあるか?」
「・・・メロンパン」
ローソンで菓子パンとジョージア微糖を買い病院へと急いだ。
意外にもシンジは元気そうに見えた。
「そこら中、検査したけど打撲と擦り傷だけみたいだわw」
不幸中の幸いである。
その後も、他愛も無い話をして面接時間終了を告げる放送が流れたので席を立った。
「・・・・さっきレイからメールがあってさぁ」
部屋を出ようとした俺にスマホを差し出しながらシンジは言った。
「な~んだまだ生きてたのw」「彼氏なんか1時頃に倒れて今も集中治療室よw」
「ざわっ」とした。
同じ日の同じ時刻に2人の男を病院送りにするとは・・・
どうりで・・・
病室に充満する赤黒くドロドロと重たい「不」のオーラは病院だからではなく女からのメールにより溢れ出たモノだった。
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あれから約半年経つがシンジは元気に生活している。
勿論、レイという女とも会っていない。
しかし・・・
シンジの部屋は今でも息苦しく長居は出来ない。
作者andy兄
読んで頂きありがとうございます。
諸事情により、あまり深い所まで書けないのが残念です。