俺の名前は九十九 優。
物心ついた時から親も知らない姉がいた。正確には姉貴分だろう。
ちなみに俺は一人っ子で両親と三人暮らしだ。
姉はいつも俺のそばにいて知らないことは無いんじゃないかってくらい博学だ。
しかし、姉とは名ばかりで彼女の事を一度しか触れたことがないのだないのだ。
何故なら彼女はいつも鏡の中や影だけの状態で僕に話しかけてくる。何でも自分の姿を投影できるものや窓の役割を通してしかこちらの世界に干渉できないらしい。
一時期は魅入られているんじゃないかとも思ったが害もないし、それどころか色々助けてくれるので今は普通の姉弟の様に接している。
この話はそんな姉との思いでを語り草にする、ただの思い出話だ。
~九十九 優10歳~
その日は日曜日。部屋の中がいつもに増して暑い。それもそのはずだ。もう6月の下旬なのだから。その日も朝から仕事の両親の代わりに、壁に描かれた一つの影によっておこされる。
「優~。おきろ~。もう11時だぞ~!」
「もう少し寝させてよ姉さん……」
正直、日曜日は死んだように寝ていたい。そう考えるのは俺だけじゃないはずだ。
「あんたね……。このままだと熱中症でいずれ死ぬよ!寝るにしてもエアコン付けろ」
「母さんが省エネしろ。だって」
「おばさん……。息子が死んでもいいのかよ……」
うちの親は古いタイプの人間だ。未だに根性論で物事を語ることもるし、近所の目を何より気にする。正直めんどくさいタイプの人間なのだ。
しかし、死ぬのはごめんだ。せっかく起こしてくれた姉さんにも悪いので。しぶしぶベットから出てノロノロした足取りで一階に降りた。
それから1時間。暑さはさらに上昇し窓を開けても風が抜けないのでもっと熱がこもるような状態になっていた。
このままでは本当に死にかねないので冷房のスイッチを入れた。冷房はすぐには効かない。それどころか最初の方は窓を閉めるので余計暑く感じる。
「暑い……」
「そりゃ、夏だからね~」
バテバテの俺と比べて姉さんは暑さなんてへっちゃらみたいだ。それもそうか。なんせ実態がないんだから。
「姉さん……暑いから怖い話してよ~」
「え~。私怖いの嫌いなんだけど~」
「人外のくせに何言ってんだよ!」
「酷い!?これでも私心は人間やってますから!」
そんな、コメディを繰り広げつつ姉が語ってくれた。
*
姉曰く、数年前、ある小学校で生徒7名がいなくなる失踪事件が起こったらしい。
現場には帽子や靴などが散乱していたが目ぼしい手掛かりは何もなかった。――これが表向きの警察の発表らしい。
しかし、実際は校庭のあちこちに靴や帽子そして衣服の一部が散らばっていたそうだ。そしてもう一つ。校庭内の計七か所に血だまりが発見されたそうだ。その現場には指や耳といった生徒の体の一部とみられる肉片が多数発見されたとのこと。
生徒の中にはこうささやく者もいたらしい「鬼に食われたんだ」っと。
数か月前から生徒たちの中で変な噂が流れ始めていた。
『夕方に鬼ごっこをするといつの間にか一人増えている。』そんなどこにでもあるような話だった。
警察はサイコキラーによる児童虐殺事件として捜査を開始したが結局なんの手掛かりもつかめぬまま捜査は今もひっそりと続いているらしい。
ここからは姉さんの推理になる。
何でも子供たち7名は実際8人で鬼ごっこをしていたらしい。しかし、鬼を除いた7人は校庭の外に逃げて1人を負かそうとしたらしい。
見つからないことに痺れを切らした鬼役の子が帰ってしまった。それがいけなかった。
姉さん曰く、鬼ごっことは捕まったら食われて死ぬ事を表していて、一部の地域では生贄を決める儀式として行われていたそうだ。なんでも、子供の遊びには呪術的な関わりが多いらしい。
残された7人は打ち合わせの時間に学校に戻った。もちろん鬼に見つからないように慎重に。だがそこに鬼役の子供はいなかった。それでも子供たちは鬼ごっこをしていた。それがいけなかった。今までは鬼がいたから捕まる側に居たものが鬼になった。
それは純粋で善悪の区別がつかない鬼の子供。本能のままに行動する。その本能は弱肉強食。
文字通り生徒たちは食われてしまった。それが本来の意味するものだから。
生徒たちが行なったのは『鬼降ろしの儀』と呼ばれたもので、多少の生贄となる人々に鬼の居ない鬼ごっこをやらせて鬼を降ろす儀式そのものだったそうだ。
そして、時間帯がいけなかった夕刻。つまり『逢魔が時』こそが鬼の本来の活動時間らしい。運もなかったのだろう。鬼はそうそう現れる者じゃないらしい。偶然そこに立ち寄った時に鬼降ろしで降ろされただけだったのであろう。
それ以来、その学校では時折、人間の骨らしきものが見つかるときがあるらしい。
*
俺は背中に冷たい何かが流れていくのを感じた。
気づくと室内は肌寒いくらいに冷房が効いており、冷やされた汗が背中を伝わったのだ。
「……姉さん。その話本当なの?」
「……さて、どうだったかな。少しは怖かった?」
姉さんは笑っていた。どうやらフィクションらしい。この手の話を聞くのに姉さんはもってこいだ。存在自体が人間ではないのだから。
そう自分に言い聞かせた。
それから一週間。僕は公民館の中にある図書館に来ていた。勉強するっと言い訳をして涼みに来たのである。
いつの間にか寝ていたらしく、太陽が沈みかけていた。
慌てて帰り支度をしていると図書館のカウンターの上に束ねられた新聞が置いてあった。それを見た僕は驚愕した。
新聞の日付は10年前。見出しには『生徒7人行方不明!?変質者による誘拐か!?』の見出しとともに自分の通う小学校の名前が大きく書き出されていた。
再び背中を何か走るのを感じ僕はそのまま家に帰った。もちろん大急ぎで。
それ以来、夕方の鬼ごっこはしないことにした。もしかしたら、一人増えているかもしれないから。
作者真苦楽
初めての投稿なります。真苦楽(まくら)と申します。
初めからシリーズ物の投稿とは自分でも大丈夫なんだろうかと正直心配です。
文章能力皆無+怖くないこんなありきたりの話でも読んでくださると幸いでございます。
こちらの怖話に投稿させていただく際の設定の仕方もよくわからない状態なので教えてくださる
方がいてくれるとうれしいです。
誤字脱字および読みにくかったら申し訳ないですが勘弁してください((+_+))
さて、実際子供の遊びにはいろいろ呪術的なものが混じっているというのはよくある話しで
その中でも「鬼」にまつわる物は多く存在しています。
それを題材として組み上げてみたのがこのお話です。
優くんの姉さんのモチーフは鳥山石燕作「今昔百鬼拾遺」に記されている影女と呼ばれる妖怪をモチーフにしてアレンジを加えております。
質問、感想、ネタの提供等は随時大歓迎です!特に最後!!
まだまだ、新人ですが、生暖かい目で見守ってくださいませ。