僕には姉がいる。
体が存在しない影だけの存在の姉だ。
普通の人間なら憑かれていると慌てふためくような姉。
最近、厨二病が悪化したようで「私の影の中から十数匹ほど式神出せないかな」とか「私の影って異世界に通じてんじゃね!?」とかをマジトーンで発言するほどに悪化した。
異世界の住人がそんな発言をすると洒落にならん。本当に何かを召喚しかねない。
影がどこかに通じてるって?あんた自体が異世界の住人なんだろうが!
そんな痛い姉と散歩に出た時のお話である。
~九十九 優12歳~
「姉さん。暑い」
「そう?私は気にならないけど」
そりゃそうだろうさ。なんせ実体がないもんな!
「それと、鏡の中から出ないでよ。影と散歩してるところ見られたら……」
「見られたら?」
「精神病院に送られる。もしかしたら黒服に連れていかれるかも」
影だけの姉を持つと苦労する。今、姉は鏡越しに影を映している。
なんでも、窓になるものがあれば姿を見せられるし、扉があれば出てくることもできるらしいのだが。
「全く、こんな美人な姉がいるんだから少しは自慢に思いなさいよ」
「俺、姉さんの姿見たことなよ。生まれてこの方12年」
本人は実体もあると豪語するものの見たことがない。
「いや~。最初は不思議な女性をイメージして影だけでいたんだけど段々はずかしくなてね」
……バカがいる。博識で人外である俺の姉はバカだった。
「……失礼な事考えてる?」
「いえ、……なにも」
リーン・リーン・リーン
そんな時どこからか鈴の音が聞こえてきた。どこか清らかで周りの空気が音と共に空気の流れと質が変わるのがわかる。
その音の中心には一人の坊主がいた。
リーン・リーン・リーン・リーン
「何あれ」
「優。近づいちゃダメ。祓われる」
坊主がこちらに振り向いた。どこの坊主だろう。この辺りに寺や神社のようなものはない。
「これはこれは、大変珍しいものが憑いておりますね。……どうでしょう。祓って差し上げましょうか」
「……優?」
祓う?祓うって姉さんの事を言っているのか?
「いかがなさいますか?」
「……お断りします。家族ですか」
坊主は表情一つ変えることなく「そうですか」と言って俺たちと反対の方向にあるいていってしまった。
その坊主は一人の子供に憑いていた年老いた女性の霊を鈴の音で祓った。その年老いた老婆の霊は苦痛に満ちた表情で煙のように消滅していった。
あの後、特に何が有るがある訳でも無く帰路に就いた。
自室には俺と女性の影が一つ。
「姉さん。あれは何だったの」
「強制的に祓ったんだろう。あの子、これから少しつらい目にあうだろうね」
影の状態で器用に感情を表現するのが本当に得意だ。姉さんは。
それになんか、質量を持った影にもなれると言うのだから驚きだ。あれか、二次元の投影された影から立体的な影になるのか。某探偵漫画の黒い人みたいに。
姉さん曰く、守ってい他者がいなくなったからこれから面倒なものが時々取り憑くことがあるだろうとのこと。
人は自分の価値感で物事を決める。良い霊も悪い霊も居ない総じて霊なのだ。化物は化物で人間は人間。
それでも、祓ってはいけない霊というのも存在する。
あの時、祓って貰っていたら。姉さんはどうなっていたのだろう。苦痛を感じながら煙のように消滅していったのかもしれない。
もし、姉さんが少なからず俺に悪影響を及ぼしているにしても、姉さんに
あんな風に消えてほしくない。影しか見たことない人外の存在でも、俺のたった一人の姉だから。
作者真苦楽
実際、祓って良いものと悪いものがると思いません?
すいません。怖くなくて、本当にすいません!
今度は真面目に書きます!
その場のノリで書くと駄作もいいとこでした!!ホントすいません!!