皆さんどうも。九十九 優です。
最近俺の姉はお料理にハマっているようで両親がいないときにはそれなりに便利に使っております。
そんな、姉なのですが今一つ料理の腕が上がらないのです。別に格段に不味い訳ではないのですが、なんかこう……味が薄いんですよね。
まぁいいとして、本題です。今回は割と最近の話をしたいと思います。2年前ぐらいですかね。姉が温泉巡りにハマったことがございまして、町内会ののバスにこっそり張り付いてただで温泉に行ったりで俺から離れた時があったんですよ。
そんな時ですかね、インターネットであの写真を見たのは……
~二年前・高校1年生~
一年生の後期も残り少し、春休み目前の2月後半、それは俺にとって素晴らしい三連休になるはずだった。
姉が旅行に行くのだ。家の中にブラコンがいるというのは思春期の男子からすれば死活問題に発展しかねない。それなのに家の姉は体が現世に存在しない分、扉や鍵といった概念が存在しない。つまり見られたくない、紳士の嗜みを見られる危険性がうちの姉の場合とんでもなく高い。そんな姉から三日も解放されるのだ!ここまで神様に感謝したのは初めてだ。
姉が出かけて早1時間!普段は傍に居てくれてとても頼もしい姉だが、常に傍に居られると困る。まぁ、そういうことだ。
俺がネタを探してネットを駆け巡っているとき、メールが来た。宛先は俺のPC。差出人は不明。内容はURL。それだけだ。
『好奇心は猫をも殺す』
よく言ったもんだ。好奇心に負けた当時の自分を呪いたい。
まぁ、上記の通りURLを開いた。架空請求用のエロサイトが精々だろうと踏んでいた。
だが実際はそんなものじゃなかった。そこに映し出されていたのは頭部が吹き飛んだ女の写真。だが俗に言うスナッフフィルムとは違う。頭部はぐちゃぐちゃだが、ただ普通に佇んでいる。そして背景がない。灰色でぐちゃぐちゃ背景。
「何だよこれ。キモッ」
すっかり萎えてしまった。なんの意図があってこんなURLを送ってきたのか。俺のアレを萎えさせるためか?クラスのやつか?俺の煩悩を邪魔した罪人は何としてでも罰を与えてやる!
何だかんだですっかり萎えてしまった俺はそのまま昼飯を食べに街をぶらつきゲーセンで時間を潰しお気に入りの本屋で今晩のアレのオカズを物色した。
*
その夜だ。朝からの煩悩をすっきりさせた後、そのまま睡魔に流されるまま眠った。
そしてそのまま夢を見た。ただの夢じゃない。これが今回の思い出話の胆になる部分だ。
俺は真っ暗闇の空間にいた。拘束されているみたいで体が動かない。夢というのは基本それが夢であることに気づかない。夢は昼間見た記憶を脳が休眠中に整理、再生しているという説がある。俺もこれが夢だとは目覚めてから気づいた。
パンッ!
何かがはじける音が聞こえた。人間の痛覚は体に危険が及んだ際のサイレンとして機能するが、その許容を超える痛みを感じた時、痛点がマヒして痛みを遮断する。そして熱と共に痛覚が反応し始める。
右足に激痛が走る。真っ赤な鮮血が吹き、腿の部分の肉がはじけ飛んでいて赤く染まった白色が飛び出ている。肉の半分以上が吹き飛んだ足は吊るされた濡れ雑巾の様にプラプラしている。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
あまりの激痛だった。今まで経験したことのない痛みだ。吹き飛んだ腿から下は感覚がない、人間の腿には大腿動脈がある。このまま行けばすぐに出血多量による血圧低下で意識喪失、数分後にはあの世行だろう。
パンッ!
今度は左足が吹き飛んだ。右足とほとんど同じ状態に吹き飛んだ。
「何……だよチクショウ!俺がなに……したんだよ」
俺は涙を堪えられなくて必死に喚いていた。叫ばなければ正気を保てない。何とか助かろうと上半身と足が少しの肉でつながっている下半身を芋虫の様にばたつかせる。
ブチッ!
どうやら繋がってた足が千切れた様だ。あの時は千切れようと関係なかった。どうせあれ以上悪くなりようがない。
何かが近づいてくるペタペタと素足で歩く音。そして頭に突き付けられた固くて冷たいもの。それが側頭部から喉仏にあてられた。
「姉さん……助け―」
ドンッ!
音と一緒に世界がグルグル回った。ようやく解放される。そして、地面にたたきつけられる。そこにあったのは足が千切れて頭の吹き飛んだ自分そして……そして……
その姿は写真の女みたいに飾られていた。ただ違うのは足がないだけだった。
**
翌朝目が覚めた時はベットに大量の汗が滲んでいた。それでも自分を褒めた。褒め称えた!あれだけの夢を見たのに日本地図を作成することなく夢から生還した!最後の最後でプライドの砦だけは守り切った。
しかし、問題は残されたままだ。今夜、いや、次睡眠をとった時も夢の中で得体のしれない何かにきっと殺される。それだけは確証が持てる。いままでの経験からなんとなくわかる。それに、悪夢を見たとはいえ眠っていたのだ。少なからずの疲労感は仕方ないとしても、ここまでの疲労感はあるはずがない。今の自分は徹夜明けの上、激しい運動を繰り返した後の様に疲れ切っていた。おかげさまで真っ直ぐ歩けないと来たもんだ。
俺はできる限りの事をやった。部屋の四方に盛り塩をして、酒をまいて、おぼつかない足取りで神社まで行ってお守りも買って、家の洗面所の鏡で姉さんを呼んでみた。……結局出てはくれなかったが。
そんな状態のまま昼間はカフェインをこれでもかって位補給し、夜はヘビメタからデスメタルまで好みじゃないハードコアな音楽を音量MAXでヘッドホンを通して聞きまくった。
しかし、人間というのは弱い生き物で眠気には勝てない。いつの間にか俺は眠りに落ちていた。そしてその日の夜も俺は殺された。しかも一回じゃない。十数回殺された。
内容はこうだ。水の溜まった風呂、死刑囚に行われる絞首刑、肺の圧迫、顔に袋を被せられる、生きたまま埋められる。他にも様々なやり方で窒息死させられた。リアルの苦痛の繰り返し、しかも正気の状態で行われるのだ。
自殺した人間はその時の痛み・苦痛・絶望感を永遠に苦しむと言うが、それと似たような感覚なのだろうか。残念ながら『死にたい』という気持ちがない分、幾分か苦痛に思える。
その日の朝はベットから起き上がれなかった。全身に力が入らない。意識は混濁し食欲どころか尿意すら感じない。瞬きするのも一苦労といった感じだ。
いつも目覚めが昼頃の俺はいくら寝てても両親が部屋に来ることはない。この日以上に早起きしていれば、と思った日はない。ま、改善されることは無かったが。
時計は9時40分を指していた。その日の午後には姉さんが帰ってくる。それまで耐えれば助かる。姉さんはいつでも俺を助けてくれた。
小学校の時のコックリさんの時だって、中学校時代の呪いの時も、俺が異世界に迷い込んだ時もいつも助けてくれた。不思議と両親との思い出や姉さんとの日々が頭をよぎる。これが俗に言う走馬灯なのだろうか。
脳は生まれてから全ての記憶を保存、記憶していて普段は思い出せないだけだという。話は本当だったみたいだ。今は一度しか触れたことのない姉の体温や旅行で行った旅館の隅々の情景まで思い出せる。そういえばあの時、姉さんは影だけの状態で男風呂にまでついて来たっけ。
ヒューヒューっと弱まる呼吸音が虚しく響く自室で瞼を開けることも困難になった俺は、薄れゆく意識の中で再生される走馬灯と自分の名前を叫ぶ姉さんの声と狂ったように笑う女の声とを聴いた気がした。
***
目が覚めると時は既に火曜日になっていた。両親は日曜日の夜から出張でいない。
疲労感は多少残っているもののベットから起き上がれるくらいには回復していた。そして、俺の来ていた寝間着は日曜日に来ていたものとは違うものになっていた。
「助かった……のかな」
俺は見知った天井を見上げ一人そう呟いた。どたばたと階段を駆け上がる音がして自室の扉がバタンと開いた。
そこには、薄手のワンピースにホットパンツ。腰まであるサラリとした黒髪を一本のポニーテールにまとめた姉さんが立っていた。そしてそのまま俺にダイブしてきた。さながら大泥棒の三代目の如く。
「優!よかった!よかった!!もう少しで手遅れになるところだった!!!」
姉さんはすごい力で俺を抱きしめて涙と鼻水をすすっている。
「姉さん!ギブ!!なんか出る!!目玉がポンッって飛び出そう!!!」
「アンタ、何がどうしてあんな奴に取り憑かれたの!普通に何処かの山中に封印されてても可笑しくない化物級の怨霊だったんだよ!」
それは俺自身が驚いた。化物級ってそりゃ素人同然の俺がいくら盛り塩をしても意味が有るはずないよな。
俺は姉さんに今までの全ての経緯を話した。ナニの部分は当然カットして。
「アンタさ、百物語の時の事覚えてる?あれと一緒。今や、ネットを介して様々な人の念が蔓延してる現代。いまじゃ、少し探せば死んだ人間の写真なんざたくさん出てくる。ネット上に写真を上げられた奴らは少なからず恨みの念を送る。だって殺された上見世物にされたんだもんね。それが蓄積してできた化物だね。うん、これでやっと正体がわかったよ。あれは怨念の塊だ。休日の期間耐えたよ。普通の奴ならすぐに取り殺されてもおかしくなかったよ」
現代、昔は闇レートで扱われてた戦争写真の残虐写真やスナッフフィルムは一部の大金持ちの娯楽から、一般の市民の手に届くまで広まった。それが恨みつらみを集めて化物になった、便利な世の中に潜む影。こうしている間にもまた誰かがあの、呪われたURLを開いているのかもしれない。
後に気づくのだが、あの時のメールも開いたURLの履歴もパソコン上には一切記録されてはいなかった。
そして不思議なことがもう一つ。……なんで姉はこちらの世界に具現化しているのだろう。
「いや、温泉で磨いたダイヤモンド級の肌を愛する優ちゃんに見てほしくてね♡」
ついでにもう一つ、影姉さんの私服は巫女服じゃなかったか?
「もう、とぼけちゃって。こう言うのが好きなんでしょ?優ちゃんは♡」
どこかで見た格好だとは思っていた……しかし、その選択肢はあり得ないと除外していた!
「見たな!俺の開いたページ履歴を見たな!!」
それは俺がネタに使ったアダルト動画の女優そっくりだった。
作者真苦楽
更新が遅れて申し訳ございません!
テストという名の化物との戦いの準備でその合間を縫って書いていたら遅くなってしまいました。
今回も誤字脱字などがあると思いますのでその際はコメントなどで教えてくださいませ。
さて、今回は物語史上初めて怨霊といったこの世のものではない化物を登場させていただきました。
近年、ネットや技術の発展に伴い、我々、一般人がかつて見ることは無かった情報にまで目を通す様になりました。スナッフフィルムもその一つでしょう。
私も2chや裏掲示板で類似する死体の画像を幾度と目にしております。
便利な世の中の光と影を書きたくこのようなお話にさせていただきました。ちなみに作中に影姉さんが言っていた百物語のお話は予告です。次回の話は百物語のお話にさせていただきます。
なお、作中の姉さんの格好はすべて優君の好みであり作者の性癖とは無関係です!もう一度言います。作者の性癖とは一切関係はございません!!ほ、本当だからね!
ネタを募集しています!切実に募集しています!話のネタでも兄弟に関するリクエストでもなんでもいいので随時募集中です!
「影姉シリーズではネタを募集しています!お願いです、皆さんのネタください!」(某緑コートの刑事風)
Twitter makura2501
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