家に帰ると友達が何故か私の家でくつろいでいた。
こいつ、どうやって人の家に上がったのか知らないがけどまるで我が家のように冷凍庫に入れてたアイスを食べながらテレビを見ている友人に呆れてものが言えなかった。
「あっ、おかえり」
「はぁーっ」
「どうしたの、ため息ついて」
「いや、なんでもない」
とりあえず着替えようと隣の部屋に入って、もう一度大きなため息をついた。
あのマイペース過ぎる友人は春という。男子のくせに一応これでも女の子のつもりの私の家で勝手にくつろいでるあたりでどれだけマイペースか解ってもらえただろう。自称不死身らしいが、私は全く信用して無い。
でも、今日の私は文句を言う気力すらないくらいに落ち込んでいた。今日はテストだったのだ。そして手応えは全く無し。
よし、明日からは勉強しよう。頑張って前向きに言い訳をしてスウェットに着替えた。
nextpage
扉を開くとなんか美味しそうな匂いがしてた。
「あかり、炒飯食べよっか」
「うん…」
春は、料理が上手い。
ダイニングテーブルに、炒飯と烏龍茶とサラダが並ぶ。春が席に着いたところでいただきますと言った。
「今日はどうしたの?」
とりあえず、家に来た理由を聞いてみた。
「特に何もないよ」
言うと思った。
「そういえば、こないだの文化祭のDVDを焼き増ししてもらったんだけど見る?」
春は興味無さそうにどうでもいいと呟いた。
そのあと私がお風呂に入ってる間に春が片付けをしてくれて、DVDを見だした頃にはもう8時ちょっと過ぎになってた。
私の学校では文化祭でステージ出演する人は大抵目立ちだがりのちょっとギャルな女の子か、運動部で活躍してる男の子だ。
テレビの中で楽しそうに漫才やダンスをしている同級生の姿は、まさに青春って感じだった。
nextpage
後半にさしかかったところで私は一つ変な事に気づいた。
さっきから気のせいだと思っていたが、一人映ってるはずの人がいない。まいちゃんといって、多分今回の文化祭で1番多くステージに上がった人が一度も映ってないのだ。
「ねぇ、春?」
私が声をかけようとした時、春がおっさん…呟いたが、私の耳には届かなかった。
「まいちゃんって確か1番多くステージに上がってたよね?」
「うん」
「おかしいな、まいちゃんだけ映ってない様な気がするんだけど私が見過ごしちゃったのかな?」
春は少し黙ってそれから怒ったような低い声で
「映ってないよ」
とだけ言った。
何故か春が怒った雰囲気を醸し出すので、私もそれ以上何も言わず眠いなーと思って春を見たらいつの間にか寝てたみたい。
適当に押し入れから毛布をだして掛けた。
そして私も適当に布団を敷いて寝た。
nextpage
朝、物音で目が覚めると、
春が朝ごはんを用意してた。
時計を見た7時24分…
学校には何時も遅刻のくせに、学校が無い時は早起きなんだなーとか思いながら
私は休みの日はお昼まで寝たいタイプなので布団を頭までかぶって二度寝の態勢に入る。
「あかり、二度寝するなら朝ごはん食べてから寝なさい」
「………………」
「寝たふりしても無駄だから」
「………ばか!!」
仕方なく起きた。あーもうやだやだ。
とりあえず布団をあげた。今日は二度寝はやめた。
nextpage
顔を洗ってきてテーブルに並んだ朝ごはんを見て、私の不機嫌も吹っ飛んだ。
サンドウィッチとサラダとコーンスープ。
春の前世はきっとお母さんだ。
「いただきます」
「どうぞ」
ごはんを食べながら春は言う。
「今日、まいちゃんの家に行ってみよっか」
「へ?」
すごく間抜けな声がでた。
私はやっと昨日のDVDの事を思い出した。
「嫌なら、いいけど」
「めんどくさい」
春はにいっと笑って「面白い事があるよ」と言ったから
私は「行く」と短い返事をした。
nextpage
ピーンポーン…
無機質な音が響く。
中からトントントンと足音が聞こえて、またガチャっと無機質な音がなった。
そーっと顔を出したのは少しやつれたまいちゃんだ。
春の顔を見て、「あっ、春くん。来てくれたんだね。」と笑顔になった。
その後私の顔を見て、「あかりちゃんも一緒なんだ。」と引きつった笑顔になった。
あれっ、私、まいちゃんに嫌われてるのかな…。
お邪魔しまーすと言って上がったまいちゃん家は一言で言うなら凄く片付いていた。
本当に、なに一つ無いくらい片付いていた。
と言うよりも、なに一つ無かった。
全てが必要最低限だった。
nextpage
リビングの横にある階段を登って行っていちばん奥の部屋の扉を開けた。きっとまいちゃんの部屋だろう。その部屋にも何もなかった。ベッドと机、壁にかかった制服、スクールバック、少し小さめのタンス。それだけの家具が八畳あまりのスペースに並べられてるから実際以上に広く感じた。
もっとぬいぐるみとか、化粧台とか女の子っぽい部屋を予想していた私はびっくりした。
nextpage
「ジュースとお菓子を持ってくるね」と言ってまいちゃんが下の階に向かおうとするから私は「そんな気を遣わないで」と言った。
隣で春が女ってめんどくせーみたいな顔をしてる。これが女子の家に遊びに行った時の定型文なのだ。
「もう用意してあるから、大丈夫」
「そう?じゃあお言葉に甘えるね」
一通り何時もの会話を済ませてまいちゃんが部屋をでる。
春に、「今日まいちゃんになんて言って来たの?」と聞いた。
「まいちゃんの事が気になるからちょっと明日話そう?って聞いたらいいよー♥︎って返信来たからじゃあ家行くねって言って来た」
………。
なんとなく、まいちゃんが私を見て引きつった笑顔になった理由がわかった。
しばらくしてまいちゃんが来た。手には春の好きなチーズケーキ。あぁ、なんかまいちゃんに凄く申し訳ない。
nextpage
その後は特に何をするでもなくグダグダして帰った。まいちゃんが帰り際に私に「春くんと話がしたいから少し時間作って」と言ったから私なりに頑張って春が靴を履いたのを見計らってトイレを借りて篭もった。そろそろかなーって思って玄関に向かう途中にまいちゃんのお父さんとすれ違った。
畑から帰って来た様な格好で鎌と大根をもった優しそうなおじちゃんで、こんにちは、と挨拶をすると、またね、と言った。
玄関に着くとまいちゃんが泣いていた。まいちゃんに何言葉か掛けて靴を履き、走って春に追いついた。
nextpage
「モテる男はつらいねー」
置いていかれた仕返しに思いっきり冷やかしてやった。
「そんなことないよ」
「結局、何でまいちゃんの家に遊びに行ったの?」
「んー、確かめるためかな」
「えっ、何を??」
「あかりは知らなくていい事。」
「………………あのさ、」
「ん?」
「なんで、まいちゃんの事ふったの?」
「もうすぐ死ぬ人には興味ないからだよ。」
春の、最後の言葉は車のせいで聞き取れなかった。
ただ、何か言いながら凄く寂しそうな笑顔で
その笑顔が私に向けられてたから、まいちゃんの気持ちが少しわかった気がした。
nextpage
何日かしてまいちゃんのお葬式が行われた。
春は私に話した。
「あかりはさ、まいちゃんの家に遊びに行った時鎌をもった田舎のおっさんみたいな人とすれ違わなかった?」
「あっ、うん」
「あれはね、死神なんだ。俺とあかりとまいちゃん三人でグダグダしてた時にまいちゃんの部屋でずっと俺らの事見ててさ
俺と目が合った時に、まいちゃんはね幸せに生きすぎたんだよって言ってた」
「………………」
「俺らはさ、幸せに生きたくて頑張ってるのにな。」
春に言いたい事がいっぱいあるのに、何も出てこなかった。
幸せに生きすぎた?そんなことあるわけない。みんな大なり小なりの不安や悩みを抱えて生きてるんだ。
まいちゃんのことを考えると涙が出た。
そして、まいちゃん以上に幸せに生きると心に誓った。
春はそんな心情を知ってか、少し笑った。
「本当はさあのDVDにも映ってたんだよ。
でも俺、認めたくなくてさ。」
だめだな、俺。と呟いた春も泣いてた。
作者KimisigurE
前回に引き続き誠に申し訳ないような作品になりました。ごめんなさいです。
まず、色々とまとまってなくてごめんなさいです。
次にストーリーが下手で、ごめんなさいです。
死神さんがなんか愛着あるので書きながら少し癒されました。