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これは当時俺が中学2年生の時、修学旅行先で体験した出来事だ。
その修学旅行は2泊3日。
初日は大阪のU○Jに行って、それから京都に向かった。
ある宿を拠点にして活動する形で、京都駅から少し近くの旅館に泊まったのを覚えている。
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古くも新しくも無く、むしろ小奇麗な旅館だった。
旅館に到着して少し経った後、教師から宿泊に関しての説明を受けた。
1階部屋は教職員
2階部屋は男子
3階部屋は女子
消灯は午後21時
消灯後の外出は禁止
教職員が各部屋を見回る (これは生徒が騒いで他の宿泊客に迷惑を掛けていないか確かめる為だろう)
学年は全部で4クラス。
1クラス30人程度で男女合わせて120人以上は居た。
男子と女子に分かれて1クラスに1部屋割り当てられた。
俺はクラスの友人と談笑しながら自分たちの部屋に向かった。
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旅館の廊下はよくある暗い赤色のフェルト生地で出来ている。
部屋の入口は引き戸で、廊下側と部屋側に引き戸があった。廊下側の引き戸は木製で全面が紙質のような素材で覆われている、昭和の造りをした家によく見られるものだった。
引き戸を開けると、靴やスリッパを脱ぐためのスペースがあり、四角い段差の出来た仕切りがあった。
その段差の上に部屋側の木製の引き戸がある。
部屋の隅には掛軸と壺が置いてあった。
床は畳だったため、夜はそこに布団を敷いて雑魚寝する形だった。
部屋に荷物を置き、食堂で学年全体で夕食を済ませる。
そこからは所謂自由時間ってやつで、旅館の近くを散策する奴らもいたが、当時の俺は身体が弱く、U○Jで遊んだ疲れが溜まっていたせいか、一足先に眠りに付いた。
初日は何も起こらなかったが、問題は2日目の夜に起こった。
その日は観光地に行き、教科書でしか見たことがなかった法隆寺や金閣寺を見たのを覚えている。
旅館に帰って風呂と夕食を済ませ、後は寝るだけ。俺は翌日の職業体験を楽しみにしていた。
昨晩は泥のように眠っていたせいで気付かなかったが、皆お楽しみだったらしい。
無理も無い。中学生のテンション、しかも修学旅行とくれば計り知れないものがあるだろう。
そんな俺もその日はテンションが高く、京都に慣れてきたせいか皆で騒いでいた。
枕投げ、プロレスごっこ、恋話、怖い話、そんな他愛もない遊びに興じていた。
それでも眠気というのは襲ってくるものだ。
時計を見ると午前0時を回っている。
談笑している内に、気付けば俺を含めて4人くらいしか起きていなかった。
それまでに何回か教師が部屋に見回りに来ていて、その度に皆で寝たふりをしてやり過ごしていたが、もう布団で熟睡している奴がほとんどだった。
俺はクラスで仲が良いAと引っ切り無しに喋っていた。
異変は午前2時を過ぎた頃に起きた。
結局起きているのは俺とAの2人だけになった。
俺たちは入口に一番近いところで隣合い、周りの奴らを起こさないようにコソコソ話していた。
話の区切りで何回か沈黙が生まれ、その度に部屋の時計の針が動く音が部屋に響き渡る。
話のネタが尽き、俺たちもそろそろ寝ようと言った時だった。
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廊下の方から何か音が聞こえる。
「今何か聞こえなかった?」
俺はAに聞いた。
「え? 別に」
「確かに聞こえたんだけどなぁ...」
「気のせいだろ」
Aがそう言った後、廊下からまた音が聞こえた
「今の、聞いたろ?」
「本当だ。何の音だろう」
その声はAにも聞こえたようだ
最初は耳を澄まして微かに聞こえる程度だったが、徐々に音の大きさが増しているようだった。
そこで俺はある事に気付いた。
「これ声じゃない?」
「先生の見回りかな」
「最後の見回りは23時だっただろ。さすがにもう来ないだろ」
「しーっ...! また聞こえる。女性の声かな...」
「...女子? 夜這いにでも来たか?」
「お前エロゲのやり過ぎ(笑)」
「やってねーよ(笑)」
「でも何で女子が2階にいるんだ? わざわざこの階に来る理由ある?」
「トイレでも探してんじゃねーの?」
「トイレは各階にあるって先生言ってたじゃん」
「あ、そっか」
「そもそも消灯後は外出禁でしょ。外に行きたくてもロビーに旅館の人がいるからバレるよ」
「夜遊びは無理ってことかぁー...」
こんな風に特に気にも留めずにAと会話していた。
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俺は気になって部屋側の引き戸を開け、廊下側の引き戸の近くで耳を澄まして聞いてみた。
「ひっく...ひっく...えっ...ひっく」
女性がすすり泣いているような声が聞こえた。
「おいA、なんか泣いてる声聞こえるぞ」
「マジで?」
Aも廊下側の引き戸に近付き耳を澄ませた。
「本当だ。何かあったんじゃね?」
「廊下に出て確認しよう」
そう言って廊下に出ようとした瞬間
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トンッ
硬いフェルト生地の廊下を一回足踏みしたような音が聞こえた。
俺とAは一瞬ビクッとなり、互いに顔を合わせた。
さっきまでずっと聞こえていた声はピタリと止んだ。
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すると、廊下の方から足音が聞こえてくる。
sound:14
トン......トン......トン......
一歩一歩ゆっくりと踏み締める音が聞こえる。
「どうしたんだ。急に声がしなくなったけど...」
「足音しか聞こえないな...」
俺とAは様子を伺う。
sound:14
トン......トン......トン......
足音が段々と近付いてくる
耳を澄ませて聞いていると、先程のすすり泣くような声が聞こえた。
しかし先程とはどこか違う。
俺はその異変に気付いた。
music:3
「ひっく...ふふふ......うふふふ...ひっく......ひひ......ひはは....」
女性のすすり泣く声の中に引き笑いをしているような声が聞こえる。
俺は鳥肌が立った。
Aも聞こえていたのか、顔がこわばっている。
段々と声と足音が大きくなっていき、もう耳を澄まさなくても音が聞こえる。
sound:14
トン...... サーッ......
sound:14
トン...... サーッ......
sound:14
トン...... サーッ......
足音に続いて布を引きずるような音が聞こえる。
この時点で俺たちは尋常じゃないと悟った。
俺とAは急いで部屋の中に戻り、部屋側の引き戸を閉めて布団に潜り込んだ。
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sound:14
トン...... サーッ......
「ふふふふふ」
sound:14
トン....... サーッ......
「あははははは」
すすり泣くような声は消え、可笑しく笑いながらこちらの部屋に向かっている。
「何なんだよあいつ...!」
「やばいって何なのあれ」
「おい他の奴起こせ!」
「起きないんだよ!!」
俺も他の奴を揺すったり声を掛けたりしたが、人形のように固まっている。
いくら呼んでも起きる気配が無い。
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ガタッ!
俺たちの顔から血の気が引いた。
廊下側の引き戸が開いた音だった。
スーッ
引き戸が土台と擦れる音がする。
勢いよく開けているのではなく、徐々に徐々に引き戸を開けていっている。
俺とAは布団を被って震えていた。
すると
「ふふふふふ.......」
あの女の声が前よりもハッキリと聞こえた。
もう既に廊下側の引き戸を開けて入ってきてる...!
俺は布団の中で震え続けた。
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一体どれくらい経っただろう。
3分か10分か、もしかしたら1分も経っていないかもしれない。
部屋の時計がカチコチと規則的に音を奏でている。
もしかしたら俺は眠っていたのかもしれない。
Aの方からも何も聞こえない。
さっき起きたことは夢だったのだろうか。
そんな事を考えている内に、俺は眠りに落ちた。
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朝起きると、俺はすぐにAに確かめた。
「昨日のこと覚えてるか?」
「あぁ...」
「そうだ! 皆にそのこと伝えようよ」
「さっき伝えたけど、信じてもらえないみたい」
気付けばクラスの奴ら数人が俺とAを見てニヤニヤしている。多分俺たちが何か企んで嘘を付いているとでも思っているのだろう。
「もう忘れよう... きっと夢でも見てたんだよ。俺たち夜更かしし過ぎたんだ」
Aは疲れ切った様子で言った。
腑に落ちなかったが、俺たちは旅館を出る準備をし、ロビーに集合した。
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俺はどうしても昨夜の事が忘れられず、一人で旅館の女将に話した。
「きっと何かの勘違いでしょう」
「でも友人も聞いたんです! 昨夜2階で..」
俺がそう言いかけると、冗談交じりに話していた女将が一瞬真顔になった。
しかし、またすぐ笑顔でこう言った。
「怖い思いをしたのは確かだとして、今は忘れて修学旅行を楽しんだ方がいいですよ。京都をたっぷり楽しんでくださいね」
そう言うと女将は行ってしまった。
思い違いなのかもしれない。
そう思うことにした。
Aは、もう気に留めていない様子でクラスの奴らと談笑していた。俺も輪に交ざろう。
班で旅館を出発し、職業体験へ。
その時、俺はこの辺一帯の地図を忘れたことに気付いた。多分部屋だろう。
俺は旅館に戻って部屋に取りに行った。
途中、あの赤い廊下を渡るのを躊躇ったが、皆を待たせているため急いだ。
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部屋に入ると、隅に地図が落ちていた。
地図を拾い、部屋を出ようとした時、ふと部屋の隅にある掛軸に目が移った。
「よくある話だけど、まさかね」
なんて思いながら掛軸を捲った。
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そこには所々日焼けしているお札が貼ってあった。
うろ覚えだが
「??封?呪?力??帰?無」
とグチャグチャに筆で書かれていたと思う (?の部分は読めなかった)。
俺は鳥肌が立った。
あの女の声を聞いた時のように。
作者Diablo616
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
今回が初投稿です。備忘録も兼ねて、自分の身の回りで起こった怪現象について投稿していきたいと思います。
全て実話なので、創作のようなドラマ的展開は期待出来ないと思います(笑)