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朝子はその日も元気がなく、
私が話しかけてもうなづく事しかなかった。
「ねぇ、いったいどうしたの?」
私が聞くと、朝子はなんでもない。と、
首をふるだけだった。
ぴしゃぴしゃと水たまりを踏んで歩きながら私はつまんないな、と俯く。
大体朝子はいつもうるさいぐらい明るい。
それが、急にこんな静かになるなんて、
きっと何かあるんだ、と思ってしまう。
「もうすぐ夏休みだねっ!」
今度は私が張り切った声で話しかけてみる。
が、
うん、と返事するだけだった。
そして急に顔色をパッと変えて、
朝子が言った。
「私の家で、お泊まり会しない!?」
お泊まり会なんてはじめてだった。
朝子とは幼馴染で昔からの付き合いだったが、親同士の中があまり良くなく、
お泊まり会がしたいなんて、考えたこともなかった。
「うん!する!!」
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夏休み。
私は朝子の家にいた。
もちろん、お泊まり会の為だった。
「私はこっちの壁側に布団敷いて寝るから、春香ちゃんは私のベッドで寝ていいよ」
この前とは打って変わって、
朝子はウキウキを顔に出していた。
朝子のベッドはクローゼットの前。
少し不気味なぐらいに薄汚れていた。
私が、「なにはいってるのー?」と、
クローゼットを開けようとすると、
「ダメッ!!!!」
朝子が叫んだ。
「ご、ごめん」
私は俯き加減にクローゼットから離れると
朝子の顔が青白くなっているのがわかった
「大丈夫??朝子」
「大丈夫…」
朝子はそう言ったあとは、普通に遊んで、
いつも通りだった。
そして夜。
私達は風呂に入ったあと、布団に潜り込んだ。
そこで朝子が変な事を言い出した。
「何があっても、絶対私の事嫌いにならないよね?」
私は、親友の契りでもするのかと思い、
「もちろん!!」
と答えた。
「じゃあもう私寝るね」
先に私は眠りについた。
けれど、カタカタという音に私は目を覚ました。
なんだろうと思い起き上がってみるも、
身体が全く動かない。
「え」
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私は朝子の言葉を思い出す。
なにがあってもぜったいわたしのこときらいにならないよね?
な に が あ っ て も ?
確かにおかしい。
何があっても、それで朝子を嫌いになるなんて変な考えだ。
この家に、何かある…
「誰か、いるの?」
カタカタカタカタ…
クローゼットから小さな物音が聞こえるのがわかった。
ガタガタガタガタガタガタ
その物音はだんだん大きくなって行く。
そして…
ガタンッ
何かが外れる音が聞こえ、
クローゼットのとびらがゆっくりと開いた。
「ヒッ…」
そこから、長い髪の女がゆっくりと出てきたのだ。
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「やだやだやだやだ!こないで!!!」
"それ"は、ゼェハァと呼吸をしながら
私に迫ってくる。
薄ら笑いを浮かべ、
ベッドの私の所までくると、
「シネ」
と低い声で言った。
私は恐怖で気絶しそうになる。
女は長い髪を私の顔にだらーんと垂らし、
その血まみれの顔を私の顔に近づける。
「キャァァァァァァァ!!!!」
私が叫ぶと、そこはいつも通りの私の部屋だった。
後での春香の解釈。
朝子という友達は数年前に死んでいて、
原因不明の死だった。
それは、一部のマニアによると、
幽霊による死だと言われていて、
幽霊になった朝子は春香になんらかの
縁を覚え、彼女の前に現れた。
そして、彼女に自分の同じ恐怖体験をさせるが、殺さずに家に返した。
作者花音