wallpaper:737
少女は問う。
「どうして、誰も名前を呼んでくれないの?」
少年は答えた。
「誰も君の名を知らないから。」
少女は問う。
「名前を教えたら、呼んでくれるの?」
少年は答えた。
「教えてくれたら。」
少女は考えた。
『私の名前何だっけ?』
少女は自分の名前が分からなかった。
忘れたのか、それとも最初から無かったのかも
覚えてはいない。
少年は問う。
「君の名前はなんだい?」
少女は答えた。
「分からない。」
それでも、少年は問う。
「君の名前を僕は知りたいんだ。」
少女は答えた。
「分からない。自分の名前も、自分が何者なのかも。」
少年は答えた。
「誰も自分が何者なのかわからないよ。
それと、もう一つ。なんで君、顔の半分が無いの?」
少女は答えた。
「え。顔が無い·····」
そして、少女は思い出した。自分が何者なのかを、
そして、自分の名を、
『そっか、私、ずっと昔に死んでたんだ。
それでも、この世に残って、こんな事してたんだ。
ただ、名前を思い出したくて。
そして、答えられ無かった人を食べてたんだ。』
少女は少年に言った。
「有り難う。名前、思い出したよ。」
少年は少女に聞いた。
「君の名前は?」
少女は答えた。
「繭だよ。」
少年は問いた。
「繭、君は名前を呼んで欲しかっただけなんだね。」
繭は答えた。
「ええ。まあ、もう未練も無いから消えちゃうけど。」
繭は少年に言った。
「名前を思い出させてくれて、有り難う。
君が思い出させてくれなかったら、君を食べる所だった。」
少年は繭に言った。
「それでも、君が名前を思い出した事に変わりは無いだろう。」
繭は答えた。
「そうね。最後にもう一度、名前を呼んでくれる?」
少年は言った。
「じゃあね、繭。」
繭は答えた。
「有り難う。君の名前は何て言うの?」
少年は答えた。
「ごめんね。僕に名前は無いんだ。」
繭は謝った。
「ごめんなさい。」
少年は答えた。
「いいんだ。もう慣れたから」
繭は答えた。
「そう。それじゃあね。」
少年は答えた。
「ああ、それじゃあね、繭。もう会う事は無いけど。」
········
繭が最後に何か言おうとしてたが、僕は聞き取れなかった。
でも、それで、いいんだ。
僕に名前は無い。
それでも、僕は別にいい。
繭の様に名前を忘れる事は無いから。
作者退会会員
勿論、フィクションです。
私はたまに、
名前を忘れる事が有りますが、皆さんは、どうですか?
『CALL MY NAME』の解釈は
『ただ、名前を呼んで欲しくて』
です。