ボーイスカウトをしている知人から聞いた話です。
毎年恒例の、夏の野営キャンプに行ったときのこと。
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昔のボーイスカウトはサバイバルで、自力でテントを張り、自力で火をおこさなければ、寝床もご飯もなしです。
みんな必死でピグを打ち、枯れ枝を集めました。
日中は、そんなことをしている間に時間が過ぎていきました。
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日が落ち、これまた毎年恒例の怖い話大会が始まります。
『お前ら、首吊りの木って知ってるか?
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人が自殺しようとして、ロープを枝に掛けるだろ?そこで首を吊る。
そのうち、重みで枝が折れちまう。
また別の人が、ロープを枝に掛ける。
折れる。
…そうやって、その木でたくさんの人が死んでいって、最後に一本、どうしてもロープを掛けることが出来ない高い枝が残る。
それが首吊りの木だ。』
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静まり返るボーイスカウトたち。
『はっはっは。
みんな、今から肝試しをするんだが、
コースの途中に首吊りの木がたくさんあるから気をつけろー。はっはっは。』
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肝試しのルールは、首吊りの木が生い茂る獣道を通り、
先にある沼の水をボーイスカウトの帽子に入れてくること。
1人目はものの10分で帰ってきた。
『早かったな!』
『下向いてダッシュしたら大丈夫だった。』
2人目の子も、意を決して出発した。
虫の音と自分の足音しか聞こえず、懐中電灯の光も頼りない。
しばらく行くと、先の話にあった首吊りの木が視界に入った。
男の子はうつむき、走り出した。
早く、早く…。
shake
『痛い!!』
木の根に足をとられ、思い切り転んでしまった。
恐怖と痛みで、いまにも泣き出したかったが、ここで泣くと仲間にバカにされる。
涙をこらえて起き上がろうと顔をあげると、目の前に人の足があった。
目の前に…?
男の子はゆっくりその足の主を見上げた。
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男の人だ。生気のない目をしている。
風が吹く度に、きぃきぃと音をたてて揺れた。
男の子は悲鳴を上げた。
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それからすぐに警察が来て、男の首吊り遺体は回収された。
隊長が数日前に下見に来たときは、遺体はなく、下見が終わった後に首を吊ったと思われる、と警察は話していた。
幸い、男の子は今も元気だそうだ。
ただ、もうその場所にキャンプに行くことはなかったという。
作者ほたて