とてもとても昔の話。
しかも不思議で訳のわからない話です。語り手の私でさえよくわかってないので、意味がわからなかったらごめんなさい。
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あるところに、ロッククライミングを趣味とする男性5人がいました。5人は仲が良く、週末になる度にみんなで新たな岩に挑戦していました。
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その日も、メンバーの一人の車に乗り込み、5人はロッククライミングの出来る山を目指しました。天気もよく、大変良いクライミング日和だったそうです。
山の上の方に、良い感じの傾斜の岩を発見した5人は、興奮気味に登り降りを繰り返し始めました。
岩を上るときに刺す棒(ピックと言うのでしょうか?)をしっかり岩に捩じ込みながら、クライミングを楽しんでいた5人ですが、一人がある提案をしました。
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『なぁ。Aの登る前に、ピックを少し緩めといてやろうぜ』
Aというのは、5人のリーダー的存在で、みんなから信頼はあったのですが、なにぶんジャイアン的なところがあり、少し疎まれてもいたのでした。たまにはギャフンと言わせたいのです。
そこで4人は、Aより先に登って、Aの直前に登る人がピックを緩めて行くことにしました。
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『A!みんなで岩の上で写真撮ろうぜ』
『おう。いいぜ』
5人は岩をよじ登り始めました。
4人はニヤニヤが止まりません。Aのビックリした顔を見て、みんなで笑ってやるのです。
4番目に登った人が、ピックを一本緩めました。準備万端です。
『Aも早く来いよー』
『いくいくー』
Aは岩を登り始めました。ゆっくりと、そのピックへ近づいていきます。
そして、そこへ足をかけました。
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誰も、悪気があったわけではありませんし、Aのことが嫌いな人なんていませんでした。
少し、悪戯がしたかったのです。
しかし
shake
ピックが抜けたせいで頭から落下したAには、言い訳にしか聞こえないでしょう。
慌てて上から覗きこんだ4人でしたが、Aは即死でした。
取り返しのつかないことをしてしまった…。
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気がつけばどっぷり日は暮れて、早く帰らないと遭難しかねない時刻になっていました。
携帯電話などない時代ですので、通報することも出来ません。
とりあえず4人は、Aの身体を平らで綺麗なところへ移動させ、手を合わせてから、Aの荷物を車に積み込み、麓の警察へ向かいました。
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車の中では誰も口を開かず、重苦しい時間が流れていました。
その沈黙を破ったのは、運転をしていた一人の言葉でした。
『あれ?ヒッチハイクか?』
前方に、学ランに下駄姿の少年(青年?)が、確かにヒッチハイクをしていました。
車を少年の側に止めて、窓を開けます。
『どうしたの?こんな時間に』
『○○駅はどこですか?』
○○というのは、今いるところの地名で、その駅というのは、山を降りたところにあります。
『ここ、真っ直ぐ下っていけば着くよ。乗せていってあげたいけど、ちょっと俺たち色々あって、車のなか散らかってて、乗る場所がないんだ。ごめんね。』
そう言ってまた車を走らせました。
しばらくして、4人はおかしな点に気付きました。
どうして山奥に、しかも夜に、学ランの少年がいるのか。戦時中じゃあるまいし、下駄というのも少し奇妙です。
おかしいな…と思っていたそのとき、運転手が悲鳴を上げました。
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先程の少年がヒッチハイクをして、何かを叫んでいます。
おそるおそる車を止めて、窓を開けました。
『○○駅はどこですか?』
『や、山の下!!』
そう叫ぶと、運転手は車を急発進させました。
『おい!なんだよあいつ!』
『車に追い付くとかあり得ないってってうわあ!』
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また前方に、少年が立って、ヒッチハイクをしていました。口をパクパクさせて、何かを叫んでいます。
『無視しろ無視!!』
『うわぁぁぁぁぁ!!』
少年の前をそのまま突っ切り、アクセルを全開にしました。
そのため、目の前が崖になっていることに気が付かず、
shake
車はそのまま落下してしまいました。
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車が落ちたその崖。
それはなぜか、Aの落ちた崖だったのです。
おしまい
作者ほたて