私が吹奏楽を始めたのは、中学生のときでした。
担当はフルートだったのですが、私が二年生のとき、同じフルートパートに、とても怖い話の好きな新入生が入部してきました。
仮にAちゃんとします。
私達は毎日毎日、部活そっちのけで怖い話をしていました。
私『Aちゃんー、怖い話ほかにないー?』
A『先輩本当に怖い話好きですね(笑)』
私『Aちゃんには負けるって。』
A『あはは…じゃあ、先輩には、まだ誰にも話したことのないお話をお聞かせしますよ。』
私『(☆∀☆)』
Aちゃんは、あんまり怖くないかもしれませんよ?と前置きして、話してくれました。
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私が小学校5年生のとき、林間合宿で泊まった寮みたいなとこで起きたことなんですけど。
とっても変な雰囲気のところでした。
全体的には、普通の山奥って感じで、林間合宿には丁度良いところだったんですけど、細かいところが変っていうか、不気味っていうか…。
具体的に?そうですね…。
私たちは、ご飯を食べるとことは別のところで寝ることになってたんですよ。離れみたいな感じですね。
で、寝る場所―B棟とします―の前に、木製の人形がおいてあって、木製の札を持ってたんですけど、
その札に、赤い文字で【ここが地球の中心です】って書かれてたんです。
…怖くはないでしょ?意味わかんないって感じで(笑)
でも、小学校5年生のテンションですから、みんなそういう不気味なものがあるだけで盛り上がってました。
その日の晩御飯食べてるときに、寮長さんからご挨拶がありました。内容は、怪我の無いようにとか、飯ごう炊さんのルールとか、ありきたりのことでした。
最後に、何か質問はあるかと聞かれて、バカな男子が手をあげて、
『ここって幽霊出ますかー?』
って聞いたんですよ。先生も男子の頭スパーンって叩いて、寮長さんに謝ったんです。
けどね、寮長さんは真面目に答えてくれたんです。
『出ます。といっても、ワシは見たことないんですけどね。B棟の前に、広場があるでしょ。あそこ、戦時中に亡くなった人たちが埋まってるんですよ。どうしてお墓に入れてやらなかったのか、ワシにもわからんのですが…。』
聞いた男子が一番ビビってましたけど(笑)
で、夜寝る時間になったんですけど、
女子はB棟の1階で、男子はB棟の2階で布団を敷きました。
男子は『絶対幽霊を見てやる!!』って、変な闘志燃やして、自販機でコーヒー買ってきてました。
女子は怖いし眠いしで、すぐ寝ました。
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Aちゃんはそこで話を区切りました。
A『先輩?どうしました?顔色悪いですよ?』
私『ん…いや大丈夫。とんでもなく怖いことに今気付いたけど、あとで言う。』
A『えー!!教えてくださいよ!!』
私『先に話聞かせて。最後までいったら教えるから。』
A『むー。約束ですよ?』
Aちゃんは少しむくれて話を再開しました。
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夜中の2時くらいでしたかね。2階がとんでもなく騒がしくなったんです。
女子はみんな起きちゃって…とうとうイライラが爆発しました。
本当は直接怒鳴りこみたかったんですが、先生から、異性の部屋には行くなって、きつーく言われてたので、広場に面した窓から、上に向かって怒鳴ることにしました。
私を含めた気の強い女子10人くらいで窓を開けて上を向くと、男子は懐中電灯を広場に向けて大声をあげてました。
女『こらーーーっ!男子っ!うるさーい!』
女『みんな起きちゃったじゃない!』
男子は、私たちの話なんか聞こえてないみたいで、パニックになってました。
男『お、お、おい!女子の方からは見えないのか!?』
女『はぁ!?』
男『広場見ろよ!』
広場のほうを見ましたが、なんにもありません。
女『は?何?』
男『懐中電灯の光の先見てみろよ!』
懐中電灯は、ちょうど広場の端っこ。B棟から一番遠い場所を照らしていました。
その光のなかに…
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男の子が立ってました。
私達が悲鳴をあげると、
shake
その男の子は、光源であるこちらに向かって走ってきました。
膝の関節とか逆に曲がってるし、腕の振り方が変だし…
そこで恐怖の限界点に達したのか、男子は懐中電灯を広場に放り出し、女子は窓もカーテンも閉めて、布団のなかで震えながら過ごしましたよ。
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次の日、寮長さんは、昨日バカな質問をした男子を『幽霊は見れたか?』とからかっていましたが、誰も笑うことはできませんでした。
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A『…お話はおしまいです。特にオチもないですし、そんなに怖くないかもしれないですけど、実際見たらやっぱり怖いですよ。幽霊って。』
私『……』
A『ささ。先輩の話も教えてくださいよ。』
私『一個確認していい?そこの寮って、○○寮って名前?』
A『そうです。先輩、知ってるんですか!?』
私『うん…私も林間合宿そこだったわ(笑)』
A『じゃあ、さっきの怖いことに気付いたって、それですか?』
私『うん…まぁ、そう。』
A『なーんだ。ビクビクして損しましたー!』
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私は、そんな感じでうやむやにしておき、怖い思いをしたAちゃんには、本当のことを言わずに終わりました。
私の○○寮での林間合宿で撮った、森とB棟を背景にした集合写真、
shake
その写真に、小さな顔があちこち写っていたことを。
作者ほたて