「お母さん、な-に-?」
まただ。
最近呼んでもないのに、息子がよく返事をする。
「え、なにが?呼んでないよ。」
「え?なんか話さなかった?」
「いや、話し掛けてないし、呼んでもないよ…。」
「そっかー。おかしいなー。」
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この一ヶ月こんな調子だ。
あるときは台所で食器を洗ってる時に、子供部屋から大きな声で返事をしてきた。
台所から子供部屋までは、居間、寝室が間に入って距離もあるし、食器を洗ってる方としては周りの音が聞こえづらくなるので、そもそもこちらから話し掛けはしない。
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またあるときは、実家に遊びに行き、私が兄や母と居間で世間話をしているときに、にこにこしながら「呼んだ?」と廊下からやってきた。
自宅にいるときはしょっちゅう返事をしてくるが、自宅以外で返事をしたことはなかったので驚いた。
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◇ ◇ ◇ ◇
ある日、私が仕事から帰宅すると仏壇が開いていた。
はめ込み型の仏壇で、私達が越してくる前には義母の両親の位牌が飾ってあったそうだ。
その位牌は今は義母宅にあり、今は仏壇の意味をなさない。
少し開いた仏壇には仏像なのか神様なのか、小さな像が安置されていた。
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私は拝んだこともないし、夫もとくに信仰してる様子はなかった。
誰が開けたのか分からない。
思い出してみればその頃、洗面所にあるセンサーライトが誰もいないのに反応する事が何度かあった。
電子レンジが勝手についていたりもした。
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◇ ◇ ◇ ◇
お盆の時期にはお墓参りや迎え火をたく習慣があると思うが、
私の両親は関東出身で、先祖代々の墓も関東にあり、人混みの嫌いな父はわざわざ混む時期に墓参りに出掛けることはなかった。
ちなみに今の住まいは東北6県。そこから関東というと、お墓参りも小旅行になってしまう。
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なので幼い頃から、お盆休みに墓参りをするから遊べないと言うクラスメイトが不思議でたまらなかった。
私にとっては、いまだに危うい習慣だ。
後日。
一念発起、嫁いできた身でまだ義両親のご先祖に挨拶をしてない私は、夜勤明けで眠いだろう夫を焚き付け、義母方の墓参りに連れて行ってもらうことにした。
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この平屋、夫の祖父の家ということは、どうやら義母の実家ということらしい。
焦って来てしまったから、お線香も買い忘れて、しかも近場も売り切れてしまっていた。
顔を見せに行き手を合わせるだけでも気持ちは伝わるだろうから、お線香は近いうちに私と息子で来ることにし、参らせていただいた。
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それから数日後、お線香を息子と半分こにして手を合わせてきた。
「寒くなる前にお墓のお掃除しにこようか?」
息子と約束した。
参らせてもらったお墓はそんなに掃除が行き届いてなかった。
手前だけ磨いてあり、墓石の奥の方は苔むしていた。
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◇ ◇ ◇ ◇
「そう言えば、お墓参り行ってから、かずきが返事することなくなったわ」
実家でアイスを食べながら母に話した。
「お盆の時期だったからね。孫に会いに来てたのかも。」
母と姉が9月生まれなので31種類のアイスからおまかせ12個を選んでもらい、プレゼントに持ってきた。
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自分も食べる私はちゃっかりものだと思う。
「お彼岸ももうすぐだから、そういう事もなくなるんじゃない?」
なるほどと思った。
うちの子は夫の家にとっては可愛い初孫。(私の実家にとっても初孫)
けれど、実は私の連れ子で夫の家系とは血の繋がりはない。
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ご先祖様はそわそわしてたのかもしれない。
長男が結婚したと思ったら同時に小学生の子持ちになったのだから。
それで、ちょくちょく様子を見に来たのかも知れない。
私の世間知らずを正しに来てくれたのかも知れない。
母はこうも言いました。
「あなたも認めてもらったんじゃない?」
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◇ ◇ ◇ ◇
夜勤明けの今朝、同じく夜勤明けの主人が
「電子レンジ使った?」と言いながらおにぎりを温めていた。
きっと電磁波?の影響でつくんだろうけど、
まだお墓の掃除へ行ってない私は少しドキリとした。
お墓といえば、墓石の横に小さなお地蔵さんの様な像があった。
それは何のためにそこにあるのか私は知らない。
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◇ ◇ ◇ ◇
お彼岸までもう少し。
作者粉粧楼
これと言った怖い話ではなくてスミマセン。。。
わが家のこのほんの少しの不可解な出来事は越してきた春からお盆が終わるころまで続きました。
9月に入るとおさまった気がします。
ただ、やはり息子が「この音なに?」と言ってきます。どんな音が聞くと、「ざっざって誰かが歩いてる音」「コンコンってノックみたいな音」など怯えた様子で教えてくれます。
怯えたいのは私です。
また何かあればお話したいと思います。駄文にお付き合いいただき有り難うございました。