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速水しずねちゃん行方不明事件②

中編4
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速水しずねちゃん行方不明事件②

今から三年前。

N県T町で、一人の少女、速水しずねちゃん(当時4歳)が行方不明になった。

白昼堂々、何の痕跡も残さずに、数十人の中から、親が目を離した僅か1分程の間に、少女は消えてしまった。

まさに、神隠し、である。

しずねちゃんは、いったいどこに消えてしまったのだろうか?

何かの事故に巻き込まれたのか?

それとも誰かに誘拐されたのだろうか?

今もって、その真相は不明である。

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ある廃工場の中、高熱を発する焼却炉の前に、本を読んでいる年配の男が一人いた。

本には、草か人か、不明瞭なイラストが書いてある。

男の胸元にも、それらと同じ意匠で風車のようなマークが書いてあった。

ふと、男が顔を上げ、こちらを見る。

「ん?、君は誰だい?

まあいいか。

速水しずねちゃん行方不明事件。

嫌な事件だったよね。

何を焼いているかって?

…人だよ。

名前は、『速水しずね』。

あなたが犯人か、だって?

うん、そうかもね

そう、あれは三年前…。

いや。気持ちの悪い話だから思い出したくない。

読み手の想像に任せるよ。

まぁ、誘い出して、林の中でリュックに詰めて、凍らして、解凍して、焼くだけだから、難しい話じゃなかった。

問題は…

どんな手段を用いたか、ではなく、

『なぜこんな事をしたか』だ。」

「…この子はね。

いや、この女はね、犯罪者なんだ。

幼い子が何をしたかって?

幼くなんかないよ。

本当は18歳。

『あちらの世界』から『こちらの世界』に逃げてきたんだ。

で、子供になりすましていたんだ。

だから、…僕が始末した。

これは見せしめだ。

いや。イメージ戦略かな?

『こちらの世界』への、ね。

こっちの世界は、楽でいい。

意味不明な事は、全部勝手に都市伝説にしてくれる。

これで、燃やした後に服でも着せて、『謎の行方不明事件の最後が焼死体』なんて、まさに都市伝説だ。

え? こちらの世界ってどういう事か、だって?

…異世界の存在って、聞いたことないかな。

多世界解釈。

パラレルワールド。

冗長化論。

なんでもいい 。

世界の隣には、もう一つ、世界があるんだよ。

僕は、そこの往来を管理する、管理人なんだ。

この女は、『あちらの世界』の禁忌を犯して、『こちらの世界』に来たんだ。

どこかの都市伝説とかで聞いたことないかな?

『異世界のおじさん』ってさ。

異世界に迷い込んだ人間を送り戻す役割を持つ人物。

あれが僕だよ。」

「なんだい、黙って。

え?なんでお前は捕まらないかって?

…あんた、僕を見た事ないかな?

僕はどこにでもいるんだ。

僕の姿、君はどう見える?

丸顔で。

禿げてて。

ニッコリと温和な表情を浮かべてる。

映画のマト◯ックスに出てくるエージェントスミスから、サングラスを外した感じかな。

そんな小男、どこにでもいる。

誰もが見た事あるけど、誰も知らない。

それが僕だよ。

だから、捕まらない。

君も僕の顔をどこかで見てるはずだ。

道を歩いている時。

駅で電車を待つ時。

車でのすれ違いに。

そして、夢の中で。

証拠?

君は、『This man』って、知ってる?

あれが、…僕だよ。

僕の最初の目撃情報をネット上に公開したのは、ニューヨークの精神科医だ。

その患者が、額が禿げ上がった男が夢に繰り返し姿をあらわすと相談した。

患者の証言をもとにモンタージュを制作したところ、他の患者も「この男(訳:This man)を見たことがある!」と証言したんだよ。

何か手がかりが得られるのでは?と思いネット上に情報を公開したところ、

3年間で2000件もの目撃証言を寄せられたんだ。

アメリカだけでなく、ロシア、、ドイツ、イタリア、フランス、インド、中国、ブラジル、アルゼンチン、ベネズエラなど国も地域も関係なく、報告が集まってきた。

同一の人物が他人同士の夢に出るのは何故か。

研究の結果、

ユングの心理分析。宗教論。既視感論。超能力。いろんな推論が展開された。

だけど、どれも大ハズレ。

僕は、世界の法則に外れた存在で、時や次元を歩き回れる。夢の中でも、お構いなし、さ。

どうしてこんな事を話したかって?

…君に僕の事を知っておいて欲しかったんだ。

今夜、

君の夢に現れるかもしれないからね。

この顔が。

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君は、

なんの罪も、

犯してないよね?

誰もいない空間に、男は喋りかけた。

「時々、思う。

どうして僕は、こんな顔で生まれたんだろう。」

Concrete
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あぁっ…なるほど、そう来ましたか…。
これは私だけかもしれませんが、あの男の顔を見ると本能的な恐怖を感じます。その恐怖が、yukiさんの手によって形を成しました。私にとってどストライクの怖い話…ありがとうございました。

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