【重要なお知らせ】「怖話」サービス終了のご案内

中編5
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全く記憶に無いんだが[異]

全く記憶に無いんだが[継続]の続きでございます。

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祖母の家に泊りに行った日から僕の身の回りで不可思議な事が起こるようになった。

祖母の家が原因なのか、祖母の家にいた"あの女"が何か関係しているのか定かではない。

友人にこのことを話しても「気のせい、寝不足だから、怖い話の読み過ぎ...etc」と言われるのが目にみえているのでこのサイトに書こうと思う。何があったのが、何が起こっているのか。

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まず、祖母の家から帰ってきたその日に起こった事を書こうと思う。

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自宅向かう前に酒とつまみを買おうと比較的近くにあるスーパーに寄った。

積まれた買い物カゴの中から一つを取る。

店内を見渡し酒コーナーを探していると、一人の老婆が視界に入った。

白髪と黒髪が混ざっており針金のような髪、ガリガリに痩せ腕は骨が浮いていた。

その老婆が僕の方を瞬きせずみていた。

自分の事を見ているのではなく他の場所を見ているのだ気のせいだと考えつつ老婆の方へ向かった。

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まだ目が合う まだ目があっている 気のせいか?気のせいではないのか?

老婆の顔をチラチラと見ながら近づいて行った。

老婆の真横を通る時に老婆の目を見ると

相手も此方をみていた。

もしかすると、僕が顔をみていたから向こうもみたのかもしれない。そう考えようと思った。

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「...ひっひっひっひっひぃい〜」

老婆は骨が浮く手を叩きながら僕の方を見て笑った。笑い 細められた目は黒目が店の蛍光灯で光っているように思え恐ろしい物に見えた。ニヤッと笑った口は所々隙間があり黄ばんだ歯と歯と隙間から除く赤い舌が覗いた。

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背中をぞわぞわと何かが走りそのあと寒気がした。

老婆の言葉を無視しその場を立ち去るが、後方で老婆はまだ笑ったまま立っていた。

店内にお客は居たが誰も老婆の方をみないし、おかしなものをみた時独特の表情をする者や話をする者は誰一人居なかった。

分かっていてもそれを表に出さないだけなのか?

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老婆の事は無かった事にしようと頭の中で自分の気分が楽しくなる事を考えた。

家に帰ったら借りていたDVDを観ようそれからお風呂を沸かして貰った入浴剤を入れてそれから...色々と考えているとお目当ての酒コーナーについた。

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色んな種類の酒が並んでいる中からいつも飲んでいるものを探す。なかなか見つからず暫く立ち尽くしていると後ろから誰かから声をかけられた。

「わぁ...お兄さん良い匂いですね。どこの香水使ってるんですか?」

見知らぬ男が声をかけてきた。

寝癖のついた髪によれよれの長袖、靴は左足だけ紐が通っていなかった。顔は前髪が汗か何かで張り付き、目は充血していて白目が多かった。

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普段なら無視するがこの時は相手の問いに答えた。

「香水ですか?...グッチのギルティーです...」

「へぇ...」

男が此方へ顔をぐっと寄せてきたのですぐに避け目の前にあったビールを掴みその場を離れた。

無駄に心臓がばくばくしていたのを覚えている。

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つまみも適当に選びレジへ向かい会計しスーパーを出た。

自宅までの夜道は不気味に感じいつも以上に暗く思えた。

念のため何度か後ろを振り向いたが何も居なかった。

帰り道は仕事の事を考えながら歩いた。

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自宅に着き靴を脱ぎ玄関に買い物袋を置いた。しっかり施錠されているか確認しリビングへ向かうとどこからかお線香の匂いがした。もちろん僕が部屋を開けている間誰も部屋に入っていないし、出かける前に線香を焚いていない。

気のせいだと考えリビングのドアを開ける。お馴染みの真っ暗なリビングがそこにあった。

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リビングの電気をつけた瞬間「ギェエエエエエー!」と叫び声のような音が聞こえた。それは部屋の中からではなく外からだと分かるのに数秒かかった。

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不気味な声のような音のようなものを聞いた瞬間身体が一瞬にして硬直し心臓が苦しくなった。

数秒経ったあとベランダへ駆け寄りドアを開け外を確認した。

僕の家から数メートル先の方で人が叫んでいるのが見えた。2回位叫んだ後どこかへ走り去って行った。それが女なのか男なのか暗くて確認できなかった。

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音の主を確認した後も心臓の拍動は落ち着かなかった。

こういう時もある 嫌なものが重なっただけだと考えながらベランダのドアを閉めしっかり施錠した。

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静まりかえったリビングが不気味さを漂わせていたのでテレビをつけ、ついでにビールを開けた。

一人暮らしは気楽で良いと思っていたがこの時は心細く感じた。

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誰かと話をして心を落ち着かせようと思い携帯の連絡先から適当に友人を選び電話をかけた。

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Prrrr....Prrrrr......Prrrr....

なかなか電話に出ない。

他の人に電話をかけようと思った..が

ガチャッ

電話に出た。

「もしもし?こんな時間に電話してごめん。実わさ...」

「もしもし?どうしたのこんな時間に。何かあったのかい?」

電話に出たのは祖母だった。

友達にかけたつもりが祖母に電話をかけてしまっていた。

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祖母は僕がこんな夜中に電話したのでとても心配していた。

祖母に自宅へ帰ってくるまでに何があったのかを話し、こんな時間に電話をかけた事を詫びた。

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「おばあちゃん家でも変な女をみたり家に帰る途中で不気味な人に遭遇したけど、これらは偶然だよね?気にする事ないよね。」

「気のせいだと思うけどねぇ...東京は物騒だから誰かに刺されたりしないよう気をつけるんだよ?」

「刺されたりしないよ大丈夫だ。また何かあったら電話するわ!」

"誰かに刺される"という言葉を聞いたら二年前の"ストーカー女"の顔が頭をよぎった。

まだ"あの件"は解決していない。

「怪しい人には気をつけるんだよ。守るものが無い人間は一番怖いんだからね。」

そう言うと祖母は電話をきった。

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再び部屋が静かになったが先程のような不安感は消えていた。

テレビの電源をつけ買ったビールの缶を開け、グラスを取りにキッチンへ向かった。

グラスが並べられた棚の中から適当に選ぶ。振り返り流しに目をやると一つグラスが置いてあった。

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洗い忘れたのかと思い置かれたグラスに手に取る。よく見ると縁に何かついている。

「なんだこれ.....」

真っ赤な口紅だった。

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続く

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