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中編4
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右肩の上には

友人の姉に、俗に言う《見える人》が居る。

名前は《のり塩》

通称《のり姉》

彼女は、人を見るのと同じ様に幽霊を見、山や川を見るのと同じ様に妖怪変化を見る。

拙くは有るが、彼女の話をしてみよう。

強く、脆く、優しく、残酷で、

そして、心の底まで腐敗してしまった彼女の話を。

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~~~

ある日、のり姉とスーパーで買い物をしていた時の事だ。

一人の人物がのり姉に話し掛けて来た。

「のり塩!久し振りだな!!」

話し掛けて来た相手は、男だった。

黒く短めの黒髪と、こざっぱりした服装。更には良い笑顔。

全身で爽やかオーラを発している様な、そんな奴だった。

・・・・・・正直な所、僕の苦手なタイプだ。

抑、女性が男と二人で買い物をしていると言う状況の中で、そんな平然と話し掛けに行ける神経が理解出来ない。

「弟さんだよね?」

あ、単に子供扱いなだけだったのか。此れが兄や友人ならば、こんな事は無かったのだろう。ちゃんと彼氏として認識されていた筈だ。

いや、別に、のり姉の彼氏になんて認識されたく無いけど。

其れでも何か苛つく。

僕は曖昧に頷き、一礼した後に、そっと距離を置いた。

男はのり姉の方を向き、親しげに話し掛ける。

のり姉は、苦虫を噛み潰した様な顔で答えた。

「元気だった?高校以来だと思ったけど。」

「其の高校も、途中からだけどね。三年になっていきなり転校して来たんだから。」

「確かにそうだけどな。あ、皆元気?あんまり会ってないから、分かんなくて。」

「知らない。私がそんな事知ってる筈も無い。」

「のり塩、そう言う所は変わらないな。じゃあさ、のり塩が仲良くしてた連中は?」

「・・・・・・元気、なんじゃない。」

「そっか。あ、そうそう。三村の奴居ただろ?」

「興味無い。」

「相変わらずの無関心っぷりだなー。のり塩、昔からそんなんじゃ無かったか?」

「覚えてない。」

「結婚したんだってよ。一年先輩だった田辺と。」

「そう。」

「出来ちゃった婚だってさ。其れにしたって早いよな。再来月にはもう産まれるって。」

「・・・・・・。」

「あと、隣のクラスに居た山崎。覚えてるか?彼奴は・・・」

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「ねえ。」

唐突にのり姉が強い声を発した。

男は一瞬肩を震わせ、黙った。

のり姉が逸らしていた目線を合わせ、一歩だけ男に近付いた。

「ハルナちゃんは、元気?」

男の顔が、血の気を抜いた様に白くなる。

のり姉は更に続けた。

「知ってるんでしょう?」

距離を少しだけ縮め、のり姉はニヤリと笑う。

「彼女の中にはね、貴方のーーーーー」

「黙れ!!折角話し掛けてやったのに、変な事言いやがって!!!」

男は後退りをしながら叫んだ。

然し、そんな大声程度でのり姉が止まる筈も無い。

「此方こそ、折角教えてあげようとしてるんだから、逃げないでよ。」

のり姉の顔から、フッと笑いが消えた。

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「ねえ、最近右の肩が妙に重たくない?」

「五月蝿い!!」

ブン、と空気の動く音がした。

男がのり姉に向かって腕を降り下ろしたのだ。

「お前に何が分かる!!仕方無かったんだよ!!」

「責任は彼女だけの物?散々弄んで、一方的に捨てるのが本当に最善策だった?するべき事が他にも、有ったんじゃない?」

「じゃあどうしろって?!産ませろってか?!高校生だぞ!!出来る訳無いだろ!!!」

「違う。そんな事は誰も言ってない。貴方は、きちんと悼み、ちゃんと受け止めるべきだった。貴方のすべき事は、懺悔と贖罪だった。」

のり姉がスッと腕を上げ、男の肩を指差す。

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「誰に対する物かは、自分で考えなさいね。」

哀れむ様な表情で、のり姉はゆっくりと瞬きをした。

「多分、もう遅いけど。」

そして、クルリと僕の方を向き、笑った。

「・・・・・・鶏肉、まだ買ってなかったね。何処だっけ?」

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~~~

帰り道、僕は彼女に言った。

「さっきの・・・」

のり姉は恥ずかしそうに頭を掻いた。

「ああ。あんまり説教臭いのは得意じゃないんだけど。」

そして、何処か遠い目をして笑う。

「アレはもう、駄目だろうなぁ。ちゃんと供養してあげても。自業自得だけどね。」

僕は少しだけ苦々しい思いで聞いた。

「水子・・・・・・ですか。」

「・・・ん?」

のり姉は、一瞬不思議そうな顔をした後に、ポツリと答えた。

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「ううん。居たのは《お母さん》の方。あれは、多分、生き霊とかじゃない。」

彼奴の右肩で、笑ってたよ。

Concrete
コメント怖い
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紫さんへ
コメントありがとうございます。

そう言って頂けると嬉しいです。
まぁ、僕の手柄ではありませんが(笑)

そうですね。
・・・あの時、もし伝えていたら、どんな反応をしたんでしょうね。

返信

こんばんは☆紫です(*^-^*)

ゾクッときました!めっちゃ怖かったです(T_T)
最後の一言、本人にも聞かせたかったですね。

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