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「俺の家にはさ、七不思議があるんよな」
俺の友人の家にお邪魔して、与太話をしていたのだが、唐突にそんな事を言ったのは
この家の住人であり、僕の友人で、自称であるが霊能者を語る男だ。
「七不思議って、学校とか病院とかであるやつ?」
「そそ、まあ、俺が知ってるのでは5つしかないけどな」
「それ七不思議じゃなくない?」
笑い飛ばすと「まあそう言わずに」と話を続けた。
「一つは『鏡』二つは『足音』三つ目は『扉』四つ目は『白い影』五つ目は『押し入れ』」
七不思議にしてはいたって普通の題名だな…なんて拍子抜けした。
「今お前が体験できるものといえば…そうだな、二つ目の『足音』だな」
体験出来るのか!?
「んじゃ、俺の部屋行って待っとけ、俺も後で行く」
二階に上がり、階段を上るいたって普通の家だ、こんな家にそんな階段があるのだと言われても、なんのリアリティを感じることもできないでいた。
奴の部屋は二階の三つあるうちの真ん中の扉だ。
ドアノブに手を伸ばした瞬間、背中を何かが這うような感覚が走る。
まるで後ろに何かが佇んでいる様な、そんな気配。
扉を開け、部屋に飛び込み扉を閉める。
一階から何やら友人のドタドタという慌ただしいような気配を感じ、少し安堵する。
部屋の間取りは、入って右手にクローゼット、ソファがあり、正面には勉強机がこちら向きに配置されている、例えるならば、校長室の様な雰囲気だ。
ドタドタドタドタ
一階から感じられる慌ただしい気配の所為でソワソワしながらソファに腰掛ける。
今は真昼間だ、カーテンを開け放たれた窓から光が差し込み、部屋の中を明るく包んでいる。
ドタドタ、ドタドタドタドタ
おかしいなと思い出したのはそんな慌ただしい気配を感じている時だった。
その気配が僕の真上から聞こえているのだ。
ほぼ、間違いなく。
無断であるが、クローゼットを開け放つ、上には屋根裏に続く穴があるのだ。
普段はベニヤ板で閉じられている…筈だったのだが、そこにあったのは暗い闇と、人間の頭だった。
中年くらいだろうか、こちらを見やり、ニタリと嫌な笑みを浮かべている。
部屋の空気圧が変化し、少し風を感じる。
右を振り向くと友人がいつもの口元を歪めた表情で立っていた。
「見たか?」
クローゼットの穴には先ほどの頭は無く、ベニヤ板で閉じられている。
見た、と言うのはあの頭のことなのだろう。
「ドタドタうるさいやろ?
夜寝れんから寝るときはイヤフォンつけるねんよ」
友人は笑っているが、僕は笑えない。
ちなみに、彼の部屋の天井はベニヤ板一枚に壁紙が貼ってあるだけで、しかも、屋根裏には人間が入り込めるスペースなど無いらしい、ましてや中年の男などが…。
僕が見たのは一体なんだったのだろうか?
作者慢心亮
屋根裏