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中編3
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「霊なんて何処にでもいるもんだ。

そこにもいてここにもいて、彼処にもいる。

俺やお前に見えない連中も居るんだろう。

そんな連中を見ることをできるやつを世間ではなんていうと思う?

…『キチガイ』って言われるんだよ。

不謹慎だが、これが事実だ。

よく気が触れてるだとか、狂ってるだとか言われてる奴の中には、そんな誰にも感知できないような微弱な力の霊が人間と同じように感じられるんだ。

分かるか?

人間と霊の区別ができなくなるんだ。

そこに居るのがこの世の者なのか、あの世の者なのか分からないんだ。

…俺はそんな風にはなりたくないがな…。

それほど強い霊感を持つ人間に限って早死にする、もしくは、自害する…。

俺には自害する人間の気持ちなんてわからないがね。」

高校二年生の冬

私には師匠がいた。

霊感の強い人で、たまにおかしなことも言う、変わった人だった。

世間体に当てはめると十二分に変態の域に入っていただろう。

私が師匠と呼ぶのは、ただ霊感が強いから…、という理由の他に、自分の道を見据えて真っ直ぐ歩いている、そんな強い意志に敬意を示していたからだったのかもしれない。

来年に受験を控え、勉強を重ねているようなそんな日々を送っていた私に、彼は一言、旅行でもしようか、と提案してきた。

もちろん、二人旅ではない。

師匠の友人であるところの私の兄と、私、師匠でだ。

即答でOKし、続けて何処へ行くのか聞くと、内緒と返した。

こういう時の師匠は良からぬことを考えている、ただ、その良からぬことの楽しみというものに味を占めていた私は、少しワクワクしてしまっていたのだった。

その提案の1ヶ月後、私は近畿の中でも有数のある廃村に来ていた。

師匠、私、兄、そして、案内人で、地元住人である沢崎と名乗る男性という顔あわせである。

「この辺は戦後から廃村やからな」

沢崎さんが説明してくれる。

彼も霊的な研究をしているのだそうだ。

「こういう廃村だとか、廃墟だとかには霊が集まりやすい傾向があるからなー」

師匠が独り言のように語る。

時刻も夕暮れだ。

「そろそろ黄昏や、戻った方がええけど、どうする?」

沢崎さんが問いかけるが、師匠は首を横に振り。

「これからよ」

と呟く。

ちなみに私は早く帰りたくてウズウズしていたのだが、師匠のその言葉を聞き肩を落とした。

「ちょっと師匠、暗なったら帰れんくなるやん?」

そう提案するが、今の師匠には正に馬耳東風といった具合で聴く耳を持たない。

異変が起きだしたのは日も落ちきり、チラチラと雪がちらつき始めた頃だ。

辺りの空気が冷え始めたので、マフラーを締め直す。

「これはあかん…」

行ったのは沢崎さんだ。

何かに怯えるような表情を見せている。

師匠が歩み寄る。

「何人くらいだ?」

「分からん、廃屋の一軒一軒に何人も」

それを聞いた時、私は無性に泣きたくなった。

そんなヤバイ場所ならもっと早くに帰るべきだった!

「後悔先に立たずやな」

兄が肩を叩く、兄は霊の存在を根本から否定するような人間だ。

「俺には何も感じられんな」

師匠が呟く。

その後、師匠は一人で村の奥に入って行き、10分ほど経ったのちに戻ってきた。

「帰るか」

そういった師匠の表情は、無そのものだったように感じた。

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