此れはウタバコ・3の続きだ。
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・・・・・・・・・。
「エキドナ?」
「ラミアかも。」
「いや、和顔だった。西洋系じゃなく。」
「濡れ女とかどうかな。」
「半人半蛇だったから、違うと思います。」
「磯姫は?」
「それ濡れ女の海版だろ。」
「じゃ、ナーガ?」
「ナーガは雄だった気がする。其れに、さっきも言ったけど、アレは多分日本人。」
薄塩とピザポが見たと言う化け物。
既存の妖怪で居そうだと思ったのだが、中々に当て嵌まる奴が見付からない。
「まさか、姦姦蛇螺とかじゃないだろうな。」
僕がそう言うと、薄塩は呆れた様に答えた。
「アレは手が六本有る筈だし、大体、何でそんな有名処が斉藤の背中に付いてんだよ。」
「やっぱり違ったか・・・。」
予想全滅だ。
僕とのり姉はガックリと肩を落とした。
慌ててピザポがフォローを入れる。
「でも、ビジュアル面では一番近いかも。手が二本になれば、あんな感じじゃないかな。」
「気休めは止せよ。」
「本当だって。本物を見た事無いから、詳しくはよく分からないけど、イラストとかで見たのはそんな感じだった。・・・さっき見たのは、服着てたけど。」
「だとしても、其れは姦姦蛇螺じゃないだろ。」
「まぁ・・・。其れはそうだけど。」
僕の一言で、ピザポが黙り込んだ。
愈、行き詰まったか・・・。
僕は大きな溜め息を吐いた。
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・・・・・・・・・。
薄塩が頬をポリポリと掻きながら独りごちた。
「普通に蛇女なのか・・・?」
「其れにしたって、不確定要素が多過ぎるよ。」
のり姉が眉間に皺を寄せながら呟く。
「其の蛇女ちゃん、コンソメ君に付いて来たって言ってたよね。けど、家に着いたら帰って行った・・・。ターゲットはあくまでT君なのか、其れとも単に、コンソメ君に付け入る隙が無かったから戻って行ったのか・・・。込められてるのが好意か悪意かも微妙だなぁ・・・。・・・薄塩。」
「何だよ。」
「其の子の表情、見えた?」
「いや。あんまり。下半身に目が行ってた。」
「使えない愚弟だな、もう!此の助平!!」
のり姉が口元を尖らせ、今度はピザポに向かって同じ質問をする。
「ピザポ君は見た?」
「はい。・・・と言っても、俺も下半身に目が行ってて、あまり良くは見てません。」
のり姉が、今度は頬をプッと膨らませた。
「どいつもこいつも助平ばっかり!!」
薄塩とピザポが、声を被らせながら異を唱えた。
「ちげーよ。」「す、スケベじゃないです。」
「何が違うってーのよー。」
のり姉の頬が更に膨らむ。
ピザポは何処か慌てた様子で、其の姿は寧ろ若干怪しかった。
「全然別物だったんです。」
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・・・・・・。
俺が下半身に目が行ったのは、決してエロい事を考えた訳じゃなくて、確かに蛇だったから何も履いて無かったけど、本当、流石に蛇には・・・何て言うか・・・。
兎も角、エロい感じで見てた訳じゃ無いんです。はい。
で、じゃあどうしてかって言うと、多分薄塩も同じ理由だと思うんですけど、何か・・・えっと、上半身と、全く違かったからって言うか・・・。
「其れは、上半身が人間なのに、下半身が蛇だったから・・・って事?」
・・・ん、あ、其れは違います。
確かに其れも大きな違いだったですし、驚いたんですけど、そうじゃなくて。
・・・何か、酷い物沢山見せられて、麻痺して来ちゃったのかな。俺。
其の蛇女、下半身だけズタボロだったんです。
血塗れのぐちゃぐちゃで、足が無いから、辛うじて蛇って判るみたいな・・・。
・・・あ、上半身は普通の女の人でした。着物着てて、髪は普通のロング・・・みたいで。いや、生え際とかはよく見てないんですけど、下半身にまで黒髪が垂れていたので。
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・・・・・・・・・。
「・・・だよな?」
ピザポは其処まで一気に話して、薄塩に同意を求めた。
薄塩は小さく頷いた。
「おお。俺は其処まで見てなかったけどな。」
のり姉が尖らせた口から、勢い良く息を吐き出した。
「本当に・・・こんがらがってるなぁ。元々別物のパターンか・・・?」
こめかみをグリグリと押しながら、のり姉が頭を揺らした。
更に頬を軽く叩く。
ぺチぺチという間の抜けた音が、部屋に木霊した。
「で、表情は?朧気でも良いから。」
「普通でした。」
「はぁ?」
「暗い顔では無かったです。普通の顔でした。詳しくは・・・分からなかったですけど。」
「成る程ね・・・・・・。」
のり姉は其処から暫く、のり姉にあるまじき真面目な顔で悩んでいた。
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・・・・・・・・・。
ふと、のり姉が呟いた。
「T君・・・今は、佐藤君だっけ。」
「斉藤です。」
「そうそう。斉藤君。抑、どうしてそんな事になっちゃってるんだろ?」
「あ・・・・・・。そうだ。」
其の時まですっかりと忘れて居たのだが、僕はあの小箱について、まだ話して無かった。
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・・・・・・・・・。
「~と言う訳で、多分・・・其の箱が関係してるんじゃないかなと。」
「成る程ね。箱か・・・。」
のり姉は僕の話を聞くと、益々不思議そうな顔になった。
「歌う箱と蛇女・・・・・・。そんな妖怪、居たかな。」
「あ、いえ、必ずしも関係が有るとは言えないと思います。あの斉藤の事ですから、別件で引っ付けただけかも知れません。」
「そっか。・・・あ、そうそう此れは最終確認ね。」
のり姉が僕の目の前に顔を寄せた。
「助けるの?T君の事。」
「・・・・・・はい。」
突然の質問だったが、僕は大きく頷いた。
のり姉は、何やら満足そうに立ち上がった。
薄塩とピザポは、困った様な笑顔を浮かべた。
「ま、仕方無いな。そうなると思ってた。」
「もう・・・コンちゃん、本当にしょうがないなぁ。」
何だかんだ言って、助けてくれるらしい。
のり姉がニヤリと口元を歪めた。
「ふーん。だったら取り敢えずは・・・」
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・・・・・・・・・。
次の日。
「・・・斉藤君。」
「ん?」
「昨日は・・・」
「いや、こっちこそ無理矢理ごめんな。」
「うん。・・・で、今更かも知れないけど、昨日話してくれた小箱、気になるし、見たくなって。・・・・・・今週の土日、大丈夫?」
「あー・・・土曜は無理かも。日曜かな。あ、来れる?道分かんないなら、一旦学校に集合してから行こうぜ。」
「・・・・・・うん。有り難う。」
決戦は、日曜日。
作者紺野-2
どうも。紺野です。
取り敢えず少しは進展出来たかと思います。
今日で休みが終わるので、少し早めに眠ります。
お休みなさい。