これは東京の就職先の会社で体験した話です。
ある日、残業でおそくなり終電を逃してしまった僕はタクシー代をケチり、会社に戻って寝ることにした。
最終退場者だった為、会社には誰もおらずビルは真っ暗だった。
鍵を開けビルに入りエレベーターに乗り込むと迷わず五階のボタンを押した。
当時、僕の働いていたのはその会社が丸ごと借りあげている五階建ての小さなビルだった。
一階には受付と応接室、そして社長室。
二階、三階は僕たちの働いているフロア。
四階はマシン室。
五階には会議室と女性更衣室。そして脇には休憩用のソファが置いてあった。
僕はこのソファで仮眠することにした。
スーツの上着だけ脱いで横になる。
五階の蛍光灯は点けたままにした。
どれくらい経っただろう。五階に乗り捨てていたエレベーターが急に一階に降りていった。
うん?他の誰かも終電逃したのかな?
僕は同じように帰れなくなった同僚が会社をホテル代わりに泊まりに来たのかと思った。
その時、僕は趣味の悪い悪戯を思いついた。
そうだ、脅かしてやれ!
僕は上ってくる同僚を脅かすため、急いで部屋の電気を消しエレベーターの脇に隠れた。
泊まるならきっと五階にくるはずだから。
間もなくエレベーターは一階につき、エレベーターから「一階です。」という声が静かなビルに響いた。
そして確かに誰かがエレベーターに乗り込んだ。
そしてエレベーターは、「ドアが閉まります」と発した。
ドキドキ ワクワク
いったい誰が登ってきてるのかな?
しかしそのエレベーター、三階で止まってしまった。
うん? 三階に誰かいると思ったのかな? まぁ、誰もいないのだからすぐに五階にあがってくるだろう。
そう思った僕はそのまま真っ暗闇の五階に待機していた。
しかし、待てども、待てどもエレベーターは登ってこない。
とうとう脅かすことを諦めた僕は自ら三階に降りていくことにした。
エレベーターを五階に呼び、三階のボタンを押す。
エレベーターが静かなビルをスーッと降りていき、三階に到着した。
そして三階のドアが開いた時、
三階のフロアもまた暗闇だった。
えっ!? あっ、逆に僕を脅かす気か~
僕は誰かが隠れていると思い、
「いるのはわかってるよ~」
と可能な限り明るい声で言い、電気を付け、そして隅々まで探した。
しかし誰もいない。。。。。
僕は誰もいないビルで「ひとりかくれんぼ」していたのか。。。背筋がゾっとした。
僕は朝が来るまで一睡もできなかった。
朝、他の社員が出社してきた。
僕がやっと心細さから解放されたのもつかの間、社長から社員全員に話があるとの事で会議室に集められた。
社長「昨晩、○○くんのお母様から私に連絡がありました。○○くんの携帯にお客様からの急な調査依頼があり、○○君は自宅を出て会社に向かったそうですが、既にだいぶお酒を飲んでいたらしく、来る途中、ホームから転落し電車にはねられたそうです。残念ながら○○くんは病院に運ばれた時はすでに亡くなっていたとの事です。」
作者SANTA