ある日、帰宅するとポストに一通のハガキが入っていた。
差出人は小学生時代の友人の正樹からだった。
来週の金曜日に同窓会を行うから出席しないかという内容だった。
参加者は三名のみらしい。
僕は小学校卒業と同時に他県に引っ越した為、あんなに仲の良かった彼とは疎遠になっていた。
懐かしさのあまり、早速、正樹に電話をしようと思ったが、当たり前だが彼の携帯番号がわかるはずもなく、仕方がないので彼の自宅の電話番号を調べ、彼の母親に電話をした。
久しぶりに電話した為、最初は誰だかわからず不安げだったが、僕とわかると急に声のトーンが代わり、懐かしそうに昔の話をはじめた。
しばらくして彼の母親との会話が落ち着いたころ、僕は本題を切り出した。
「正樹くんから同窓会のハガキをもらったんですが連絡先がわからなくて。彼の携帯番号教えてもらっていいですか?」
すると彼の母親は、しばらく沈黙したあと、
「ほんとうに正樹からハガキが来たの? そんなはずはないんだけど。。。」
と怪訝そうに僕に尋ねた。
「ええ、そうです。今の住所書いてなかったのでご自宅に電話させてもらいました。正樹くんのほかには英子ちゃんと、和則くんも来るそうです。」
そう答えると、母親は静かにこう告げた。
「正樹はね、中学一年の時に学校に行ったきり戻らずそのまま行方不明なの。。。もし本当に正樹からだったら連絡するようにいってくれる?」
そう聞いた僕はショックを隠し切れず、声がひきつってしまった。
「わ、わかりました。彼にあったら必ず連絡しますから!」
電話を切ったあとすぐに彼からのハガキをもういちど確認した。
確かに彼からのハガキである。
そっか、これはたちの悪い悪戯かもしれない。
そう思うと僕はだんだんとハガキの差出人に対して怒りが込み上げてきた。
そこで僕は同窓会を行うという場所に行くことに決めた。
同窓会の当日。
僕は指定された居酒屋に向かった。
19時からの予定だったが興奮している僕は少し早めについてしまった。
「まだ18時か。時間があるなぁ」
僕はタバコに火をつけ、正樹、和則、英子との思い出に浸っていた。
一緒に遊びに行った山。
一緒に泳いだ海。
僕たち四人は大の仲良しだった。
そして正樹と一緒に行った合宿。
そうだ、合宿の日の夜、興奮からか、僕たちはなかなか寝付けず、布団に入ったまま小声でいろんな話をしたなぁ。
好きな子の話や、部活のこと。
そうだ、死後の世界についても語り合ったっけ。
正樹「なぁ、あの世ってほんとうにあると思う?」
僕 「僕は信じてるけど、わかんないよね。」
正樹「そうだ、どっちかが先に死んだら、お化けがいるかどうか出てきて証明しようぜ!」
僕 「いいね! 死んだほうが生きてる方にお化けの証明できればいるかどうかわかるもんね!」
そんな他愛もない会話をしたっけ。
うん!?
も、もしかしてそれを証明しようとしてるか、正樹は。。。だって何十年も行方不明なんだよな、あいつ。
僕は背中に冷たいものを感じた。
このままここで彼を待っていていいんだろうか。。。
帰るべきか、待つべきか。
でもよくよく考えてみたら周りにはたくさんの人がいる。
こんな大勢の中ならもしお化けで出てきても怖くはないか。
そう思った僕は彼が来るのを待つことに決めた。
時計は19時をまわった。
でも同級生の誰一人現れない。。。。
やっぱりあのハガキはたちの悪いイタズラだったか~
しかし僕の胸中は怒りより安堵のほうが勝っていた。
帰るとしても何も注文せずに帰るのは気が引ける。
僕はとりあえずビールの一杯でも飲んで帰ることにした。
「すみませーーん」
「はーい」
お店の店員さんが僕のところまでやってきた。
「すみません、ビールもらえますか?」
「はい、ビールですね。」
まもなくビールが運ばれてきた。
僕はビールをぐいっと飲み干したあと立ち上がり、そのままレジに進んだ。
代金を支払い、お店の外に出た。
外の風はやけに冷たかった。
コートの襟を立て、僕は家路を急いだ。
間もなくしてアパートに付いた僕は留守番電話が入っている事に気が付いた。
コートを脱ぎながら留守番電話を再生した。
「ピーッ。二件です。こんばんは、正樹の母です。あれからすごく気になったから英子ちゃんと和則くんにもハガキが来たのか確認してみたのよ。そしたら英子ちゃんは昨年、寮が火災になって亡くなったらしいの。。。。そして和則くんもマグロ漁にいったまま海に落ちて行方不明なんですって。。。なんかあなたの事が心配になって。。。」
留守番電話はそこで切れていた。
「えっ・・・」
三人ともこの世にはいない????
そして二件目の留守電が再生された。
「ピーッ。よぉ、ひさしぶり! 元気か! 和則だけど、いま正樹と英子ちゃんと一緒に飲んでるよ。おまえこないからさぁ、今からおまえんちに行くよ! やっぱ、お前いないと始まらないわ!」
留守番電話の再生が止まると同時に、
「ピンポーン」
と、玄関のチャイムが鳴った。
僕はひっくり帰りそうになりながら、玄関まで行き、恐る恐るドアののぞき穴から外を見た。
そこには、あどけない子供のままの正樹と、すっかり大人になった英子、そして全身ずぶ濡れの和則が微笑みながら立っていた。
作者SANTA